【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)

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001 やっぱり追放か……

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「アベル、貴方はクビよ!」
「あ?」

 ブランディーヌの生意気な物言いにカチンときて、ついその紫の長髪が垂れる顔を睨む。

 毎度、我がことながら粗暴な態度だとは思うが、こうしてなきゃ舐められる。冒険者家業は舐められたら終わりだ。

 オレも意識しなくとも粗暴な態度になるくらいには、冒険者ってやつに染まってきたってことだな。まったく嬉しくねぇが。

 オレの視線の先、いつもはすぐさま伏せられるブランディーヌの緑の目が、今日は余裕の笑みを浮かべてオレを見下していた。

「はぁ……」
「くふっ。くふふ……」

 オレはため息を吐き、真正面から大剣を背に担いだガタイのいい女、ブランディーヌを見る。オレが訊き返しても意見を曲げる様子がない。それどころか、ブランディーヌは愉しくて仕方がないといった歪な嗤いを浮かべたままだ。

 面倒なことになったな。ダンジョンから帰ってきたばかりで疲れてるってのに。

 今は冒険者ギルドに併設された食堂のテーブルに座り、レベル6ダンジョン『氷雪』を攻略した打ち上げをしているところだ。オレたちのパーティのリーダーであるブランディーヌに音頭を任せたら、いきなりオレのクビを宣言しやがった。

 マズイことに周りに居る冒険者たちも、こちらの不穏な空気に気が付いたらしい。先程までうるさいくらい騒いでいた冒険者たちが静まり返り、オレたちのことを窺い見ているのが分かる。

「本気か?」

 オレの問いかけに、待っていましたとばかりにブランディーヌが口を開いた。

「当たり前よ! だいたい、わたくしは最初から気に喰わなかったの! たしかに、アンタの冒険者経験はご立派かもしれないけどね! 実際にモンスターと戦いもしない荷物持ちの分際で、いちいちリーダー面して指図してきてうるさいのよ!」
 
 こんな大勢の冒険者の前で宣言した以上、もう取り消すことなんてできない。それぐらいブランディーヌにも分かるだろう。つまり、それだけブランディーヌは本気だ。本気でオレをクビにしようとしている。

 どちらにしても、同じパーティメンバーだろうが、リーダーだろうが、若輩者にここまで言われたら引き下がることなんてできない。冒険者にとって、メンツとは時に命よりも重いのだ。

「未熟者の青二才が吠えやがる。オレの助言が無ければ、今頃お前たちなんてとっくに死んでるぞ? いつも無茶な指示ばっかり出しやがって。お前はいつになったら学習するんだ?」
「その上から目線が気に喰わないと言っているのよ! いつもわたくしの指示と反対のことを口にして! いいこと! 貴方の助言は、戦えもしない弱者の弱い意見でしかないの! 強者には強者の意見があるのよ!」

 オレの言葉に、ブランディーヌが唾を飛ばして吠える。だいぶ鬱憤が溜まっていたらしい。不満を口に出せて心が晴れたのか、やけにスッキリした表情のブランディーヌが印象に残った。

 たしかに、オレとブランディーヌは意見を違えることが多かったのは事実だ。ブランディーヌは経験不足と想像力の無さがそうさせるのか、無茶な決定をすることが多い。それを毎度のように諫めてきたのがオレだ。ブランディーヌにとっては、毎回自分の意見に異を唱えられるのだ。そりゃ不満もたまるだろう。

 オレを嫌ってくれてもいい。その分成長して、いつかオレを追い抜いてくれたらいい。そう思っていたんだが……。

 ブランディーヌの表情がどうしようもない愉悦に歪むのが分かった。いつも自分の容姿を鼻にかけていたブランディーヌらしかぬ醜悪な笑みだ。薄々分かってはいたが、これがブランディーヌの本性なのだろう。

「だが! それも今日まで! コレを見なさい!」

 ブランディーヌが手にしている物。それは、見た目はなんの変哲もない革のバックパックだ。だが、オレはそのバックパックがタダの鞄ではないことを知っている。

 マジックバッグ。ダンジョンから見つかる宝具の中で、おそらく一番有名な宝具だ。その見た目からは考えられないくらい大量の物が入る魔法の鞄。マジックバッグに入れた時点で時間が止まるのか、中の物が腐る心配もない。おまけに、いくら物を入れてもマジックバッグは軽いままだ。

 全ての人が欲しがるだろう、まさしく魔法の鞄。それをオレたちはダンジョンで手に入れた。

「コレさえあれば、【収納】しかできない貴方はもう用済みなのよ!」
「………」

 ブランディーヌの言葉に、オレは“またか”という思いに駆られた。

「悔しい? 悔しいわよねぇ? コレはお前のギフトの倍は物が入るのよ? しかも、給料も必要ないし、いちいちわたくしたちに指図しない。完全なる貴方の上位互換! 宝具とはいえ、タダの道具以下に成り下がった気分はいかがかしらぁ?」

 オレはまたマジックバッグに居場所を奪われるのか……。

 パーティを追放されるのは……これで三度目だ。一度目も二度目もマジックバッグを手に入れたことが直接的な原因だったが……。まさか三度目もこれとはな……。

「お前らも同じ意見か?」

 オレは同じ席に着く他の4人に目を向ける。

 イスをギシリと軋ませて、縦にも横にもデカい全身鎧姿の巨漢、セドリックがすまなそうに口を開く。

「アベルさん、リーダーの非礼は詫びよう。だが、ブランディーヌの言う通りだ。マジックバッグを手に入れた以上、アベルさんにできることは、もうなにも無い。ここは大人しく身を引いてくれ」

 セドリックの隣に座る男、セドリックとは対照的に線の細い男が、少しも悪く思ってなさそうな顔で嗤う。黒くタイトな格好をした、黒と見間違えそうなほど濃い赤毛の男。パーティの斥候役のジョルジュだ。その顔はニヤニヤとした笑みを隠さず、気分が悪い。

「キヒヒッ。そういうこった。わりぃな、おっさん」

 ジョルジュの後に続くように、神経質そうに震えた口を開くのは、豪奢な赤いローブを着た金髪の男。パーティの魔法使いクロードだ。声は静かだが、余程オレへの不満が溜まっているのか、細く鋭い目で睨みつけてくる。腕を組み、右手の人差し指が苛立ちを現すようにローブを叩いていた。

「はぁ……もういいだろうアベル? お前ももう年なんだから、ここらで引退したらどうだ? お前が居ると、どれだけ功績を挙げたとしても、お前のおかげという目で見られるんだ。僕にはそれが我慢できない」

 こいつらのことは、15の成人したての頃から今まで6年も面倒見てるから、そういう目で見られることもあるだろう。だが、そんな声は功績を挙げ続ければ、いずれ無くなる。所詮はやっかみの声でしかない。そんなことも分からねぇのか。自分たちが評価されないからとオレを切り捨てるのは、短絡的にもほどがあると言える。

 しかし、パーティの皆はクロードの意見を支持するようにウンウンと頷いている。

 白地に青のラインが入った修道服が、パツパツになるまで筋肉が盛り上がっている男がイスから立ち上がった。その巌《いわお》のような四角い顔。パーティの回復役にして戦士。武装神官、あるいはモンクと呼ばれることのあるグラシアンだ。

「拙僧たちは、正当な評価と更なる飛躍を望んでいるのだ。そのためには、貴殿のような老害はもはや不要。パーティにとって害悪ですらある。それを理解されよ」

 グラシアンの痛烈な罵倒が静まり返った冒険者ギルドに響く。きっと、他の冒険者たちにも聞こえたことだろう。ざわざわとした意味の聞き取れない言葉のさざ波が起きた。

「これで分かったでしょう? 貴方はもう必要ありませんの!」

 ブランディーヌの言葉通り、オレ以外のパーティメンバー5人全員がオレの追放を望んでいる。そんな状況に眩暈さえ覚えた。

 たしかに、パーティメンバーとの関係は最近ギクシャクとし、思わしくなかった。オレ自身も面白くないものを感じていたが、それはこの若造たちも同じだったらしい。そして、マジックバッグを手に入れたことで今までの不満が爆発したのだ。

 それは、これまで命を預けあった6年間の絆を吹き飛ばすほどのものだったようだ。

 オレは、なんだか急になにもかもがバカらしく思えてきた。こんな奴らでも、オレは真摯に向き合ってきたつもりだ。たしかに、コイツらにとっては面白くないことも言ったかもしれない。だが、それもコイツらの成長を思えばこそだったんだが……。

 宝具一つで仲間を切るような判断をするような奴にはついていけない。コイツら、オレを切り捨てるのはいいが、自分たちも切り捨てられることもあるって分かってるのかねぇ……。

「いいだろう。分かった。オレはパーティを出ていく」

 こんな奴らとは話すだけ無駄だ。オレは豪華な料理が並んだ席を立つ。

「お待ちなさい。なにを勝手に行こうとしているんです。出すもの出してからお行きなさい」

 パーティに背を向けたオレにブランディーヌの声がかかる。

 出すもの? パーティの荷物は全てマジックバッグに入れ替えた。今更オレに出すものなんて無いはずだが……?

「何を出せってんだ? 忘れ物なんてねぇだろ?」
「いいえ、ありますわ! そもそも、戦えもしない貴方が一丁前に一人分の分け前を貰っていたことが間違いだったんですわ。今までの迷惑料込みで、有り金全部置いていきなさい。それでやっとつり合いが取れるってものです」

 コイツは何を言ってるんだ?

「そんな横暴が通ると本気で思ってんのか?」

 半ばブランディーヌの頭を心配したオレの発言に対し、しかし……。

「ブランディーヌの言が正しい。置いて行かれよ」
「キヒッ! あんたも変な後腐れは嫌だろ? 置いてけよ」
「アベル。あんたにはそれだけ迷惑してたんだ。きっちり出すものを出していけよ」
「拙僧もブランディーヌの判断を支持する。戦えもしない弱者が、強者である我々と同じ給金というのは納得できなかった」

 セドリック、ジョルジュ、クロード、グラシアン、皆はブランディーヌに賛成らしい。コイツら、どうしようもねぇな。

 今までのオレの教育はなんだったのか……。そんな虚しさを感じる。

「はぁ……」

 オレは重い溜息一つ吐いて、虚空からズシリと重い革袋を取り出した。そいつをブランディーヌに向けて放り投げる。

「あら。随分とまぁ貯め込んでいたものね。それだけわたくしたちは貴方に搾取されてたってことでしょう? まったく、厄介な寄生虫が消えてせいせいしますわ」

 ブランディーヌの罵倒を聞いても、最早怒りも湧いてこない。

「コイツは手切れ金だ。もうオレに関わるな。オレもお前たちに関わらない。それでいいだろ?」
「当たり前です。頼まれたって関わってあげませんから」

 オレの言葉に、ブランディーヌが頷く。これで、オレとコイツらはもうパーティメンバーでもなんでもない。赤の他人だ。

「最後に一つ。次にダンジョンに行くなら、レベル5のダンジョンに行くといい。そこで自分たちの実力を確認しておけ」

 オレの最後の忠告に、ブランディーヌたちは気分を害したような表情を浮かべるのが見えた。

「うるさいですわ! 最後の最後までわたくしたちをコケにして! わたくしたちが次に行くのはレベル7です! わたくしたちは貴方みたいな臆病者ではありません!」

 ブランディーヌの怒声に頷くパーティメンバーたち。コイツらは自殺願望でもあるのか?

 まぁ、もうオレには関係ねぇか。

「はぁ……」

 オレはやるせない気持ちを溜息に変えて、その場を後にするのだった。

「「「「「かんぱーい!!!」」」」」

 後ろから盛大な乾杯の声が聞こえる。ブランディーヌたち『切り裂く闇』の連中だ。オレが居なくなったことを心から喜んでいるのが伝わってくる。あんな奴らとパーティを組んでいたなんて、自分の見る目の無さが嫌になるな。

 ヒソヒソと囁き、オレと『切り裂く闇』の連中に窺うような視線を向けてくる冒険者たち。こんな大勢の前での追放劇だ。明日には、王都の誰もが知るところとなるだろう。今から憂鬱な気分だ。

 あんな奴らだが、冒険者パーティの中では期待の若手株だ。そこからの追放。しかも、これで三度目。となると、オレの悪評が立ちそうだな。「またマジックバッグに居場所を奪われた間抜け」なんて言われそうだ。
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