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崩れていく~アリシア目線~
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完璧だった。
仕組みも流れも、証拠の捏造も、噂の操作も。
すべて私が描いた通りだった。
お義姉様が神の声を受けた?
ならばそれを“魔の囁き”にすり替えればいい。
王太子は疑念を抱き、民は信仰を失い、私は再び玉座の隣に立ち続ける。
そのはずだった。
・・・そのはずだったのに。
「“魔の痕跡”に偽装の術式が混じっていた?」
次の日、朝早くに神官長から届いた報告を見たとき、私は手が震えそうになるのを必死で抑えた。
「それは・・・誰が言い出したのです?」
神官長は視線を伏せ、しばらく沈黙した後、重い口を開いた。
「・・・王宮付きの第三魔術師団だ。彼らが独自に解析を行い、最初に調査した痕跡に『人為的な魔力の改変』があると指摘している。痕跡そのものが魔術的に“植え付けられた”可能性が高いと・・・」
その言葉に、頭が真っ白になりかけた。
「まさか、私の仕組みがばれたとでも?そんなことはあり得ない!何故勝手なことをさせたのよ!!」
「私も、知らなかったのです。あいつらは勝手に動き、勝手に報告書を陛下に提出した。・・・私のせいではありません」
神官長の瞳はどこか虚ろで、言葉に含まれた冷徹さが私の胸を締めつけた。
「つまり、あなたは無力だということですか?」
「こうなってしまっては、私にはもうどうすることもできません」
そう言って、神官長は私から目をそらした。
切り捨てらる気だ。
これまで私が築いてきた地位も、計画も、捏造も、すべてがなかったことにされようとしている。
第三魔術師団の“暴走”を盾に、私の過ちも悪事も、神殿は知らぬ顔を決め込むつもりなのだ。
あの日々の謀略も、あの時の欺瞞も、すべては霧散する。
私はただの“魔の囁きを流した”犯人として、歴史の闇に葬られるのだろうか。
冗談じゃない。
私はまだ諦めない。
ところが私の決意を裏腹にさらに追い討ちをかけるように、またしても第三魔術師団の一人がラゼル様に進言したと聞いた。
「聖女レティシアの“神託”の内容があまりに明確すぎる。神の声とは、本来もっと抽象的で、象徴的だ。あの明瞭さは、むしろ“正統性”を示している」
正統性。
つまり、“本物の神託”だということだ。
誰かが、お義姉様を信じ始めている。
それが、徐々に広がっている。
「アリシア。・・・これは事実か?」
ラゼル様が、私のもとに訪れたとき、もう言い訳は通じなかった。
「“魔の痕跡”が偽造された可能性があると聞いた。
レティシアが“清き祈り”を続けていたとする証言も、各地から届いている。・・・私に、何か言うことはあるか?」
私は、口を開こうとした。
何か、何でも言い逃れる言葉を探した。
でも、声にならなかった。
私が仕掛けた“嘘”は、もう誰かに見抜かれ始めていた。
そして一度疑念が芽生えれば、人は戻らない。
それは、私自身が散々操作してきたもの、信頼の仕組みだったから。
「レティシアを貶めるために、神を信仰を道具に使ったとしたら・・・」
ラゼル様の目が、私を射抜いた。
「それは、聖女の名を語る者として、最も許されざる行為だ」
心臓が、冷たくなる。
私、負けるの?
違う、まだよ。
まだ完全に証拠が出たわけじゃない。
お義姉様だって、証明されたわけじゃない。
「信じて・・・ラゼル様。私は、あなたのために・・・王都のために・・・」
「それが“嘘”だったなら、私の信頼も、国の民も、二度と戻らん」
彼はそう言って、背を向けた。
その背中が、遠く感じた。
仕組みも流れも、証拠の捏造も、噂の操作も。
すべて私が描いた通りだった。
お義姉様が神の声を受けた?
ならばそれを“魔の囁き”にすり替えればいい。
王太子は疑念を抱き、民は信仰を失い、私は再び玉座の隣に立ち続ける。
そのはずだった。
・・・そのはずだったのに。
「“魔の痕跡”に偽装の術式が混じっていた?」
次の日、朝早くに神官長から届いた報告を見たとき、私は手が震えそうになるのを必死で抑えた。
「それは・・・誰が言い出したのです?」
神官長は視線を伏せ、しばらく沈黙した後、重い口を開いた。
「・・・王宮付きの第三魔術師団だ。彼らが独自に解析を行い、最初に調査した痕跡に『人為的な魔力の改変』があると指摘している。痕跡そのものが魔術的に“植え付けられた”可能性が高いと・・・」
その言葉に、頭が真っ白になりかけた。
「まさか、私の仕組みがばれたとでも?そんなことはあり得ない!何故勝手なことをさせたのよ!!」
「私も、知らなかったのです。あいつらは勝手に動き、勝手に報告書を陛下に提出した。・・・私のせいではありません」
神官長の瞳はどこか虚ろで、言葉に含まれた冷徹さが私の胸を締めつけた。
「つまり、あなたは無力だということですか?」
「こうなってしまっては、私にはもうどうすることもできません」
そう言って、神官長は私から目をそらした。
切り捨てらる気だ。
これまで私が築いてきた地位も、計画も、捏造も、すべてがなかったことにされようとしている。
第三魔術師団の“暴走”を盾に、私の過ちも悪事も、神殿は知らぬ顔を決め込むつもりなのだ。
あの日々の謀略も、あの時の欺瞞も、すべては霧散する。
私はただの“魔の囁きを流した”犯人として、歴史の闇に葬られるのだろうか。
冗談じゃない。
私はまだ諦めない。
ところが私の決意を裏腹にさらに追い討ちをかけるように、またしても第三魔術師団の一人がラゼル様に進言したと聞いた。
「聖女レティシアの“神託”の内容があまりに明確すぎる。神の声とは、本来もっと抽象的で、象徴的だ。あの明瞭さは、むしろ“正統性”を示している」
正統性。
つまり、“本物の神託”だということだ。
誰かが、お義姉様を信じ始めている。
それが、徐々に広がっている。
「アリシア。・・・これは事実か?」
ラゼル様が、私のもとに訪れたとき、もう言い訳は通じなかった。
「“魔の痕跡”が偽造された可能性があると聞いた。
レティシアが“清き祈り”を続けていたとする証言も、各地から届いている。・・・私に、何か言うことはあるか?」
私は、口を開こうとした。
何か、何でも言い逃れる言葉を探した。
でも、声にならなかった。
私が仕掛けた“嘘”は、もう誰かに見抜かれ始めていた。
そして一度疑念が芽生えれば、人は戻らない。
それは、私自身が散々操作してきたもの、信頼の仕組みだったから。
「レティシアを貶めるために、神を信仰を道具に使ったとしたら・・・」
ラゼル様の目が、私を射抜いた。
「それは、聖女の名を語る者として、最も許されざる行為だ」
心臓が、冷たくなる。
私、負けるの?
違う、まだよ。
まだ完全に証拠が出たわけじゃない。
お義姉様だって、証明されたわけじゃない。
「信じて・・・ラゼル様。私は、あなたのために・・・王都のために・・・」
「それが“嘘”だったなら、私の信頼も、国の民も、二度と戻らん」
彼はそう言って、背を向けた。
その背中が、遠く感じた。
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