有栖と奉日本『チープな刻の中で』

ぴえ

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プライド

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「こんにちはー」
「いらっしゃいませ」
 別の日、有栖は再度、奉日本の店に訪れた。目的は当然ランチで事前に連絡は入れておいたので、奉日本もすんなり入店させてくれた。
「今日のランチってグラタンですよね? 楽しみです」
 表に出ていた看板に書かれていたメニューから有栖は既に何が提供されるか知っていた。以前、ドリアを食べたことのある彼女としては彼が作るベシャメルソースの味が絶品なのを知っているので、グラタンも自然と期待が高まっていた。
「あー、すみません。ソースを使いきってしまって。違う料理になるのですが良いですか?」
「そうなんですか。いや、自分は全然大丈夫です」
 有栖は少しがっかりしたが、それでもランチタイム終了後に優遇という形で食べさせて貰ってる上に、提供されるメニューにまでワガママを言うつもりはなかった。寧ろ、他の人は食べていないメニューを食べられるのはラッキーだ、とポジティブな思考へとスムーズに変換する。
「その違う料理って何ですか?」
「有栖さんが来ると聞いたときから準備して焼き始めたので、そろそろ出来ますよ」
 そう言うと、奉日本はオーブンに近づき、中の様子を見ると満足そうに頷いた。彼がオーブンを開けると香ばしい匂いが店内に広がり、有栖まで届く。空腹を加速させる幸せの匂いだ。
「こちらになります」
 奉日本がオーブンから取り出し、皿に乗せて見せてくれたのは――キッシュだった。
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