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111 切り裂く闇⑥
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「久しぶりですわね、アベル!」
これまでの長い沈黙を破って、ブランディーヌ率いる『切り裂く闇』が冒険者ギルドに姿を現した。久しぶりの噂のパーティの登場に、冒険者ギルドに居た冒険者たちがざわざわと騒ぎ出す。だが、その音量は少なく、一人一人の声は判別するのは難しいほどだ。
皆、変に絡まれたくないから小声なのだろう。ブランディーヌたちは、噛み付き癖があるからな。
久しぶりに会ったブランディーヌたちは、余裕というものが無かった。心なしかやつれたようにも見える。それでいて、目だけはぎょろりと血走り、確実にオレを視界に捉えていた。
「久しぶりだな。ちょっと見ない間に痩せたんじゃないか?」
「ええ、ええ。貴方のおかげで! ここ毎日楽しく暮らせていますわ!」
「チッ」
オレの言葉を皮肉と受け取ったらしい。ブランディーヌの口の端がピクピクと震えていた。その後ろでは、ジョルジュが舌打ちしている。
オディロンの情報では、毎日喧騒が絶えないって話だし、かなり憎しみが溜まっているのだろう。
たしかに、今のブランディーヌたちは、なにをしでかしてもおかしくはない狂気があるような気がした。
「で? 何の用だ? オレたちは互いに不干渉だったはずだろ? 約束は守れよ」
「くっ! はー、ふー」
一瞬、憤怒に歪んだブランディーヌの顔。しかし、なんとか怒りを飲み込んだのか、深呼吸をする。その後にブランディーヌの顔に浮かんでいたのは、まるでオレに媚びるような顔だ。
並の男よりも大きく、分厚いブランディーヌの体。顔も大きく角張って四角く、まるでおっさんのようだ。胸なのか大胸筋なのかも判断がつかない、まるで野生のゴリラのような女。
そんな容姿だというのに、ブランディーヌは、自分は世界一美しいと自認しているのだから救えない。
オレもべつにブランディーヌの容姿や感性を否定したいわけじゃない。だが、ブランディーヌの場合、自分に靡かない男は、どうしようもないクズと判断するのだから面倒くさい。
なにが言いたいかといえば、ブランディーヌの媚びた視線は危険なのだ。彼女は自分が媚びて靡かない男は居ないと考えている。そして、もし否定しようものなら、烈火のごとく怒りだすのだ。
かなり面倒くさい。
「今日はね、アベル。貴方に素敵なお話を持ってきたの」
気味が悪い猫なで声を出しながら、ブランディーヌがオレに向けてウィンクした。正直、止めてほしい。吐き気がする。
「貴方をわたくしのパーティ『切り裂く闇』に入れてあげるわ。光栄に思いなさい」
「はぁ?」
どんな恨み言が飛び出るかと思ったが、ブランディーヌの言葉は俺の予想の斜め上を突っ走っていた。
「もう一度、貴方にチャンスをあげると言っているのよ。貴方のことは不快だけど、少しだけ我慢してあげるわ。今後は忠告なんて言わないこと。全てわたくしに従いなさい」
「…………」
あまりにバカげた話に、開いた口が塞がらないとはこのことだな。きっとブランディーヌの中では、オレがパーティに入ることが決まっているのだろう。だから、自分たちが上位だと、条件を出す側だと勘違いしている。
そういえば、ブランディーヌたちは金に困ってマジックバッグまで売っ払っちまったんだったか。なるほど。マジックバッグの代わりにオレをパーティに入れようというのだろう。つくづくアホらしくて眩暈がするレベルだ。
オレの知る限り、ブランディーヌたちは、たしかにバカだったが、ここまでひどくはなかったぞ。これが貧すれば鈍するってやつか?
「さあ、泣いて感謝して、わたくしの手を取りなさい、アベル」
目の前に差し出されたブランディーヌのゴツイ手。オレはそれを冷めた目で見下ろし、口を開く。
「お断りだ。オレはお前たちのパーティには入らない」
断りを告げた瞬間、ブランディーヌたちの纏う空気が変わる。まるで今にも噛み付かんばかりの獰猛な雰囲気だ。
「……聞き間違いかしら? アベル、わたくしが言っているのよ? 貴方には選択肢は無いはずだけど?」
「どこまで誇大妄想を膨らませりゃそうなるんだ? オレが今更お前たちのパーティに入るわけがないだろう?」
ブランディーヌの顔面が歪み、怒りの色が添えられていく。
「いいかしらアベル? これは貴方にとってもまたとないチャンスなのよ? こんな貧弱な小娘だらけのパーティなんて捨てて、わたくしたちとまたパーティを組めるのよ? 断る理由がないでしょう?」
ブランディーヌがまるで簡単な法則を説明するように言ってのける。本気でそう思ってそうなところが怖いな。どこまで自分たちの力を過大評価してるんだ?
「くどい! もうお前たちとパーティを組むのなんて御免だ」
「アベルッ!」
もう一度断ると、ブランディーヌが吠えた。彼女は自分の思い通りにならない現実に怒るという悪癖があったが、それはこの数日間で悪化の一途をたどっているようだ。
もはやブランディーヌの顔には憤怒というのも生温い。もうこれ以上怒りという感情を顔面で表現するのは不可能というほど怒りに満ちていた。
「ふー! ふー!」
ブランディーヌは荒い息を吐き、その右手は、背中に吊られた大剣の柄を握っており、今にも抜刀しそうだった。
まったく、こんな奴がパーティを率いるリーダーかと思うと、メンバーが哀れにも思えてくるな。
これまでの長い沈黙を破って、ブランディーヌ率いる『切り裂く闇』が冒険者ギルドに姿を現した。久しぶりの噂のパーティの登場に、冒険者ギルドに居た冒険者たちがざわざわと騒ぎ出す。だが、その音量は少なく、一人一人の声は判別するのは難しいほどだ。
皆、変に絡まれたくないから小声なのだろう。ブランディーヌたちは、噛み付き癖があるからな。
久しぶりに会ったブランディーヌたちは、余裕というものが無かった。心なしかやつれたようにも見える。それでいて、目だけはぎょろりと血走り、確実にオレを視界に捉えていた。
「久しぶりだな。ちょっと見ない間に痩せたんじゃないか?」
「ええ、ええ。貴方のおかげで! ここ毎日楽しく暮らせていますわ!」
「チッ」
オレの言葉を皮肉と受け取ったらしい。ブランディーヌの口の端がピクピクと震えていた。その後ろでは、ジョルジュが舌打ちしている。
オディロンの情報では、毎日喧騒が絶えないって話だし、かなり憎しみが溜まっているのだろう。
たしかに、今のブランディーヌたちは、なにをしでかしてもおかしくはない狂気があるような気がした。
「で? 何の用だ? オレたちは互いに不干渉だったはずだろ? 約束は守れよ」
「くっ! はー、ふー」
一瞬、憤怒に歪んだブランディーヌの顔。しかし、なんとか怒りを飲み込んだのか、深呼吸をする。その後にブランディーヌの顔に浮かんでいたのは、まるでオレに媚びるような顔だ。
並の男よりも大きく、分厚いブランディーヌの体。顔も大きく角張って四角く、まるでおっさんのようだ。胸なのか大胸筋なのかも判断がつかない、まるで野生のゴリラのような女。
そんな容姿だというのに、ブランディーヌは、自分は世界一美しいと自認しているのだから救えない。
オレもべつにブランディーヌの容姿や感性を否定したいわけじゃない。だが、ブランディーヌの場合、自分に靡かない男は、どうしようもないクズと判断するのだから面倒くさい。
なにが言いたいかといえば、ブランディーヌの媚びた視線は危険なのだ。彼女は自分が媚びて靡かない男は居ないと考えている。そして、もし否定しようものなら、烈火のごとく怒りだすのだ。
かなり面倒くさい。
「今日はね、アベル。貴方に素敵なお話を持ってきたの」
気味が悪い猫なで声を出しながら、ブランディーヌがオレに向けてウィンクした。正直、止めてほしい。吐き気がする。
「貴方をわたくしのパーティ『切り裂く闇』に入れてあげるわ。光栄に思いなさい」
「はぁ?」
どんな恨み言が飛び出るかと思ったが、ブランディーヌの言葉は俺の予想の斜め上を突っ走っていた。
「もう一度、貴方にチャンスをあげると言っているのよ。貴方のことは不快だけど、少しだけ我慢してあげるわ。今後は忠告なんて言わないこと。全てわたくしに従いなさい」
「…………」
あまりにバカげた話に、開いた口が塞がらないとはこのことだな。きっとブランディーヌの中では、オレがパーティに入ることが決まっているのだろう。だから、自分たちが上位だと、条件を出す側だと勘違いしている。
そういえば、ブランディーヌたちは金に困ってマジックバッグまで売っ払っちまったんだったか。なるほど。マジックバッグの代わりにオレをパーティに入れようというのだろう。つくづくアホらしくて眩暈がするレベルだ。
オレの知る限り、ブランディーヌたちは、たしかにバカだったが、ここまでひどくはなかったぞ。これが貧すれば鈍するってやつか?
「さあ、泣いて感謝して、わたくしの手を取りなさい、アベル」
目の前に差し出されたブランディーヌのゴツイ手。オレはそれを冷めた目で見下ろし、口を開く。
「お断りだ。オレはお前たちのパーティには入らない」
断りを告げた瞬間、ブランディーヌたちの纏う空気が変わる。まるで今にも噛み付かんばかりの獰猛な雰囲気だ。
「……聞き間違いかしら? アベル、わたくしが言っているのよ? 貴方には選択肢は無いはずだけど?」
「どこまで誇大妄想を膨らませりゃそうなるんだ? オレが今更お前たちのパーティに入るわけがないだろう?」
ブランディーヌの顔面が歪み、怒りの色が添えられていく。
「いいかしらアベル? これは貴方にとってもまたとないチャンスなのよ? こんな貧弱な小娘だらけのパーティなんて捨てて、わたくしたちとまたパーティを組めるのよ? 断る理由がないでしょう?」
ブランディーヌがまるで簡単な法則を説明するように言ってのける。本気でそう思ってそうなところが怖いな。どこまで自分たちの力を過大評価してるんだ?
「くどい! もうお前たちとパーティを組むのなんて御免だ」
「アベルッ!」
もう一度断ると、ブランディーヌが吠えた。彼女は自分の思い通りにならない現実に怒るという悪癖があったが、それはこの数日間で悪化の一途をたどっているようだ。
もはやブランディーヌの顔には憤怒というのも生温い。もうこれ以上怒りという感情を顔面で表現するのは不可能というほど怒りに満ちていた。
「ふー! ふー!」
ブランディーヌは荒い息を吐き、その右手は、背中に吊られた大剣の柄を握っており、今にも抜刀しそうだった。
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