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学園☆天国
36 side夏清
しおりを挟む「うーん。口で説明するのメンドクサイから書いていい?」
先生に『不要なものは持ち歩くな』といつも言われるくらいいろんなものが入って重たいカバンから、A6サイズのノートとペンを取り出す。ほら、こうやって時々活用されるのだよ。あえて聞かなくても先生は自分で解説する気なんてサラサラないって顔でアイスコーヒーを飲んでいる。
「まずは登場人物ね」
言いながら、マルと線で構成された人物絵を、旅人三人、この三人は白いままで、主人は頭の部分になるマルの中に『主』、仲居は『仲』を書いて合計五人描く。
「で、この三人が1000円ずつ、合計3000円を主人に払う」
お札を模して横長の四角を三枚を描き、大きな円で囲ってから、主人の方へ矢印。
「主人が仲居に500円渡す」
ちょっと大き目のマルに500を描いたものを一個、仲居に矢印。
「仲居が300円を旅人に返す」
顔部分のマルに『仲』と描いたイラストの足元に、先ほどより小さいマルを五個描いて、そのうち三つをより大きい円で囲って、矢印で旅人へ。
「ほら、最初から100円なんてないんだよ。さも正しそうに足し算をしてたけど、本当は2700円足す200円じゃなくて、主人が実際に受け取ったことになる2500円と、旅人に返された300円と、仲居がピンはねした200円を足す、もしくは、旅人が最終的に支払ったことになる2700円と、戻ってきた300円を足す。この二つの式をごっちゃにして出題してるだけなんだよ」
イラストの上部に先の式、下部に後の式を赤ペンで書き込む。同じ答えがでるけど違うプロセスの問題をさりげなくミックスしてるだけなんだけど、主人に残った2500円をあえて出さず、存在しない100円を持ち出してかく乱するのがこの問題のポイントなんだろう。聞き流してたら、どちらも別ルートとは言え正解を導く為の数字だから、大体ドコが引っかけなのか分からないで終わっちゃうよね。
「すっごーい。夏清ちゃん、説明上手だね」
「そっか、そう言うことか。モヤモヤしたのはそのせいなのかぁ」
「こ、こんな簡単なことに私……長いこと悩んでたなんてっ」
ノートを見て、三人が口々に思いをこぼしている。
ホントに、こんなクソ意地の悪い問題、子供にしたよね。きっとキリカも分からないでパニック起こすと思うよ。よし、今度やってやろう。
「じゃ、用は済んだな」
先生がそう言って立ち上がってこっちをチラッと見た気配ではっと最近無意識に発生するニヤニヤ笑いを引っ込める。
「あっ 待って待って。夏清ちゃん、メアドと番号教えてー また遊ぼうよ。次はオジサン抜きで」
「わーい、賛成ー」
リナちゃんと翠ちゃんが携帯電話を取り出して赤外線の構え。ま、いっか。女の子だし。
「いいよー でもウチ遠いからそんな遊べないと思うけど」
「ならお泊りしたらいいんだよー リナんちすんごい高いとこにもあるから、そこなら夜景きれいだよー みんなでパジャマパーティーだー」
「高いところ『にも』?」
「うん。住民票はおじいちゃん家にあるけど、他にとーるちゃんにもらった部屋が三ヵ所くらいあるの。気分で引っ越すよ」
……やっぱりこの子、お金持ちのお嬢様なんだ……
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
落書き入ったー!
サイトに載せていた時は、本文ではなくあとがきの補足でイラスト入りで解説したんですが、こっちはあとがきのせないからね……いきなり本文でごめんね。でも私の文章力では文字だけで理解してもらえるかがとても不安……
ちなみにこの問題はそもそもドル計算のものをキリのいい円に変えたものなので、金額が驚きの安さなのはそのためです。
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