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OUT OF DAYS
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しおりを挟む瀬崎が就職活動を始めた頃は、まだ何となく、バブルの余韻が漂っていたものの、全盛期に比べて大手企業への就職はかなり狭き門となっていた。
当の本人は就職先について別に何も考えていなくて、漠然と公務員か銀行か、位のイメージでしかなかったのだが、そんな折、兄がどうせだから大きなところに挑戦してみたらどうだと氷川の名前を出してきたのだ。
瀬崎の住む県にも当然支社があって、系列の工場も多数あったので、こんな田舎の大学からなんて冷やかし程度の扱いだろうと半ば諦めながら東京本社にエントリーしたら、あれよあれよと最終選考まで残り、合格通知が送られてきてしまった時は、狂喜乱舞の様相を呈する兄や姉一家を呆然と見ているだけで、おそらく一番状況が飲み込めていなかったのは自分だっただろう。
その後もよく分からないうちに入社して辞令を受けて右も左もわからない、自分でもかなり向いていない営業職を、学閥に拘らず自分をかわいがってくれた先輩の指導もあったが、自分なりに必死になってこなして、なんだか同僚に流されるように幹部候補生試験を受けたらこれについても何も理解できないまま合格してしまった。
表立っては誰も言わないが出身大学で明確な区別がある為、ある程度諦めていた出世レース。その第四コースと他人にやっかまれる位置、結果副社長付き秘書になることが出来て舞い上がっていたらこんな状況とか、人生万事塞翁が馬。一寸先は言い過ぎでも、半年先なんて本当に分からない。
「……人間、死ぬ前に走馬灯のように思い出が流れるって本当ですね……」
つらつらと色々思い出してしまって、食堂から鈴谷がデリバリーしたおにぎりをかじり、メールチェックしながら思わず呟く。
「大丈夫でしょ。どう頑張ったって食欲のあるうちは死なないわよ。議事録最終チェックしたから下に持って降りるけど、他に何かある?」
「あ、じゃあこっちのファイルお願いします。案件別に入れてあるんで、必要な部署にコピーして渡して欲しいって伝えてください」
「了解。ついでにコーヒー貰ってくるわ。いつも通り砂糖ミルク増量でOK?」
増本が苦笑して瀬崎にコメントを返してくれる。さすがに疲労だけではない何かが口から出ているのが判ったのか、珍しくなだめるような口調で。
さらには、ココのところ忙しくて準備もままならない飲み物の調達までしてくれる。鬼のように仕事に追いまくられるようなってから、ブラック派だった秘書三人とも、糖分と脂質を過剰にプラスした物を欲する体質になってしまっている。
「うわっ! ウッソ。マジでッ!? ってかちくしょーめっ」
増本が部屋から出て行って三分後、何やらパソコンを操作していた鈴谷が、突然大声を上げてマウスを放り出した。マウスは有線なので、ぶんとあらぬ方向に向かって行ってラックに激突している。
「え。どうかした?」
「一応信頼の置けるスジからのソースなんですけど、副社長、週末の某チャリティー団体のパーティに出てるんですよ」
「………それが、どうかした?」
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