[異世界恋愛短編集]お望み通り、悪役令嬢とやらになりましたわ。ご満足いただけたかしら?

石河 翠

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2.私のせいではありません。諦めて、本音トークごと私を受け入れてください

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 とまあこんな感じで楽しく新婚生活もどきを送っていたところ、例のお嬢さまがやってきた。ご令嬢なのに異常にフットワークが軽い方なのである。

『お嬢さま? どうしてこちらに?』
「あら、案外元気そうじゃない。異世界人ってしぶといのね。それにおなじみの何を考えているのかわからない微笑みは健在みたいね。それであの男は?」
『旦那さまはお部屋でお仕事をなさっていますよ。あと、この微笑みはジャパニーズスマイルですから。私特有の笑い方じゃないので。なんだったら、私の国ではこれがスタンダードなんです』
「ふん、客人の出迎えもできないなんて。本当にこの屋敷の者はしつけが行き届いていないのね」
『聞いちゃいねえ』

 久しぶりの再会にもかかわらず、お嬢さまの傍若無人さは相変わらずだった。そもそも親戚とはいえ、ひとの屋敷に来ておいて、なぜに堂々と悪口を言えるのかがわからない。逆に尊敬するわ。

「まあちょうどいいわ。あなたに渡しておきたいものがあるの」
『やだなあ。お嬢さま、またろくでもないことを企んでいらっしゃいません?』
「なあに、その生意気な目は。お前はわたくしの言う通りにしていればそれでいいのよ」

 私の心配を鼻で笑い飛ばしたお嬢さまに渡されたのは、銀に輝く美しい杭だった。ええええ、やっぱり超絶嫌な展開しか想像できないんですけれど。

「貴重な物なのよ、大事に扱いなさい」
『吸血鬼に杭っていうのは全世界共通なんですねえ。心臓に杭を一突きは見た目的にも映えそうですし。まあ個人的な好みでいうなら、銀の弾丸で撃退がいいんですけれど。まず銀(シルバー)の弾丸(バレット)という呼び名が心をくすぐります!』

 海外の射撃場で外しまくったあげく、夢のマグナムは体格的に無理とお断りされた私なので、銃の才能はないってことは判明しているんだけれどね。めちゃくちゃ跳弾させまくったあげく、自分が先にお陀仏になりそう。

『要らないって言っても押し付けていかれるんでしょうから、とりあえず受け取っておきますよ』
「元の世界に帰りたければ、しっかりあの男の胸を一突きしなければダメよ?」
『……は?』
「ぼんやりしているから、この世界に呼ばれてしまったのよ。本当にいつ見ても何も考えていないアホ面だこと。これからどうしたいのか、自分の気持ちに素直になりなさい」

 まるで優しい姉のように私の頬に手を当て、彼女は微笑んだ。
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