壊れた脚で

トラストヒロキ

文字の大きさ
1 / 15
プロローグ 絶望

絶望と春の風

しおりを挟む
 (  さぁ~先頭で後続を引っ張るシリウスライド! 第四コーナーから直線に入りました! 最内をスクってくるレーザームーン!外にはぐいぐい脚を伸ばしてきましたスペリオルタイム!大外へ持ち出しました豪脚のヘリングストーン!四頭の叩き合いだっ!これは凄まじい!どの馬も引かない!引きません!正に激闘ですっっっ!残り100m!横一直線に並んでいます!並んでいるっ譲りません!譲りません!そのまま四頭が並んでゴールインッ!さぁー勝ったのはどの馬かっ!、、、
 第五回宇宙ダービーを制したのは、最内を突きました三番の地球馬、アースダービー馬のレーザームーンかっ!一方逃げ粘りました奇跡の黄金の脚!地球馬七番シリウスライドが奇跡を起こすか!さてはオリオン星団からの刺客オリオンダービー馬!八番スペリオルタイムか、はたまた大外を光の矢の如く抜けて来ました金星ダービー馬ヘリングストーンか!一同並んで全くわかりません!判定は*ソウルキャッチャーでの判定となります、、、)
 *馬のオーラ部も検討する写真判定器


         ・三年前の悲劇

「残念だ、気持ちは良くわかる、、、でもお前は決して悪くない」
 わさわさと騎乗準備を済まし、レースへと向かう者たちが居る中、先輩騎手である森岡の分厚い手が、馬威人(  まいと)  の肩をそっと抱えた。
 途端、馬威人は膝から崩れ落ち、まるで赤子が泣くかのように喚き散らして泣いた。
 この日、馬威人がデビュー戦から共に走って来た馬が、レース半ばで複雑骨折によって脚に故障を起こし、快復の兆しは見えないと判断され、帰らぬ馬となったのだ。
 崩れ落ちる馬威人を見て、同様に感化され涙ぐむ者も居た。お手馬として共にレースを駆け、調教もこなし、厩舎での世話も手塩をかけるという言葉に相応しい程に、時間をかけ信頼を築いてきた馬と人の間には、深い深い絆が生まれる。
 それが今日、一瞬にして失くなってしまった。お手馬は競馬ファンからも愛されるほどのアイドル馬で、その毛の色は全宇宙サラブレッドの中でも唯一無二と認定された七色を持ち、その色の名を協会は、虹鹿毛(  にじかげ)  と名付けた。また、競走馬名もそのまま
 ニジカゲ
 と名づけられていた。
 ニジカゲは決して成績が特出していた訳ではなかったが、人々が声をかけると、その尾っぽを"ユサユサと縦に揺らして"応えるという他の馬とは一癖違った陽気な性格が人々を癒していた。
 ただでさえ人々から愛される馬を、一番近いところで共に生きてきた人間である馬威人に、どうしようもない罪悪感と自責の念が、まるで溶けた水飴が心を覆い尽くすかのように襲い、そのまま自律神経を患った馬威人は、次の日から馬に乗れなくなった。
 幾日が過ぎても馬威人の心の水飴は一向に洗い流すことも、拭い去ることもできなかった。
 競馬ファンの中には馬威人を支持している者は多かった。なぜなら、馬威人は次世代のレジェンド騎手になるだろうと競馬会の各著名人や関係者からも高く評価されており、実際にデビュー戦をニジカゲと勝ち、その後も順調に成績を重ね、地球最年少で現在の地球最高クラスのクラシックレースを制覇したのだ。
 そんな輝かしい経歴を得て、更に将来への大きな希望と信頼を獲得していた馬威人に、まさかこんな試練が起こり得るとは、国民の誰もが知るよしもなかった。
 それは哀しい出来事とは裏腹に
 爽やかで少し暖かい風が吹き抜ける
 五月初旬のことだった、、、
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

処理中です...