【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)

文字の大きさ
120 / 124

120 グラシアン

しおりを挟む
 体格差のあるジゼルとグラシアンだが、剣の分、辛うじて攻撃の間合いはジゼルの方が長い。先手を取ったのはジゼルだった。

「ちぇやあああ!」

 視線の先、奇声と共にジゼルの剣が振り下ろされる。ジゼルはここぞというタイミングの攻撃の際、奇声を上げることが多い。おそらく彼女なりに一番気合の入る声なのだろう。事実、ジゼルからは裂帛の気迫が伝わってくる。紛れもないジゼル渾身の一撃だ。

 ジゼルの一撃に対し、グラシアンは一歩踏み込んでみせた。この勝負、元よりグラシアンに退路は無い。意地でもジゼルを潰すつもりだ。

 ジゼルとグラシアンの一騎打ちは、とてもシンプルな構図となった。先手を取ったジゼルがグラシアンを倒しきれば彼女の勝利。逆に、倒しきれなければグラシアンの勝利だ。

 グラシアンが、右の拳を振りかぶると同時に、左肩を前に突き出すようにして半身の形を取る。左腕で胴体を守る構えだ。

 グラシアンの左肩からは血が噴き出し、左腕はだらんと垂れ下がっている。おそらく、エレオノールの左肩への一撃で左腕が使い物にならなくなったのだろう。

 動かない左腕を即座に捨てて防御に回す。グラシアンの判断力が光る。

 一方、ジゼルは追い詰められた。剣を大上段に構えたことで攻撃力は増したが、剣の軌道は限られる。グラシアンが胴を半身に構え、左腕を防御に回したせいで、ほとんどの急所が隠されてしまった。残された道は、グラシアンの頭を割る他無い。

 しかし、そのことはグラシアンも熟知しているはずだ。頭を狙いにくると分かっていれば、回避は容易い。

 ジゼルが生き残る道は、グラシアンも反応できないほどの速さで剣を振ることだ。

 ふむ。ジゼルの覚悟はよし。だが、グラシアンの方が一枚上手だったか。

 ジゼルとグラシアンの一騎打ちは、グラシアンが優勢だ。

 もし、一騎打ちであれば、だが。

「ふんーっ!」

 突然、グラシアンの態勢が崩れる。せっかく胴を半身にして左腕で防御を固めたというのに、今では斬ってくださいとばかりにジゼルに向けて胸を張った状態だ。

 いったい何が起こったのか。

 その原因は、グラシアンの半分もない一際小さな人影によって起こされた。グラシアンと同じく、白地に青のラインが入ったぶかぶかの修道服。リディだ。リディの持つさすまた。グラシアンの腰に突き刺さったさすまたが、グラシアンの目論見を潰してみせた。

 腰は、全ての動きの基点だ。その腰をリディのさすまたが動かした。

 リディの持つさすまたは、敵対者を確保するための物ではない。敵対者を拘束し、命を奪うための物だ。便宜上さすまたと呼んではいるが、その実態は二股に分かれた鋭い刃を持つ槍である。

 グラシアンは、ただ腰を押されたのではなく、さすまたによって腰を深く斬り裂かれたのだ。本人の意思に反して、反射で腰が動いてしまうほどに。

 そして、リディの働きによって、グラシアンは無防備な姿でジゼルの前に投げ出された。

 結果は、火を見るよりも明らかだ。

「ちぇすとっ!」
「ッごぐはぁッ!?」

 グラシアンの右肩から左わき腹を斜めにジゼルの剣が走る。グラシアンの体は大袈裟なまでに仰け反り、大きな傷口からは、まるでアーチを描くように血飛沫が上がった。

 あの傷では助かることはないだろう。少なくとも動くことはできないはずだ。

 エレオノール、リディ、そしてジゼル。三体一ではあったが、格上の冒険者であるグラシアンの討伐に成功した。これは紛れもなく誇るべき戦功である。

 オレは、グラシアンに勝利した三人の元へ急いだ。

「おう、お前ら! よくやったな! お前らはオレの誇りだ!」
「アベるん! だよねー。あーしも自分でよくやったなーって!」
「それでも、わたくしたち三人で相手してやっとでした。一対一ではとても……」
「あーしらはここで終わりじゃないし! もっと強くなってやるんだから! でしょ?」
「そう、ですね。はい!」
「ふんすっ!」

 戦勝に喜んでいる三人に水を差すのは憚られるが、戦闘はまだ続いている。

「じゃあ、今度はクロエの応援に行ってやれ。早くこのバカ騒ぎを片しちまおう」
「りょっ!」
「はいっ!」
「んっ……!」

 ジゼル、エレオノール、リディの三人が聞き分けよくクロエの援護に向かうのを見て、オレはこのバカげた戦闘の終わりを感じていた。

 だがまぁ、何事も終わらせる前には後片付けが必要なものだ。そして、それは今回も同様である。

「ゼハァー……ゼハァー……ゼハァー……」

 オレの視線の先には、ジゼルにザックリ斬られて、息も絶え絶えのグラシアンの姿が見える。まるで、命の炎が今にも尽きてしまいそうな光景だ。

「グラシアン、なにか言い残すことはないか?」
「ない……。ひと、り……しず、かに。いかせて……くれ……」
「お前ならそう言うと思ったぜ」

 オレは収納空間を展開する。

 すると、なにかを察したのか、グラシアンの体が光る緑の粒子に包まれた。グラシアンのギフト【治癒】の回復の奇跡だ。グラシアンは、その身を包む修道服が示す通り、治癒の奇跡をギフトとして賜った教会の人間である。

 グラシアンにとって、一見致命傷に見えるこの傷でも、この程度なら治癒可能なかすり傷に過ぎない。

 グラシアンの言葉は、最期の言葉ではなく、オレを欺き、逃走するための方便に過ぎないのだ。

「シャッ!」

 緑の光の粒子に包まれたグラシアンが、突然跳ね起きてオレに牙を剥く。

 ボゥンッ!!!

 オレはそれに重苦しい重低音で応じた。

 まるで大きなトマトでも潰したかのように、グラシアンの頭部が爆ぜる。その身を包んでいた緑の光も消え失せた。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

ジャングリラ~悪魔に屠られ魔王転生。死の森を楽園に変える物語~

とんがり頭のカモノハシ
ファンタジー
「別の世界から勇者を召喚する卑怯な手口」に業を煮やした堕天使・ルシファーにより、異世界へ魔王として転生させられた大学生・左丹龍之介。 先代・魔王が勇者により討伐されて100年――。 龍之介が見たものは、人魔戦争に敗れた魔族が、辺境の森で厳しい生活を余儀なくされている姿だった。 魔族の生活向上を目指し、龍之介は元魔王軍の四天王、悪魔公のリリス、フェンリルのロキア、妖狐の緋魅狐、古代龍のアモンを次々に配下に収めていく。 バラバラだった魔族を再び一つにした龍之介は、転生前の知識と異世界の人間の暮らしを参考に、森の中へ楽園を作るべく奔走するのだが……

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

処理中です...