壊れた脚で

トラストヒロキ

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慟哭の二年

憧れ・再起動

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                                   ~ 1年後 ~
 

 近年新しく発見された宇宙金属の初の適合馬としてその脚に使用し、レースに挑んだ馬が

 第5回S1宇宙ダービーを制した。

(   さぁ、ソウルキャッチャーでの判定結果!見事に逃げ切りました!シリウスライド!鞍上は現在勝利数宇宙ランキング2位の篠屋(  しのや )  騎手、これで通算勝利数を3009回を挙げました!)
 
 レース後にも観客の歓声が鳴り止まぬ中、白色の宇宙芝で作られ、空中庭園のように浮かぶウィナーズサークルでインタビューが始まる。
 馬威人は食い入るようにその様子を
*レーザービューでじっと眺めていた。
 *空中に映像を出すもの
 
(さぁ、第5回宇宙ダービーを制しましたシリウスライドに騎乗の篠屋騎手です!篠屋騎手!おめでとうございます!初の宇宙ダービーを制されました!今の心情はいかがでしょうか?)

「はい、、もう、、なんとも言えないほど嬉しいです。こんな気持ちは初めてです。
 今回、、宇宙ダービーを初めて勝てたのは、紛れもなくこのシリウスライドのおかげだと感じています。
僕はただ、連れて来てもらえたものだと感じています。心から感謝しています。応援してくれた全ての方に感謝しています。
本当に、、本当に素晴らしい馬だと尊敬します、、、」

 地球馬による初の宇宙ダービー制覇と自身も初の制覇を遂げた篠屋には、溢れんばかりの黄色い歓声と温かいファンファーレが止まず、篠屋自身も凛と佇む姿勢は保とうとするも、頬に流れる涙が止まらなかった。

 しかし、それよりも更に熱く歓声を浴びたのが、勝ち馬のシリウスライドであった。
 "義足の馬"が、宇宙ダービーを制したのだ。とんでもない快挙に全宇宙の競馬会は湧いた。多くの地球人や宇宙人がその異例の業績に、生き物の底計り知れない力と勇気を讃え、祝杯を挙げた。

 "金色の脚を持つ神馬シリウスライド"
 
 その異名を付けられ、また、新金属の新たな可能性を全宇宙に与えてくれた瞬間でもあった。
 
 そしてその様子を、馬威人は尊敬と歯痒さの入り混じった複雑な想いで、"療養施設"からずっと眺めていた、、、
 


   ~1年前~
 

 ルッキンフォーミーとのタッグで馬威人の復帰戦の日が来た。
 
「あれだけ乗ってきたんだ、、、大丈夫」
 
 そう呟いて控え室から一礼し、馬へ向かった。
 
 馬体重はプラス4kg、パドックでは依然とのんびり歩いているが、馬体は申し分ないほどの筋肉量に、艶やかな肌、ゆったりとした踏み込みに、馬威人は眼を閉じ深呼吸をしたのち、宜しくなっ!とルッキンフォーミーの肩を叩いて騎乗した。
 
 *空中道を渡り、*返し馬へとゆく。

 *観客すべてが観れるように作られた新しい本馬場への道
 *本馬場へと入ってからの馬とジョッキーとの折り合いや、落ち着き、踏み込みなどをチェックする事柄

 
(うん、良い、入れ込んでいないと言うよりは、やはりやる気がなさそうだ。もう少し気が入ってくれないとなぁ、、、)

 
 その馬威人の心配を他所に、ルッキンフォーミーの様子は変わらずにゲートを迎えた。
 
 ガシャン!
 ゲートが開き一斉にスタートを切った。
 先手を取ろうとする馬が競る中、馬威人の心配は他所に、気づけば第一コーナーを先頭でルッキンフォーミーは過ぎていた。

(  だめだ、、、いきなりスイッチが入ったのか?*掛かり気味だ、、、)
 
 *馬の気持ちが昂って力が入り過ぎていること、無駄に走ろうとして体力を消耗してしまうことにつながる
 
 ギュッと手綱を絞りルッキンフォーミーを抑える。とそこへ横並びに*ハナを奪いに一頭の馬が並んでくる。
 
 *先頭を取る馬のこと
 
 譲らんとルッキンフォーミーもグッと出ようとする、、、並ばれると気が立つところがあるルッキンフォーミーにはイヤな展開だ。まずいな、、このままだと両馬とも崩れる、、、譲った方がいいと手綱を強く握る馬威人だが、ルッキンフォーミーはまだ取らせまいと行こうとする。

 相手の馬は逃がさないとダメなタイプ、ならばハナさえ渡さなければ沈む可能性も高い。
 しかし、このペースだとこちらにもまずい。二頭が後続を*5馬身離して進み第4コーナーへ。
 *一馬身=馬一頭分の差
 
 相手の騎手は手綱を動かし始めている。だが、ルッキンフォーミーはまだ促さなくても*馬なりだ。
 *馬のペースで走らせていること

 馬威人は確信した。

(  完全に心肺機能はこちらが格上、ここまで体力があるとは、、、)
 
 直線へ入り、徐々に手綱を緩め追い出す馬威人に、言われなくても走るぞと言ったようにエンジンをかけたルッキンフォーミー。
 激しい後続馬の差し、追い込みが迫りきたが、結果はルッキンフォーミーが後続を退き、1馬身差を保ってゴールイン。

 馬威人の復帰戦は勝利を飾った。
 ゴール版を抜けた瞬間
 
「なんだよっ、、走れんじゃんかよお前っ!なら最初から気合い見せてくれよ!笑」
 
 と肩をパンパンと2回叩き、小さくガッツポーズをして自身の復帰勝利を噛み締めた。
 ルッキンフォーミーは既にハミから舌をベロベロ出して遊んでおり、馬威人は軽く微笑んだ。
 
 こうして復帰を共に飾り、馬威人にレースの喜びと楽しさをもう一度与えてくれたルッキンフォーミー。
 人馬は淡々と結果を出してゆき、馬威人の信頼も取り戻しつつあった。
 そして、その中で自身が忘れかけていた大いなる夢を、もう一度追いかけたいと思い直していた。その夢は、、、
 
 "S1宇宙ダービーの制覇"
 
 全宇宙のサラブレッドと騎手が集い、その年の宇宙一の馬を決定する正真正銘の宇宙最高の証だ。その称号は全宇宙の騎手からすると何よりも変え難く、命よりも大切だと言われる宝物の称号と言われる。

「小田原さん、、、僕、、、もう一度宇宙ダービー目指したいです、、、」
 
 すかさず小田原は応える。

「そんなのは復帰する前から知っているよ!何を今更言ってるんだい?笑」
 
 復帰までに涙ばかり溢してきた馬威人の顔には、夢への想いを馳せる表情と、遠くを見る瞳の奥に、自身の目的を確認する決意の火が、ゆっくりと着火し始めていた。
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