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115 覚悟
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「…………」
両ヒザから先を失い、地面に叩きつけられたセドリックは、完全に沈黙していた。微かに上下する腹から生きてはいるようだが、もう戦闘能力は無いと判断してもいいだろう。イザベルは、一撃でセドリックを討ち取ってみせた。
やはり、イザベルの精霊魔法は強力無比だな。格上の冒険者、それもタンクを任されているセドリックを一撃とは。彼女の精霊魔法は欠点もあるが、その欠点を補うだけのパワーがある。きっと、高レベルダンジョンでも活躍できるだろう。
「よくやった、イザベル」
オレは予想以上の活躍を見せたイザベルを労うと、イザベルはストーンショットを放った格好のまま固まっていた。よく見ると、微かに体が震えているようだ。
「イザベル?」
オレは心配になってイザベルの肩に手を置くと、イザベルはビクリッと体を震わせ、弾かれたようにオレを見た。その顔は血の気が失せたように真っ白だった。いつもとは様子の違うイザベルの姿に、オレは心配になる。
「大丈夫か? 顔色が悪いぞ?」
「平気よ」
それだけ言うと、イザベルはオレから視線を外した。その行く先は、地面に転がっているセドリックだ。
「殺し損ねたわ……」
ぽつりとイザベルが呟く。
「ただ殺すよりも生け捕りの方が難易度が高いぞ? 両足を狙うのはいい判断だった」
「私は胸を狙ったのよ。殺すつもりだった。なのに、どうしてか外れたわ……」
「…………」
イザベルにセドリックの処理を任せた時にも言っていたな。殺すつもりだと。オレは、イザベルに殺人を許可するかどうか悩んだが、結局、黙認した。冒険者同士の暗闘というのは、稀にだがある。その時、覚悟が決めれるというのは強い。人の命を奪う覚悟というのは、意外と決めきれない場合が多いからな。
だが、イザベルは殺すつもりだったのに、狙いが外れて殺せなかったと言う。
イザベルの精霊魔法の命中率は高い。標的は、カカシのように呆然とつっ立っていたセドリックだ。イザベルならば、的を外すことはないだろう。故意に外さなければ。
未だに小刻みに体を震わせるイザベル。彼女は心のどこかでセドリックを殺めることを恐れたのだろう。人を殺すってのは、それだけハードルが高いのだ。躊躇わない方がおかしい。
「気にするな、イザベル。撃てただけでもお前はすごい」
オレはイザベルの頭に手を乗せ、優しく気遣いながら頭を撫でる。
オレの言葉に嘘はない。もしイザベルの覚悟が中途半端なものだったら、魔法を撃てずに終わっていた可能性もある。それを思えば、イザベルはよく決断してくれた。結果、セドリックの命を奪うことまではできなかったが、戦闘不能にしたのだから役目は果たしたと言えるだろう。
まぁ、仮にイザベルが魔法を撃てなくても、オレが“ショット”で仕留めるつもりだったがな。それはクロエたちにも言えることだ。クロエたちが、もしブランディーヌたちを害することに躊躇しても、その時はオレが始末する。
クロエたちはまだ初心者冒険者だ。人殺しの覚悟など、そんなものはまだしなくてもいい。
「……髪がクシャクシャになるんだけど?」
「おぅ……。すまん」
イザベルの頭を撫でていたら、怒られてしまった。撫で方をミスったかな?
「サラサラで、気持ちよくて、ついな」
「そう……」
イザベルの頭から手を放そうとすると、その手をイザベルが両手で留める。
「イザベル?」
「もう崩れてしまったから、あとはいくら触っても関係ないわ」
「ふむ……?」
これは、まだ撫でてもいいということだろうか?
オレはイザベルの言葉に甘えて、彼女のサラサラの髪を堪能するのだった。
イザベルの髪を堪能しつつも、オレは戦況の確認を怠らない。まだ薄っすらと土煙が舞い上がる中、いよいよエレオノールが敵陣に切り込むのが見えた。
「せいやああああああッ!」
「チッ!」
エレオノールが標的に定めたのは、ブランディーヌだった。ブランディーヌは、舌打ち一つして、エレオノールの片手剣を大剣で受け止める。
さすがに冒険者としての経験の差が出ているな。エレオノールの渾身の一撃を、ブランディーヌは容易く受け止めてみせた。そして、エレオノールの片手剣を力任せに弾き返すと、水平に大剣を振るう。
「ハッ!」
しかし、エレオノールもブランディーヌの動きをよく見ていた。力では勝てないと分かっていたのだろう。ブランディーヌの押し返す動きに素直に身を退き、そのままバックステップを重ねてさらに距離を取る。
先程までエレオノールの居た空間を、ブランディーヌの漆黒の大剣が通り過ぎ、攻撃は空振りに終わった。だが――――。
ブォンッ! ブォンッ!
ブランディーヌの攻撃は止まらない。縦に横に、漆黒の大剣が縦横無尽に走る。普通は、大剣であんな動きはできない。大剣はその見た目以上に重い重量物だ。それをまるで小枝のように振るい続けるなんて、悪夢を見ているかのような光景だろう。
ブランディーヌ。アイツは確かに足らないところだらけだが、こと大剣の扱いにおいては、右に出るものが居ないほどの使い手だ。
両ヒザから先を失い、地面に叩きつけられたセドリックは、完全に沈黙していた。微かに上下する腹から生きてはいるようだが、もう戦闘能力は無いと判断してもいいだろう。イザベルは、一撃でセドリックを討ち取ってみせた。
やはり、イザベルの精霊魔法は強力無比だな。格上の冒険者、それもタンクを任されているセドリックを一撃とは。彼女の精霊魔法は欠点もあるが、その欠点を補うだけのパワーがある。きっと、高レベルダンジョンでも活躍できるだろう。
「よくやった、イザベル」
オレは予想以上の活躍を見せたイザベルを労うと、イザベルはストーンショットを放った格好のまま固まっていた。よく見ると、微かに体が震えているようだ。
「イザベル?」
オレは心配になってイザベルの肩に手を置くと、イザベルはビクリッと体を震わせ、弾かれたようにオレを見た。その顔は血の気が失せたように真っ白だった。いつもとは様子の違うイザベルの姿に、オレは心配になる。
「大丈夫か? 顔色が悪いぞ?」
「平気よ」
それだけ言うと、イザベルはオレから視線を外した。その行く先は、地面に転がっているセドリックだ。
「殺し損ねたわ……」
ぽつりとイザベルが呟く。
「ただ殺すよりも生け捕りの方が難易度が高いぞ? 両足を狙うのはいい判断だった」
「私は胸を狙ったのよ。殺すつもりだった。なのに、どうしてか外れたわ……」
「…………」
イザベルにセドリックの処理を任せた時にも言っていたな。殺すつもりだと。オレは、イザベルに殺人を許可するかどうか悩んだが、結局、黙認した。冒険者同士の暗闘というのは、稀にだがある。その時、覚悟が決めれるというのは強い。人の命を奪う覚悟というのは、意外と決めきれない場合が多いからな。
だが、イザベルは殺すつもりだったのに、狙いが外れて殺せなかったと言う。
イザベルの精霊魔法の命中率は高い。標的は、カカシのように呆然とつっ立っていたセドリックだ。イザベルならば、的を外すことはないだろう。故意に外さなければ。
未だに小刻みに体を震わせるイザベル。彼女は心のどこかでセドリックを殺めることを恐れたのだろう。人を殺すってのは、それだけハードルが高いのだ。躊躇わない方がおかしい。
「気にするな、イザベル。撃てただけでもお前はすごい」
オレはイザベルの頭に手を乗せ、優しく気遣いながら頭を撫でる。
オレの言葉に嘘はない。もしイザベルの覚悟が中途半端なものだったら、魔法を撃てずに終わっていた可能性もある。それを思えば、イザベルはよく決断してくれた。結果、セドリックの命を奪うことまではできなかったが、戦闘不能にしたのだから役目は果たしたと言えるだろう。
まぁ、仮にイザベルが魔法を撃てなくても、オレが“ショット”で仕留めるつもりだったがな。それはクロエたちにも言えることだ。クロエたちが、もしブランディーヌたちを害することに躊躇しても、その時はオレが始末する。
クロエたちはまだ初心者冒険者だ。人殺しの覚悟など、そんなものはまだしなくてもいい。
「……髪がクシャクシャになるんだけど?」
「おぅ……。すまん」
イザベルの頭を撫でていたら、怒られてしまった。撫で方をミスったかな?
「サラサラで、気持ちよくて、ついな」
「そう……」
イザベルの頭から手を放そうとすると、その手をイザベルが両手で留める。
「イザベル?」
「もう崩れてしまったから、あとはいくら触っても関係ないわ」
「ふむ……?」
これは、まだ撫でてもいいということだろうか?
オレはイザベルの言葉に甘えて、彼女のサラサラの髪を堪能するのだった。
イザベルの髪を堪能しつつも、オレは戦況の確認を怠らない。まだ薄っすらと土煙が舞い上がる中、いよいよエレオノールが敵陣に切り込むのが見えた。
「せいやああああああッ!」
「チッ!」
エレオノールが標的に定めたのは、ブランディーヌだった。ブランディーヌは、舌打ち一つして、エレオノールの片手剣を大剣で受け止める。
さすがに冒険者としての経験の差が出ているな。エレオノールの渾身の一撃を、ブランディーヌは容易く受け止めてみせた。そして、エレオノールの片手剣を力任せに弾き返すと、水平に大剣を振るう。
「ハッ!」
しかし、エレオノールもブランディーヌの動きをよく見ていた。力では勝てないと分かっていたのだろう。ブランディーヌの押し返す動きに素直に身を退き、そのままバックステップを重ねてさらに距離を取る。
先程までエレオノールの居た空間を、ブランディーヌの漆黒の大剣が通り過ぎ、攻撃は空振りに終わった。だが――――。
ブォンッ! ブォンッ!
ブランディーヌの攻撃は止まらない。縦に横に、漆黒の大剣が縦横無尽に走る。普通は、大剣であんな動きはできない。大剣はその見た目以上に重い重量物だ。それをまるで小枝のように振るい続けるなんて、悪夢を見ているかのような光景だろう。
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