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1.お望み通り、悪役令嬢とやらになりましたわ。ご満足いただけたかしら?
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「あら、お疲れのようですわね」
「さっさと色よい返事をもらってこいと、上からも下からもどやされております」
「それは大変ですこと」
にこりと微笑んで、レイラは文官にも紅茶をすすめた。疲れている時には、甘くて温かいものがよく効く。傍若無人な貴人たちに悩まされているのなら、なおのことだ。
「殿下の理想は、剣王陛下でいらっしゃいましたわね。剣の訓練も続けていらっしゃるのかしら」
「なるほど。確かに、夜は大層お元気でいらっしゃるようです。何せ寝ずの番をする近衛が、当番を嫌がるくらいですから」
「あらあら。確かに英雄色を好むとは申しますが、困ったお方ですこと」
頬に手を当てつつ、レイラは我慢できずに小さく吹き出した。若さゆえの暴走と言えば聞こえは良いが、制御不能に陥っているのであれば獣同然だろう。
「英雄色を好む、されど色を好む者が英雄とは限らない」
「何がおっしゃりたいの?」
「殿下が即位したならば、どのような王になられるでしょう。剣王も賢王も無理でしょう。嫌王か倦王か。まあ、ろくな結果にはならないことは確かだ。ああ、それと近衛たちが寝ずの番を嫌がっている理由ですが、もうひとつございまして。例の方に、閨に誘われるのだそうですよ。まったく、一体誰の子を産むつもりなのやら」
レイラはゆっくりと口角を上げる。
「聞かなかったことにいたしますわ」
「レイラさまは彼らの悪行に目をつぶられると?」
「私の姿がどのような形に見えたとしても、私の行動はすべて王国のためのもの。私が王国の威信に傷をつけることはないと誓いましょう」
「それならば我々もまた、レイラさまとともにこの国を支えることを誓います。ですからどうぞ、我々に止まない雨はないことを教えてはいただけないでしょうか」
無言のままふたりは向かい合う。ゆっくりとひとつまばたきをして、レイラはため息を吐いた。ふと文官の向こう側に目をやれば、空にはいつの間にか七色の橋がかかっている。
「さあ、使い走りの文官さん。先ほどの返事ですが、雨は止んだようでしてよ。早く戻らねば、ご主人さまに叱られるのではありませんこと?」
「わたしの飼い主は、苛烈で両極端な方なのです。早く手綱を握る方が代わってくださると良いのですが」
「それならば、今よりももっと働き詰めになることは覚悟してくださいまし」
サインをしたばかりでまだインクの乾いていない書類を文官に手渡し、レイラは自身の首につけられた魔導具をそっと優しく撫でた。
「さっさと色よい返事をもらってこいと、上からも下からもどやされております」
「それは大変ですこと」
にこりと微笑んで、レイラは文官にも紅茶をすすめた。疲れている時には、甘くて温かいものがよく効く。傍若無人な貴人たちに悩まされているのなら、なおのことだ。
「殿下の理想は、剣王陛下でいらっしゃいましたわね。剣の訓練も続けていらっしゃるのかしら」
「なるほど。確かに、夜は大層お元気でいらっしゃるようです。何せ寝ずの番をする近衛が、当番を嫌がるくらいですから」
「あらあら。確かに英雄色を好むとは申しますが、困ったお方ですこと」
頬に手を当てつつ、レイラは我慢できずに小さく吹き出した。若さゆえの暴走と言えば聞こえは良いが、制御不能に陥っているのであれば獣同然だろう。
「英雄色を好む、されど色を好む者が英雄とは限らない」
「何がおっしゃりたいの?」
「殿下が即位したならば、どのような王になられるでしょう。剣王も賢王も無理でしょう。嫌王か倦王か。まあ、ろくな結果にはならないことは確かだ。ああ、それと近衛たちが寝ずの番を嫌がっている理由ですが、もうひとつございまして。例の方に、閨に誘われるのだそうですよ。まったく、一体誰の子を産むつもりなのやら」
レイラはゆっくりと口角を上げる。
「聞かなかったことにいたしますわ」
「レイラさまは彼らの悪行に目をつぶられると?」
「私の姿がどのような形に見えたとしても、私の行動はすべて王国のためのもの。私が王国の威信に傷をつけることはないと誓いましょう」
「それならば我々もまた、レイラさまとともにこの国を支えることを誓います。ですからどうぞ、我々に止まない雨はないことを教えてはいただけないでしょうか」
無言のままふたりは向かい合う。ゆっくりとひとつまばたきをして、レイラはため息を吐いた。ふと文官の向こう側に目をやれば、空にはいつの間にか七色の橋がかかっている。
「さあ、使い走りの文官さん。先ほどの返事ですが、雨は止んだようでしてよ。早く戻らねば、ご主人さまに叱られるのではありませんこと?」
「わたしの飼い主は、苛烈で両極端な方なのです。早く手綱を握る方が代わってくださると良いのですが」
「それならば、今よりももっと働き詰めになることは覚悟してくださいまし」
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