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学園☆天国
30 side琉伊
しおりを挟む「そんなことがあったんですか」
「へぇえ」
頭の中の回想から、語っていい部分だけをピックアップしてつじつまを合わせながらの説明だったけれど、二人のギャラリーにはそれなりに暇つぶしにはなったみたいだ。と言うか、それなりに相槌を打ってくれていたのは主に樹理ちゃんで、夏清ちゃんのほうは意識が完璧に哉のお手前に向いていたけど。
全てが終わって、挨拶をして、来年もまたとか言いながらなんだか名残惜しそうな師匠たちと別れる。部室を出ると、コスプレ屋を出していた少女が二人、制服姿になって立っていた。どうやら夏清ちゃんを待っていたようで、なにやら話して、慌てた様子で三人走り去っていく。
「先生! すぐ着替えてくるからヤクザの銅像の前にいてね!!」
ヤクザ。ああ、創始者像か……
「じゃあ私たちはこれで……」
「あらっ! まだ時間はありまして? よろしければこれからどこかでお茶で……」
「いい加減にしなさい、ユリ。この二人にいくらくっついてもムダよ。二人ともこんなかわいい彼女がいるでしょ? ほらほら、帰る帰るっ! それじゃあ井名里さん、お兄様、ごきげんよう」
まだしぶとく付きまとってなにかネタになりそうなことをほじくりだそうとするユリを引きずって、おそらく彼らが向かうであろう生徒用の昇降口とは反対側に移動する。ごり押しで来客用の駐車場に車を止めたので、教師用と併用されたそっちの出口の方から出てもさして移動距離としては変わらない。外を歩くか、校舎内を歩くかの差だ。
「柾虎君、バイバイ」
樹理ちゃんがかわいらしく柾虎に手を振り、いつも小生意気なちびっ子も、年相応の笑顔で手を振り返していた。この気難しい子供に、こんな顔をさせる樹理ちゃんって、やっぱりすごいのかも。
「ふふふふふ。かわいかったわね、樹理ちゃんと夏清ちゃん。夏清ちゃんがウチの生徒じゃないってのがマイナスポイントだけど、コスオンリーイベントでもあれだけ刃朔羅っぽい子なかなかいなくてよ? 樹理ちゃんは秋桜(コスモス)の方かしら。いいカプだと思わなくて? ああ、なんだか創作意欲がわいてきちゃったんだけどどうしよう」
そっちか! 薄々そうかとは思ってたけどそっちの方だったのか!! 哉たちにくっついて回ってたのは女の子二人を観察する為だったのかっ! やけに夏清ちゃんを煽ってるなぁと思ったけど、本当にいつもいつもどうしてこうも二次元と三次元を絡めようとするのかしらこの子は!!
「琉伊、これは燃やすゴミでいいのか? それとも燃やさないゴミ?」
そうね、リサイクルはまずムリよね。再利用なんかしちゃったら、核物質で被爆するよりずっとひどい痛手を負うわ。すでに妄想の世界にトリップ完了。当分帰ってきそうにない上に、脳内はおろか周囲にまでお花畑の幻想を撒き散らしながら、軽やかな足取りで踊るように進むユリの姿を見て、柾虎がつぶやく。
さっきまでの子供らしい笑顔がウソみたいに、ゲンナリした表情を浮かべながら。
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