幸せのありか

神室さち

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OUT OF DAYS

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すみません、同じ話を上げていました。教えてくださった方、ありがとうございます。

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


 
「えーっとな、大じい様の役職なんやったっけ。ええから早よしゃべり」

「はっ ハイ! 瀬崎デス!!」


 若干声を裏返しつつ、和に促されて瀬崎が声を上げる。受話器を耳に当てたまま、直立不動でとにかく返事は『ハイ!』のみ。その姿を見て増本が、緊急時の対応の仕方についてもうちょっと鍛えておけばよかったと縦皺のついた額をほぐすように指を動かしている。


『おうおう、瀬能か』

「……セザキ、です」

『まあ、名前はどうでもよいわ』


 内心どうでも良くないだろうと突っ込みながらも、さすがに口には出さずに瀬崎はじっと相手の次の言葉を待つ。


『ああ、先にクギ刺しとくがの、目の前に居(お)る阿呆にこれから言うことを喋ったら地の果ての支社に送るからの、気を付け』

「はぁ」


 ちらりと目の前に座っている和を見やると、興味津々の輝いた目で瀬崎を見つめている。電話を切った瞬間からあの関西弁でまくし立てられたら、どうやってかわしたらいいのだろう。


『哉だがの、ちぃと前に父親と付き合うとる女のことでなんぞ諍いがあったようでなァ……アレが自分の父親に真っ向から逆ろうたわ。長生きはするもんだのぅ』

「ハァ!?」


 同じセリフなのに別のものに聞こえるほど素っ頓狂な声を上げた瀬崎に、和と同様その電話を窺っていた室内の面々がびくりと後ろに身を引く。


「え。ちょっ……マジ……じゃなくて、本当に?」

『おうおう、『まじ』じゃ『まじ』一遍片付いたらしいんじゃがまた何ぞあったようでのぅ あの哉がの、仕事なんぞ放り出してええと思ったらしいわ。ホンマにしょうのないひ孫だわい。とりあえずワシがこっち側を丸め込む間待っとれ。篠田も暫く出んからお前らで何とか持ちこたえとけ言うとったらしいぞ』


「へっ!? し、室長も来ないって……どういう……」

『ではな。喋るなよ』




 ちん。




「……………」

「なぁなぁ 大じい様、なんて? 何言うてた?」



 ツーツーと響く受話器を、暫く手放せないまま立ち尽くしていた瀬崎が、和の問いかけにびくりと反応した。

「え。……っと」





 じっと見据える瞳が八つ。

 じりっと背中に汗が噴出す感覚を覚えながら瀬崎が口を開く。





「……親子喧嘩、だ、そうです」



 嘘は言っていない。嘘は。




「は?」

 瀬崎以外の全員が、その答えに同じ言葉……というよりは、息のようなものを吐いた音がした。


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