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華灯
6 side樹理
しおりを挟む「なんで、それを?」
「さあ? なんででしょう?」
樹理がびっくりして聞き返すのを質問で返す。その横で理右湖がくすくす笑っている。
「ごめんごめん。ほら、前に樹理ちゃんウチに来たことあったでしょう? あの時保険請求するのにおうちに電話かけて保険証のコピーをファックスで送ってもらったのよ。だから知ってたの、樹理ちゃんの誕生日」
「哉くんに言ってないでしょう? 今日誕生日だって。哉くんならそこで仕事をとらないだろうし。だからね、まあ、どうせだから驚かせちゃおうかと。樹理ちゃんって実は華やかなのが似合うと思うのよ。背はそんなに高くないけど顔が負けてないから大柄でも大丈夫」
「そうそう、こっちは? あ、これプリントじゃなくて織りだ。いいものねぇ」
細かいたて皺が加工された、バックが白と藤色で大きな格子柄になり、袖と裾に一体何色の糸が使われているかわからないくらい色合い細かく赤系統やピンク系統の糸でたくさんの薔薇が咲き乱れる様子が浮き上がるように織られている。
「いいわねぇ じゃあ帯はこんな感じかな。色あわせに着てみたら?」
浴衣と同じく薔薇の織り模様が浮いたピンク地と紫地がリバーシブルになった半幅帯と、和装用の下着を差し出されて、とっさに受け取ってしまう。
「は?」
「私も一つ買おうかなぁ」
「お母さん、私コレがいい」
「かわいいじゃない。いいわよ。逢も新しい浴衣買う?」
「やった! 行こう樹理ちゃん、着付けあっちだよ」
落ち着いた色と柄が揃った棚の浴衣に手をかけていた実冴のところに、先ほどとは違う浴衣とちゃっかりと帯まで持って逢が現れ、有無を言わせず手を取られて奥へひっぱって連れて行かれる。
「え? ええっ? あの」
「だーいじょうぶ。桜ちゃんや椿ちゃんたちも買ってもらって着るから。樹理ちゃんだけじゃないよ」
一段高くなった畳の前でミュールを脱いでふすまの奥へ進むと、ちょっとした宴会くらいできそうな広さの和室になっていた。部屋の端に先ほど実冴が男性に渡していた紙袋が置かれており、逢がごそごそと中を漁っている。
わらわらと制服姿の店員がやってきて、ビニール袋に入った和装用下着をてきぱき取り出している。
「できればブラははずしてくださいね。これ羽織ってはずせば私たちにはみえませんよ。大丈夫ですから」
年配の女性がいかにも慣れたふうに微笑んでそう言って、樹理に背を向け、浴衣や帯からタグをはずしている。
「ほらほらっ 観念して着替えてっ 早くしないと二人が追加されてやかましくなるよぅ」
そう言う逢は服の上から浴衣を羽織っている。
「あの、逢ちゃんも着るんじゃないの?」
「私のは肩とかちょっと上げをしてもらわなくちゃならないからあわせてからなの。あ、私もあっち向いてるね」
「いや、そう言うわけじゃ……」
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