竜神に愛された令嬢は華麗に微笑む。〜嫌われ令嬢? いいえ、嫌われているのはお父さまのほうでしてよ。〜

石河 翠

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 わたくしの両親、娘にとっては祖父母の元で育ったことで、ジェニファーはわたくしと同じたくましい娘に育った。何と言っても、自ら領内を探索し、眠りについていた竜神さまを叩き起こすくらいである。

「竜の宝と呼んでおきながら、預けっぱなしにするとは何ごとかしら。大切なら自分で守れ。竜の宝の大切なものも全力で守りなさい。この大馬鹿野郎!」と鉄拳制裁をしていたことは、記憶に新しい。娘の気迫に驚きつつ、その胆力に惚れ込んだ竜神さまのおかげで、わたくしは草葉のかげからではなく、わりと明確な姿をした守護霊として娘のそばにいられることになったのである。

 その後娘は王家と神殿に対してこの件について手出し無用だと言い放った。あくまで、自分たち親子の問題であり、この手で片をつけてみせると。成人したらすぐに当主を引き継いでみせるから、それまで待ってくれと。それくらい対応できなければ、女侯爵としてやっていくこともできはしないだろうと不敵に笑って。

 娘を後押ししたのは、竜神さまの存在だろう。彼は目障りな夫のことを消し炭にしてやりたかったようだが、娘に乞われて手出しを控えていたらしい。娘への振舞いにより、夫の有責ポイントが日々数えられていたと知ったら夫はどんな顔をするだろうか。

 夫への復讐の機会がようやくやってきた。夫が自ら竜穴に足を運ぶと言ったときは踊りだしたくなるほどだった。竜穴は、魔力の宝庫。ここなら、防御力の高い娘の身体を一時的に借りることができるだろうと竜神に教えてもらっていたからだ。

 守護霊をおろすのは、結構大変なのだ。強大な魔力に月の満ち欠け、神聖な場。さまざまな条件を満たすのはもちろんのこと、適性のある神官や聖女でなければ、普通は魂同士がぐちゃぐちゃに混ざり合ってしまうらしい。なんという大事故。

 けれど、わたくしたちは諦めなかった。どうにかして、身勝手なあの男に一泡吹かせてやりたい。そのためならどんな修行にも耐えてみせる。そうやって時を重ねようやく儀式に必要な要素がほぼ揃えられたものの、どうやって竜穴まで呼び出そうかと思っていたところに、自分からあんな馬鹿なことを言い出したのだ。こちらとしては渡りに船だったのである。

 何度考えても、本当にあの男は愚かだ。それに、王家や神殿に手出し無用と言ったのには、ほんの少しだけ期待していた部分もあるのだ。もしかしたら、夫が改心してくれるかもしれないと。まあ、そんな都合のよいことは起きなかったのだけれど。

 渋る竜神さまに母娘で説得をし、ようやく獲得した憑依の機会だ。そう簡単に終わらせてやるわけにはいかない。わたくしは情けなく気絶してしまった夫が起きるまでの間、持ってきたお弁当類でピクニックを楽しむことにした。今までは娘と竜神さまとしか話せなかったから、今のうちにたくさんのひとにお礼を伝えよう。わたくしの大切な娘を守ってくれてありがとうと。
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