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学園☆天国
35 side夏清
しおりを挟む「というわけでっ! ここであったが百年目! 三つ子の魂百まで!! 宿屋に泊まって百円余るアレの答え教えてよ」
「だから、問題覚えてないのに答え知ってどうすんだよ。大体オマエあの時五歳になってただろう」
「じゃあ問題からプリーズ! もしかして忘れちゃった?」
「忘れた」
「ウッソだー アキランが物事忘れるワケないじゃん。コンピュータ並みに正確に記録して、一度聞いたこと一言一句間違わずに再生できる人間テープレコーダーって呼ばれてたくせにぃ 知ってる? 昔はコンピュータのプログラムをカセットテープにいれてたんだよー? アキランって口から出しそうじゃない? カセッ……ヒギャアアァアァ」
テープレコーダー……なんか微妙に時代を感じる呼び名だなぁ んで、やたら早口になりながらも余計なこと口挟んだ都織サンがコメカミグリグリの刑に処されているのをみんなで見守ってから、なんだかこのまま話が終わらなさそうなので、挙手して発言を求めてみる。
「ハイ。なんかよくわかんないけど問題に興味があるので聞きたいです」
リナちゃんの説明は超うろ覚えで、本当に要領を得ないから、聞いてみたいってのは本音。くだらなくても、このわけわかんない感に比べたらまだマシよ。
真面目に提案してみたら、先生がしかたねぇなぁとつぶやいて、ものすごーっく、気乗りしない棒読みで問題を出してくれた。
「問題っつーか、なぞなぞだ。
三人の若者が、旅行に行って、旅館に泊まろうとしたが、生憎満室。途方にくれる三人に、主人が『素泊まりで、空いているふとん部屋なら泊めてあげるよ。一人1000円でいいよ』と、泊めてくれることになりました。
三人は喜んで1000円ずつ支払い、ふとん部屋に泊まることにしました。
そんな三人に主人は『ふとん部屋に1000円は取りすぎたかな』と、仲居に『三人に返すように』と500円渡しました。
500円預かった仲居は『三人で500円は割り切れないな』と、三人に300円返して残りをピンはねしました。
さて、ココで問題です。
三人は結局、一人900円掛ける三人イコール2700円を出費しましたが、仲居がピンはねしたのは200円です。もともと3000円払っていたのに、2700円足す200円イコール2900円にしかなりません。
さあ残った100円はどこにいったのでしょうか?」
子供たちが気乗りしない声で語られる昔話を真剣に聞いている横で、都織サンが『巻き戻しー そしてサイセー』とか『僕の記憶が確かならば、一言一句違わない……と思う。たぶん』とか、小さい声でつぶやいていたけどさすがにスルーされていた。
微妙に小さい子に語りかける口調なのは、小さかったリナちゃんに語ったのをそのまま同じようにしゃべってるからなのか。しかし、五歳の幼稚園児に出すレベルの問題じゃないと思うよ。確かにこれじゃ、リナちゃん問題覚えてられないわけだ。
「うああああああ。改めて聞いてもわかんない。プリーズバックトゥミィヒャックエーン!」
「……え? えええ? え? なにが? どうして? なんで計算合わないの?」
リナちゃんが頭を抱えながら変なジャパニーズイングリッシュを叫び、樹理ちゃんが本当に分からないって顔でキョロキョロしてる。探しても答えは落ちてないと思うよ。
「ちょっと待って。なんかおかしいよ、どっかおかしいよ。算数と言うより国語的におかしいよ。なんなの、このモヤモヤ感……」
そして、一番答えに近づいているっぽい翠ちゃんが目を閉じてうんうん唸ってる。
「え? ホントにみんなわかんない、とか?」
「わかるのっ!?」
「え、うん。どこがおかしいのかは分かるよ」
自分用に買ってもらったアーモンドオーレを一口飲んで、頭を抱えている女の子たちに問うと、リナちゃんが食いついて来た。まあ、十数年来の疑問なわけだから当然か。
「教えてっ!!」
「うーん。口で説明するのメンドクサイから書いていい?」
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
というわけで、次回は当時描いた雑な絵が挿入される予定。
上手くいかなかったらごめん。
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