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OVER DAYS
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しおりを挟む何も会話のないまま、しばしのドライブを終えて車は住宅街にある樹理の自宅に到着した。ここでも、樹理は迷わず自分でドアを開けて車を降りる。
トランクから樹理の荷物を降ろしていたら、見慣れぬ車が止まったことに気付いたのだろう、母親らしい女性が慌てて出てきた。
「それでは」
「ありがとうございました」
短い挨拶の後、篠田はすぐに車を出す。バックミラーに写る母子の姿も、あっと言う間に見えなくなった。
行きにはなかった事故渋滞で、帰りは少し時間がかかった。篠田が再びマンションを訪ねると、玄関ドアが開いたままだ。閉め忘れたことさえ覚えていない。そんなに慌てていたのだろうかと自嘲して、形ばかりそのドアをノックし、きちんと揃えられた靴の横に己の靴を脱ぎ、初めて哉の自宅に入る。
薄暗い室内に、スイッチの位置を見当で探して電気をつけると、まず床一面に散らばった紙幣が目に入った。よく見ると小銭も混じっている。ざっと見ただけでも余裕で百万を超えているであろう、諭吉の肖像。
座り心地のよさそうなソファにすっぽりと嵌るように寝転がっていた哉に封筒を差し出すと緩慢な動作で起き上がり、手にとって無造作に逆さにして軽く振り、紙幣の上に中身をぶちまける。
まず、重い写真が滑り落ちて表になり裏になり床に散らばる。次に調査書が、最後に真っ白い紙の真ん中に二行だけ文字が印字された紙が落ちる。
写真などには全く興味を示さず、それを拾い上げて書かれた文字を見て、哉が唇をゆがめるように笑った。
予備動作なしに、すっと哉が立ち上がる。
「実家へ行くぞ。車を出せ」
篠田の返事を待たず、哉が玄関へと向かう。いつものように背筋が伸びた背中を見てなぜか笑みがこぼれた。
「はい」
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