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OUT OF DAYS
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しおりを挟むもちろんそう言った情報操作を鈴谷が仕事の合間、というか、一時期情報操作の合間に仕事をしていたので、ある程度作為的ではあるのだが。
ただ、それがちょっと功を奏しすぎた嫌いもあり、いつの間にやら室長である篠田も一緒に出社拒否状態であることも相俟って、彼らが二人で新しく会社を設立するのではないかと実しやかに新しい噂が広まり、誰がマッチポンプなのか、本当に辞表を書いて上司に渡してしまった人間までいたりするらしい。さすがに、当人である哉の辞表が宙ぶらりんな状況でそんなものが受理されていないらしいが。らしい、のだが。
「いつまで持つんだろ……」
「我が身が?」
「それはもうとっくに限界超えてます……」
無駄な思考と無駄な口を利きながらも仕事を進めている瀬崎が愛想なしで増本に返す。これまでなら瀬崎がそんな態度を取ろうものなら揚げ足を取りにくる増本だが、そちらも余裕がないらしくスルーされる。
やたらと忙しいが、一つだけ瀬崎を楽にしていることがある。
学閥、と言うヤツだ。
首都圏の国立私立を問わず、有名大学を卒業していれば入社と同時に組み込まれるシステム。某有名私立大学の場合だと、それにゼミ閥まであるらしい。ナントカ教授のゼミを受けていたと言うだけでステイタスになるのだ。
それに、瀬崎は入っていない。と言うより、瀬崎が卒業した大学から氷川本社への入社者はあとにも先にも瀬崎一人だからだ。
瀬崎は本州の真ん中にある、大きな県で生まれのびのび育った。一応子供のころから勉強は好きで、よく出来た。
ただ、物心つく前にすでに年金をもらえる年齢だった父親が亡くなって、以来母子家庭。
高校も地元では進学校として有名だったが公立だったし、大学も、ずっと年の離れた殆ど父親の代わりをしてくれていた兄や、口うるさいけれど弟思いの姉がその成績を見て東京のものを受けろと言ってくれたのを断って自宅から通える地方国立大学へ進学した。
金銭的なことは、母親が父の保険金や末っ子の為にと貯金してきてくれたものが少なからずあったのだが、高校二年の時に母親が倒れ、ほぼ完治は不可能に近いとされる血液系のガンであることが判明した。一度目の治療で一旦持ち直したものの、一年以内の再発率は七十%を超え、三年以内だと九十七%、五年生きている者は皆無。
既に兄も姉もそれぞれに家庭を持っていて、兄は同居していたとは言え、瀬崎より三つ年下なだけの子供もいた。自分のできることはしたかったし、マザコンだと言われようとやはり、先が見えているのであれば母親の近くに居たかったのが理由だ。
結局、母親は瀬崎が大学三年生の秋に息を引き取った。やっぱり、その時も傍にいられてよかったと言う思いが強かったし、高校の先生や兄姉、それに母親にも色々言われたが選択として間違っていなかったと今でも思っている。
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