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OUT OF DAYS
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しおりを挟む座ったまま最敬礼しそうな勢いで返事をした瀬崎の態度に、それでも上品に笑いながら樹理がお茶を注いでくれる。
「ごゆっくり」
仕事の話をしているからなのかそう言い置いて樹理があっさりキッチンに戻ってしまう。
「ええっと、あの、彼女、誰っすか? 昨日までいなかったですよね?」
樹理にヘラヘラ笑っていたら、何だが冷たい空気が前方から漂ってきて、足元を這い上がってくるような感触。
うわぁ ヤバイかも。真面目な顔を取り繕って湯飲みを取る。
「知ってるくせに聞くな。今日も俺のほかには誰も見なかったことにしておけ。下手に報告したらまた厄介ごと押し付けられるぞ」
それもバレてるのかよと書類に目を落としたままの哉を掠めて斜め上を眺める。
「うへえ。でもこれ以上ってアリなのかな」
言い終わってすすったお茶は、先ほど飲んだものよりほんの少し温かい。どこかの故事のようだが、さらりとそんな気遣いが出来るってちょっとすごいかもと甘みと渋みが絶妙に引き立っているお茶を味わう。
黙って書類を捲る哉と、邪魔をせずに同じく黙っている瀬崎は持ち込んだ自分用の仕事をその間に済ませることにしている。ぼーっと待っているのは時間が勿体無い。何とか家に帰られるようになったものの、帰宅は最終電車にギリギリ乗ることができる時間だ。
その間も、タイミングを見ては樹理がお茶を入れてくれたり、お菓子を置いてくれたりするので、瀬崎は大げさに喜び、哉に冷たく睨まれた。
既に瀬崎が赤字添削した書類は九十八点の出来だったようで、二ヵ所ほどチェックが入っただけで返ってきた。それを大事にしまって、あ、と腹を押さえてさすがに飲み過ぎたかも知れないと言う仕草。
「すいません、トイレ借りていいっすか?」
「玄関向かって左のドア」
立たない瀬崎を見て察したのか、哉がトイレの場所を教えてくれる。
「ハイ。ありがとうございますっ」
ダッシュでリビングを走り抜けるとバタバタと言う音に樹理がキッチンから廊下に顔を出した。
「あ、お帰りですか? 良かったらこれ、もうすぐお昼だしどうぞ。ちょっと待っててください、袋に入れます。帰りの車の中で食べてください」
出てきた樹理の手には、使い捨てのパックが乗っていて、その中にはおにぎりや玉子焼きなどのおかずが彩りよく詰まっている。お茶で満腹を感じていたのに、ぐぐっと別バラが出来るような生唾が上がってくるのを飲み込む。
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