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ローガンがフィンリーを抱えながら、地下の隠し部屋から上がってきたときには、すでに上階は制圧されていた。死屍累々としか言い様のない地上の有り様を見て、フィンリーは目をぱちくりさせる。
「どうなってるんだ?」
「お前が連れ去られたことは、信号弾で部隊に伝えてある。まあ、つまり、そういうことだ」
「はあ?」
「大丈夫、この後私が半殺しにあうだけだ」
(うちの部隊は仲間想いだもんな)
ローガンとの会話でフィンリーがわかったことといえば、屋敷の周囲に配置されていた脳筋たちが屋敷に総攻撃を仕掛けたらしいということだけ。疲れた様子のローガンを見るに、この惨状は予想の範囲らしい。
「なんか、俺のせいでごめん」
「やっとフィンリーに気持ちを伝えられたんだ。これくらい、なんてことはないさ」
ローガンの言葉に、ふと心配がよぎる。
「ローガンの気持ちは、すごく嬉しい。でも、ローガンの親御さんは嫌じゃないのか。俺はただの孤児だし、見た目も言葉遣いもこんなんだ。お嬢さまみたいには逆立ちしたってなれない」
「私は、フィンリーが昔のままでいてくれて嬉しいよ。こちらの家族のことは考えなくていい。異母兄が亡くなったことで必要とされたが、異母弟たちが生まれたおかげでまた厄介者に逆戻りだからな」
「ローガンも苦労したんだな」
「むしろ、フィンリーを娶ることをこれからみんなに認めてもらうほうが大変だな」
「どうして?」
「お前は、うちの部隊みんなの秘蔵っ子だ。それもあって、お前はわざわざ『男』として登録されたままなんだから」
「え、みんな気がついていたの?」
「最初は本気で男だと思っていたらしいが。お前は、お前が思っている以上にみんなから大切にされているんだよ」
この後、結婚を申し込んだローガンに対し、「結婚したいならまず禁煙」、「禁煙できるまで手も繋ぐな」、「ローガン対部隊全員で勝ち抜き戦」など、無茶苦茶な要求が部隊から出されること、そしてそれを生真面目にローガンがクリアしていくことになるなど夢にも思わないフィンリーなのだった。
「どうなってるんだ?」
「お前が連れ去られたことは、信号弾で部隊に伝えてある。まあ、つまり、そういうことだ」
「はあ?」
「大丈夫、この後私が半殺しにあうだけだ」
(うちの部隊は仲間想いだもんな)
ローガンとの会話でフィンリーがわかったことといえば、屋敷の周囲に配置されていた脳筋たちが屋敷に総攻撃を仕掛けたらしいということだけ。疲れた様子のローガンを見るに、この惨状は予想の範囲らしい。
「なんか、俺のせいでごめん」
「やっとフィンリーに気持ちを伝えられたんだ。これくらい、なんてことはないさ」
ローガンの言葉に、ふと心配がよぎる。
「ローガンの気持ちは、すごく嬉しい。でも、ローガンの親御さんは嫌じゃないのか。俺はただの孤児だし、見た目も言葉遣いもこんなんだ。お嬢さまみたいには逆立ちしたってなれない」
「私は、フィンリーが昔のままでいてくれて嬉しいよ。こちらの家族のことは考えなくていい。異母兄が亡くなったことで必要とされたが、異母弟たちが生まれたおかげでまた厄介者に逆戻りだからな」
「ローガンも苦労したんだな」
「むしろ、フィンリーを娶ることをこれからみんなに認めてもらうほうが大変だな」
「どうして?」
「お前は、うちの部隊みんなの秘蔵っ子だ。それもあって、お前はわざわざ『男』として登録されたままなんだから」
「え、みんな気がついていたの?」
「最初は本気で男だと思っていたらしいが。お前は、お前が思っている以上にみんなから大切にされているんだよ」
この後、結婚を申し込んだローガンに対し、「結婚したいならまず禁煙」、「禁煙できるまで手も繋ぐな」、「ローガン対部隊全員で勝ち抜き戦」など、無茶苦茶な要求が部隊から出されること、そしてそれを生真面目にローガンがクリアしていくことになるなど夢にも思わないフィンリーなのだった。
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