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第一章 幸せのありか
21 side樹理
しおりを挟む少し考えたけれど、二人分夕食の材料を買って哉のマンションに帰って来た。もらったキーでエントランスのセキュリティを抜けて二十七階へ。いつ帰ってくるのかわからないけれど家政婦として必要とされているのならば応えるべきだろうと思って、これからやる家事の段取りを考えてダイニングに行くとちゃんとからっぽになったご飯と味噌汁の茶碗と、なぜかきれいに残されているベーコン。
箸の下にメモを見つけて手に取る。
白いなんの変哲もないハガキサイズのメモには鶏肉以外の肉は食べられないことと、魚も赤身はキライなこと、それだけが癖のない綺麗な文字で綴られていた。
「習字か何か、やってたのかな」
お手本のような、けれど機械が出したものとは違うその文字をじっと見る。以前母親が言っていたのだ。文字を見たら大体その人がどんな人か分かるものよ、と。
「だめだ。全然わからない」
ため息をついて、メモを折ろうとして止まる。
メモを見た、と相手に伝える一番手っ取り早い方法はそれを捨ててしまうことだ。けれどなんだか捨てることができなくて着替えるために開けたクロゼットの、引出しに、それをしまった。
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