幸せのありか

神室さち

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愛し君へ

6 side琉伊

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『あ、でもほら、樹理ちゃんまだ若いし! 私は結構リミット来てるけど、焦る必要ないよね!』

 わたわたと言いつくろう琉伊に、樹理の方が申し訳なさそうな顔をしていた。

『氷川さんも、そう言ってくれるんだけど……私、生理不順って言うか……年に二回くらいしか、その、なくて』


 言いにくそうな樹理の告白に、琉伊の思考が一瞬停滞した。



 年に、二回。だと?



『樹理ちゃん、大きなお世話だけど、それ、ちゃんと病院で検査してもらった方がいいよ? 子供云々じゃなくて、自分の体の問題として。私も昔っから痩せすぎ分類で生理は不順な方。そこまでじゃなかったけど、二十歳のころから定期検査だけはしてたよ』


 琉伊は、子供のころからガリガリだった。祖父に『どこの欠食児童だ』と嫌味を言われるくらいに。食事については人並みか、むしろダイエットに励む同年代の女性よりもよく食べるほうだったが、第二次成長を経ても肉らしい肉がつかなかった。それはもう見事なくらいに。原因は簡単で、胃下垂の体質だったのだ。


 しかしそのせいか、生理が始まったころから、それは不順で、なおかつ一旦生理になれば起き上がれないほどの生理痛に悩まされた。


『その年に二回の、すごく重くない?』

 尋ねたら、どうしてわかるのと言う顔をしていたが、わからないわけがないだろう。

『うん、私が産んだ病院、紹介するから一回診てもらいなさい!!』


 琉伊が萌花を産んだ病院は、誰かの紹介がないと受診ができない。が、スタッフは一流で、情報管理も万全だ。見舞客は出産者が許可したごく一部、他は誰も立ち入ることはできない。付添についても同様である。地下の駐車場から目的の階までのエレベータ内で患者同士ブッキングすることもない。医療は最高水準だが、スタッフは厳選されていて少人数。


 だから、どんな診断結果が出ようとも、外部に漏れることはない。と、当時は信じていた。


 そんな思い込みもあって、ただ、樹理の為を考えての提案であったものの。


 それから一週間ほどして、紹介したからか、樹理が受診の結果を知らせてくれた。

 子宮内膜症。それも、手術が必要な程度の。

 すぐに手術を受けたが、生理不順は相変わらずなようで、結局今日まで妊娠の気配はない。

 さらに、哉の方も一応の検査を受けて結果はオールグリーン。つまり、原因は全て樹理にある。





 ……と、考えるだろう。あの人ならば。




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