壊れた脚で

トラストヒロキ

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The road to space derby

Possibility

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「いよいよ明日、私も経験としては小田原さんに連れて行ってもらったことで一度しか触れたことのない宇宙ダービーだ。
 ここまでくるともう覚悟を決めて、今までのことをレースへ繋げれる様に細心の注意を払い、馬威人くんとテイルを送り出すことが、私達のできる最大の仕事だ。
 もう一度、要注意の馬と、レースの作戦を確認しよう」
 
 チームは静かに聞き入れた。
 
「まずは、、、
 2番 ブドゥッフ 鞍上 ルイス
 カシオペア星団ダービー馬。
 この馬はとにかく他馬に対する圧力のかけ方が凄い。
 過去映像から見ても並んだ馬を睨みつつ、いなしながら走っているのが伺える。テイルの右側には来て欲しくない。
 馬体も今レース最大級の六〇〇キロを超え、相当な筋肉量とトモの力量は王者の貫禄としか言えない。
 ただ、今回この馬が内枠に入ったことは功を奏すかもしれない。これだけの巨体の持ち主だ。馬込みはヤリにくいだろう。
 ただ、、それが導火線に火をつけるような運びになれば怖い。
 続いて
 7番 ループザメロディー 鞍上 ファー。
 オリオン星団、この馬もダービー馬だ。
 黄色の体毛の胸元に黒い毛色が入っているのが特徴的な馬。その模様が音符に似ているからこの名前になったそうだ。
 この馬は極めて鋭い脚が特徴的だ。
 ダービーレースでも*殿(  しんがり)
 *馬群の最後尾のこと
 
 から信じられない豪脚で全馬を差し切り、4馬身も開けたのち、ゴールを過ぎてもまだ伸び続けるようなスイッチが入れば止まらないタイプだ。
 脚質はテイルと同じタイプだが、恐らくテイルよりもキレる。今回はどの位置から競馬をするのか、要注意だ。この馬よりは前のポジションでないと、テイルに勝ち目はないだろう。続いて
 11番 トロン 鞍上ミカエル。
 プレアデス星団から、この馬もダービー馬だ。
 音速のペガサス。と異名を持つ馬だ。
 名前の通り、スタートから終盤まで快速で飛ばせるその並々ならぬ心肺機能で、既にそれは暫定宇宙一と言われている。
 今回の優勝候補と言われている。
 1番人気となるだろう。生まれつき両方の肩周辺部の骨が外へと突き出していて、それが羽根のようだからペガサスと呼ばれている。なんともスター性のある馬だね。

 最後は一度闘ってテイルが負けている地球ダービー馬の
 14番 サークルエナジー 鞍上 タリー。
 あのレース後、相手側の調教師の言葉で気になる点があったんだ。
 それはテイルの影を少し気にして本領を発揮できなかったと言っていた、、、
 そして、今回、*シャドーロール
 
 * 影や、下を気にする馬の鼻上部に付けられる丸い馬具
 
 を付けて出してくると言うことだ。前回より力が出せるとなれば、ハッキリ言ってサークルエナジーも優勝候補と言えるだろう」

 
 一同は頑なな表情で話しを聞いた。
 三輪は少し空気が重くなっている事を感じたのか、ニコッと表情を和ませて言った。


「まぁ、ここまで強くて相当厳しい相手だと今から解ってるからなぁっ!!
 あとは、、、練った作戦を頑張るしかないさ!」
 
 すかさずチームが作戦を問う。
 
「あぁ。今回のテイルは一番得意な差し競馬で行かせよう。」
 
 一同は頷く。

「テイルの枠はありがたいことに外目12番を引いた。
 今回18頭立てだからテイルにとっては丁度良いかと思う。問題はコース形態だ、、、通常のコース携帯はサークル上になっていてスタートの直線部と最後の直線部は同じ直線を走る。
 しかしこのギャラクシー競馬場のコースは、スタートの直線部をまず直進、そのまま左周りでゆっくり坂を登っていき、第3コーナーの頂点を過ぎるところまでは傾斜としてはかなりキツい登り坂になっている。
 そしてそこを過ぎると下りに入り、直線部入り口までを下っていくのだが、ここが螺旋状になっているんだ。
 ちょうど高速道路の出口を想像したら解るだろう。そして、下るとスタートと同じ方向を向いた新しい直線が340m。
 どんな馬も経験した事のない宇宙一タフなコースと言われている。
 そして、直線も日本の東京までは行かないが、ある程度の長さはあり、先行馬よりも脚を溜めていられれば、差し切る事も可能なコースだ。
 しかし、この傾斜だ。どの馬にとっても過酷なレースになる、各々の馬が、各々の闘いともなるんだ、、、」
 
 一同がざわつく中、三輪が話しを続けた。
 
「テイルはじっくりじっくり後方集団で脚をなるべく溜めて進めたい。
 いくら先頭をいく音速のペガサスと言えども経験した事のない登り坂を快速で飛ばすなんてことはできないはずだ。
 ペースは恐らくスローになる。
 だがスローになった時、余力を残したまま行かせると、、、こちらが届かない可能性がある。ギリギリの所での勝負仕掛けが鍵となる。
 わかるね?馬威人くん」
 
 頷く馬威人。三輪が続ける。
 
「テイルは前回同様、ブリンカーを装着させる。テイルの右側外目の後方に位置取りする馬が確実にいるだろうから。まぁ、今回左周りは恵まれたと思える。なんとか気にならずにレースを運べるよう祈りたい。」
 
 ふぅ、、、と、一通り説明を終えた三輪は最後に言った。
 

「あとは馬威人くんとテイルに任せるとしよう!!
 以上、皆んな、、、明日はよろしくお願いします!ベストを尽くそう!!」
 

 お疲れ様でした!!
 
 チームは本番までの間、しばしの緊張から身を離すように晩食へと向かった。
 
 夜も更けてきた。
 明日のレースを何度も何度もイメージしながら、夜空の星団を眺める馬威人の前にタリーが近づいてきた。
 
「いよいよですね。ボクはとても緊張しています!でも、、とても楽しいです!
 こんな素晴らしいレースに出れることと、サークルエナジーに乗せてもらえてることに感謝して、頑張って勝ちたいです!
 馬威人さん、頑張りましょう!」
 

 しかし、馬威人の耳はそのタリーの言葉の半分ほどしか聞き入れられずに居た。

 会釈だけ見せて、握手をしたその馬威人の目には、夜空の星団の中にキラッと輝いた流れ星が、いつまでも残っていた。
 そしてその輝きの中に、かつてのニジカゲの姿を思い出していた、、、
 
 宇宙ダービーまで、あと約12時間。
 
 馬威人の心は未だかつて感じたことのない恐怖と希望がぶつかり合っていた、、、
 
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