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2話 魔力の制御
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翌朝。
「おいチビ。いつまで飯食ってる気だ。さっさと支度しろ」
朝からヴォルクさんの罵声が飛ぶ。
「すみません、すぐ行きます」
僕はパンを口へ放り込むと、魔法杖を持って慌てて彼の後を追った。
「エミル……健気で可愛い……」
去り際にそう言うケントの声が聞こえた。
健気……か。あのわがまま姫のおかげでこういうことにも耐性がついてしまって、僕にとっては普通だけどな……と、思った。
アジトを出るなりヴォルクさんは僕のローブをピシッと整える。
「チッ。貴族のボンボンはローブもまともに着れねぇのかよ」
そう言ってひっくり返っていたフードを丁寧に元へ戻す。
「わっ、すみません、ありがとうございます……!」
僕がそう言ってはにかむと、なぜか引くように舌打ちされた。
まさか、身だしなみを見てくれるなんて思わなかった。
「魔物の討伐経験は?」
「あの……すみません、ないです……」
「チッ。仕方ねぇ雑魚で様子見るか……」
「あ……すみません僕のために……」
「はぁ? 勘違いすんなよ。怪我されたらめんどくせぇだけだ」
彼は慌ててそう言い返してきた。
「それでも、ありがとうございます」
「っ……!」
なぜか僕がニコッとお礼を言うと、彼は言葉に詰まって早歩きで行ってしまった。
「ま、待ってください~!」
【リベルタ大平原】
「あのゴブリンになんか魔法撃ってみろ」
「はい! ファイア!」
「げっ、なんっだその威力……!」
僕が魔法を撃った瞬間ヴォルクさんの顔が引きつる。
⸺⸺ボッ!⸺⸺
『ギャァァァッ』
「やった、倒した!」
「やった、じゃねぇ! てめぇ今すぐ水の魔法で火を消せ!」
「へ? うわぁ!?」
僕はヴォルクさんに言われてゴブリンのいた周辺を見渡すと、メラメラと芝が燃え広がっていることに気付いた。
「すすすすみません! アクア!」
⸺⸺バッシャーン⸺⸺
「ふぅ。危ない危ない……」
僕はふぅっと一息つくと、何かとんでもない殺気を感じてヴォルクさんの方を見る。
すると、僕の水の魔法でびしょ濡れになったヴォルクさんがそこにいた。
「てめぇ……この俺に水をぶっかけるとは良い度胸だな?」
「あわわわ……す、すみません~!」
僕は命の危機を感じ、その場から逃げ出す。
「てめっ、こら、逃げんじゃねぇ!」
追ってくるヴォルクさん。
逃げる僕。
やがて僕は、どんくさく石に躓いて大胆に転んだ。
「うぎゃぁっ!」
「なっ!?」
そんな不意に転んだ僕にドミノ倒しになるヴォルクさん。
僕は身動きが取れず、とりあえず仰向けになる。
すると、人の少ない大平原のど真ん中でヴォルクさんに押し倒されたみたいになっていた。
彼は僕を押しつぶさないよう肘をついて耐えていた。
「わっ、すみません!」
「てめぇ……」
わ、怒られる……!
そう思い僕はギュッと目をつぶった。
すると、ヴォルクさんは僕の頭を雑にワシワシと撫でてきた。
「てめぇ、良い魔力持ってんじゃねぇか!」
彼はそう言って悪そうに笑う。
「へ?」
僕は呆気にとられてポカンとする。
それにしても、ヴォルクさんの髪から水がしたたり落ちて、なんか色気があってカッコイイ……。
「いいか、エミル。お前は魔力の制御さえできりゃぁトップクラスに強くなれる。俺が今日から毎日たっぷりしごいてやるから覚悟しろよ?」
今、エミルって……。そ、それに、毎日たっぷりしごかれる……!?
僕は、ヴォルクさんのその色気も重なって、ドキドキしてしまった。
「か……カッコイイ……」
「!? ってめ、ふざっけんなよ!」
ヴォルクさんは顔を真っ赤にして起き上がると、早歩きで離れていってしまった。
「わぁ、待ってくださいよ~!」
「おいチビ。いつまで飯食ってる気だ。さっさと支度しろ」
朝からヴォルクさんの罵声が飛ぶ。
「すみません、すぐ行きます」
僕はパンを口へ放り込むと、魔法杖を持って慌てて彼の後を追った。
「エミル……健気で可愛い……」
去り際にそう言うケントの声が聞こえた。
健気……か。あのわがまま姫のおかげでこういうことにも耐性がついてしまって、僕にとっては普通だけどな……と、思った。
アジトを出るなりヴォルクさんは僕のローブをピシッと整える。
「チッ。貴族のボンボンはローブもまともに着れねぇのかよ」
そう言ってひっくり返っていたフードを丁寧に元へ戻す。
「わっ、すみません、ありがとうございます……!」
僕がそう言ってはにかむと、なぜか引くように舌打ちされた。
まさか、身だしなみを見てくれるなんて思わなかった。
「魔物の討伐経験は?」
「あの……すみません、ないです……」
「チッ。仕方ねぇ雑魚で様子見るか……」
「あ……すみません僕のために……」
「はぁ? 勘違いすんなよ。怪我されたらめんどくせぇだけだ」
彼は慌ててそう言い返してきた。
「それでも、ありがとうございます」
「っ……!」
なぜか僕がニコッとお礼を言うと、彼は言葉に詰まって早歩きで行ってしまった。
「ま、待ってください~!」
【リベルタ大平原】
「あのゴブリンになんか魔法撃ってみろ」
「はい! ファイア!」
「げっ、なんっだその威力……!」
僕が魔法を撃った瞬間ヴォルクさんの顔が引きつる。
⸺⸺ボッ!⸺⸺
『ギャァァァッ』
「やった、倒した!」
「やった、じゃねぇ! てめぇ今すぐ水の魔法で火を消せ!」
「へ? うわぁ!?」
僕はヴォルクさんに言われてゴブリンのいた周辺を見渡すと、メラメラと芝が燃え広がっていることに気付いた。
「すすすすみません! アクア!」
⸺⸺バッシャーン⸺⸺
「ふぅ。危ない危ない……」
僕はふぅっと一息つくと、何かとんでもない殺気を感じてヴォルクさんの方を見る。
すると、僕の水の魔法でびしょ濡れになったヴォルクさんがそこにいた。
「てめぇ……この俺に水をぶっかけるとは良い度胸だな?」
「あわわわ……す、すみません~!」
僕は命の危機を感じ、その場から逃げ出す。
「てめっ、こら、逃げんじゃねぇ!」
追ってくるヴォルクさん。
逃げる僕。
やがて僕は、どんくさく石に躓いて大胆に転んだ。
「うぎゃぁっ!」
「なっ!?」
そんな不意に転んだ僕にドミノ倒しになるヴォルクさん。
僕は身動きが取れず、とりあえず仰向けになる。
すると、人の少ない大平原のど真ん中でヴォルクさんに押し倒されたみたいになっていた。
彼は僕を押しつぶさないよう肘をついて耐えていた。
「わっ、すみません!」
「てめぇ……」
わ、怒られる……!
そう思い僕はギュッと目をつぶった。
すると、ヴォルクさんは僕の頭を雑にワシワシと撫でてきた。
「てめぇ、良い魔力持ってんじゃねぇか!」
彼はそう言って悪そうに笑う。
「へ?」
僕は呆気にとられてポカンとする。
それにしても、ヴォルクさんの髪から水がしたたり落ちて、なんか色気があってカッコイイ……。
「いいか、エミル。お前は魔力の制御さえできりゃぁトップクラスに強くなれる。俺が今日から毎日たっぷりしごいてやるから覚悟しろよ?」
今、エミルって……。そ、それに、毎日たっぷりしごかれる……!?
僕は、ヴォルクさんのその色気も重なって、ドキドキしてしまった。
「か……カッコイイ……」
「!? ってめ、ふざっけんなよ!」
ヴォルクさんは顔を真っ赤にして起き上がると、早歩きで離れていってしまった。
「わぁ、待ってくださいよ~!」
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