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すっかりお馴染みになった登下校。でも夏休みが明けたら、私たちが一緒に並んで歩くことはなくなるはずだ。コンビニの期間限定ドリンクを飲みながら帰ることも、もうできない。
「あのね、坂口くん。2学期からは一緒に登下校はできなくなるんだ」
「どういうこと?」
「うん、実は私、もうすぐ引っ越すんだ」
そうだ、このタイミングで嘘告白のネタばらしをしてもらえばいいんじゃないのかな。1学期の終わりに付き合い始めて、夏休み明けには別れているカップルとかわりとよく聞く話だし。それなのに。
「嫌だ、俺、遠恋なんて耐えられない。やっと、山本さんに好きだって言えたのに」
「え?」
「時差があるから、電話だって全然繋がらないなんて無理だ」
「いや、あの」
「俺、頑張るから。医者になってめっちゃ稼ぐって約束する。だから、今すぐに結婚して。アメリカなんて行かないで」
泣きながら私の手をつかんでくる坂口くん。待って、待って。私たちって、しょせん嘘告白で付き合い始めた関係だよね。いや、私はこんな関係でもずっと一緒にいられて幸せでしたけどね?
っていうか、一生懸命働くからとか周りの視線が痛いから!
あのモブ顔でイケメンに貢がせてるの? マジで?みたいな驚きの顔に耐えられないから!
それになにより……。
「転校とかしないけど?」
私の言葉に、坂口くんが目をぱちくりとさせていた。
「でも、さっき職員室で引っ越すって……」
「来年は受験でしょう。向こうの大学を受験するのは正直難しいし、普通に日本の大学を受けるならこっちにいた方がいいから、おばあちゃんの家から学校に通うことにしたの。だから、夏休み明けから、電車通学になるんだ」
いや、本当にアメリカになんて行かないよ。行くのは両親だけ。……ってもう父は他国からのスライドでアメリカ入りしているから、今からアメリカに向かうのは母だけなんだよね。
って言おうと思ったんだけど。坂口くんが今まで見たこともないくらいになんか取り乱しちゃってて、どうしたらいいんだこれ。落ち着け、坂口くん! あ、そうか!
「でもさ、坂口くん、別に私のこと好きじゃないよね?」
「……どうして、そう思ったの?」
「だって、そもそもこれって嘘告白だったじゃん」
ああ、さようなら私のアオハル。
私は別に嘘だろうが、ドッキリだろうが、坂口くんと過ごせるならなんだって良かったんだよ。でもね、坂口くんが傷ついた顔を見るのは嫌なんだ。だから、もういいんだよ。無理して彼女のことを大好きな彼氏の役なんてやらなくていいんだ。
「……そういうことか。よし、じゃあ、信じてもらうために今から命綱なしバンジージャンプしてくるよ」
「いや、そこ、命賭けてくれてなくても! っていうか、命綱がなかったら死ぬから。死んじゃうから!」
「じゃあ、俺の話をちゃんと聞いてくれる?」
「聞く聞く、聞かせていただきます」
坂口くんは、意外と涙もろくて、結構面倒くさい。
でも、そんな坂口くんも好きな私はやっぱりたいがいだと思う。
「あのね、坂口くん。2学期からは一緒に登下校はできなくなるんだ」
「どういうこと?」
「うん、実は私、もうすぐ引っ越すんだ」
そうだ、このタイミングで嘘告白のネタばらしをしてもらえばいいんじゃないのかな。1学期の終わりに付き合い始めて、夏休み明けには別れているカップルとかわりとよく聞く話だし。それなのに。
「嫌だ、俺、遠恋なんて耐えられない。やっと、山本さんに好きだって言えたのに」
「え?」
「時差があるから、電話だって全然繋がらないなんて無理だ」
「いや、あの」
「俺、頑張るから。医者になってめっちゃ稼ぐって約束する。だから、今すぐに結婚して。アメリカなんて行かないで」
泣きながら私の手をつかんでくる坂口くん。待って、待って。私たちって、しょせん嘘告白で付き合い始めた関係だよね。いや、私はこんな関係でもずっと一緒にいられて幸せでしたけどね?
っていうか、一生懸命働くからとか周りの視線が痛いから!
あのモブ顔でイケメンに貢がせてるの? マジで?みたいな驚きの顔に耐えられないから!
それになにより……。
「転校とかしないけど?」
私の言葉に、坂口くんが目をぱちくりとさせていた。
「でも、さっき職員室で引っ越すって……」
「来年は受験でしょう。向こうの大学を受験するのは正直難しいし、普通に日本の大学を受けるならこっちにいた方がいいから、おばあちゃんの家から学校に通うことにしたの。だから、夏休み明けから、電車通学になるんだ」
いや、本当にアメリカになんて行かないよ。行くのは両親だけ。……ってもう父は他国からのスライドでアメリカ入りしているから、今からアメリカに向かうのは母だけなんだよね。
って言おうと思ったんだけど。坂口くんが今まで見たこともないくらいになんか取り乱しちゃってて、どうしたらいいんだこれ。落ち着け、坂口くん! あ、そうか!
「でもさ、坂口くん、別に私のこと好きじゃないよね?」
「……どうして、そう思ったの?」
「だって、そもそもこれって嘘告白だったじゃん」
ああ、さようなら私のアオハル。
私は別に嘘だろうが、ドッキリだろうが、坂口くんと過ごせるならなんだって良かったんだよ。でもね、坂口くんが傷ついた顔を見るのは嫌なんだ。だから、もういいんだよ。無理して彼女のことを大好きな彼氏の役なんてやらなくていいんだ。
「……そういうことか。よし、じゃあ、信じてもらうために今から命綱なしバンジージャンプしてくるよ」
「いや、そこ、命賭けてくれてなくても! っていうか、命綱がなかったら死ぬから。死んじゃうから!」
「じゃあ、俺の話をちゃんと聞いてくれる?」
「聞く聞く、聞かせていただきます」
坂口くんは、意外と涙もろくて、結構面倒くさい。
でも、そんな坂口くんも好きな私はやっぱりたいがいだと思う。
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