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学園☆天国
25 side琉伊
しおりを挟む「みんな、こっちにずれて。上にお二人が入られるから」
そう言うと、樹理ちゃんと夏清ちゃんが一つ、ユリたちも座布団を移ってきて、空いた場所に優雅な振る舞いでご老人が二人、着席する。
「氷川さんってお茶点てられるの?」
「そう、みたいだね」
さすがにそんなことが出来るとは思っていなかったらしい樹理ちゃんが、少しの戸惑いを混ぜて夏清ちゃんと話している。
「お兄様の所作はとっても美しいですわよ?」
そんなことも知らないの? と言外に込めて、ユリがふふんと鼻を鳴らす。ほらもう、夏清ちゃんがイヤそうな顔してるでしょう。だからそう言う態度はやめなさいって。私がどうしていちいちあなたが極度の人見知りで初見の人にはツンツンしちゃう本当はお茶目なオンナノコなのよって説明しなくちゃいけないのよ。誤解されてあとで泣くマネしても知らないからね。
かわいい女の子の掛け算が三つ目くらいに好きなくせに。ちなみに一つ目はイイ男同士の掛け算で、二つ目は自分に言い寄ってくるイイ男。イベント帰りにウチの店に寄って戦利品広げながら女の子同士でもゴハン三杯いけるわよって豪語する子持ちバツイチってどうなのかしら、本当に。
「ねえ、あれって私たちが中等部の二年のときだから、十一年前?」
ユリが最近流行りのオタク……じゃなかった、大人向けの漫画に出てくる、気の強い女の子にハマってるって言ってたけど、確かこの制服着てなかったっけ? あの主人公。ガッチリ好みにジャストミートなんだろう、イヤそうな顔の夏清ちゃんの敬遠オーラにより、萌えが先走ってダメなルーチンにはいったユリが、彼女たちを挟んで私に話しかける。だから巻き込まないで。私まで嫌われたらどうするのよ。
「私たち、大ピンチをお二人に助けていただいたのよ」
「ユリ、余計なことは言わないで。私が話してあげるわ」
……このままユリに語らせると、あのこととか、このこととか、そのこととかっ 要らないことまで語りかねない。
大体、普通、超絶美形の一流企業で出世街道驀進してる男と結婚しておいて、妊娠を理由に実家に帰って数いる元カレ数人とヨリを戻して遊び倒す妻と、中身はともかく見た目は極上のお嬢様な女と結婚しておいて、出産の為の里帰り中に同じ会社の女の子や、合コンで引っ掛けたその他色々数名と浮気を繰り返す夫と言う、ある意味似たもの夫婦な二人だったんだけれど! 柾虎を生んだあと、産院のベッドの上で離婚届にサインしながら『ヨリ君もさぁ 相手が男だったら許したのにぃ』とつぶやくような女に、あの嵐のような出来事を語らせたらどうなることか知れたもんじゃない。
ユリの妄想を侮って、何回痛い目を見たと思ってるの?
絶対発言禁止! じろりと睨むと、にへらっと笑ってユリが肩をすくめている。
そんな回想と無言のやり取りをしていたら、するりとふすまを開けて茶室に入り、礼をする哉に、慌ててみんなで礼をしたあと、ため息を一つ吐いて、出来るだけ妄想を排除して、昔ここで起こった騒動を教えてあげることにした。
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