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2.ひと夏の思い出さえあれば、愛のない結婚だって耐えられると思っていた。そのはずだったのに。
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「紐と布切れみたいな破廉恥な服がこの国での標準装備? 嘘でしょう……。こんな格好で大通りになんていられないわ。もっと目立たない場所に連れて行ってちょうだい」
「かしこまりました。でしたら、砂浜に遊びに出かけましょう。見事な夕日が名物なのですよ」
「観光名所なんかに出かけたら、余計に目立つじゃない。だいたい、夕日は赤くて嫌いだって昔から……ぎいやあっ」
「まったく、早く慣れてくださいませ。自己肯定感をあげないと、明日には消し炭かもしれませんよ?」
「本当に無茶苦茶なのよ、まったく!」
イケイケ高飛車美女の矜持を求められ、涙目のままアザレアは進んでいく。街を染める夕焼けが彼女の髪をより一層輝かせた。そんなアザレアに、あまり素行の良くなさそうな男が声をかけてくる。どうしたことかこんな時に限ってあのひょうひょうとした侍女は側にいないのだ。
「そこの君、かわいいね~。よかったらこれから夕食でも一緒にどう?」
今まで女性扱いされてこなかったせいで、男性に免疫のないアザレアは、どんな反応を返していいかわからない。うっかり間違った対応をしたならば、侍女特製の電流が走る可能性だってある。傷心旅行のはずなのに、なぜかよくわからない修行が始まった上、好みでもない男の相手をさせられるなんて。困り果てていたアザレアだが、ふと自分の中にぐらぐらと煮え立つような感情があることに気が付いた。これは、怒りだ。
「……離れて」
「そういう高飛車なところも好みだな。でも、高慢な女がひいひい喘ぐところはもっと好きだぜ」
顔をしかめたくなるような下品な言葉。そのままするりと腰に手を回され、ぷつんと何かがアザレアの中で切れた。散々豚のようで醜いと言われてきた身体つきは、この国ではどうも変な虫を引き寄せてしまうらしい。まったくもって踏んだり蹴ったりだ。たまりにたまった鬱憤を晴らすべく、アザレアは叫ぶ。
「汚い手で触らないでちょうだい!」
それと同時に魔術式を爆発させた。鼻血を噴き出しながらナンパ野郎は、実に美しい孤を描きながら飛んでいく。本当は警告の意味を込めて長ったらしい詠唱をすべきなのだろうが、アザレアはあえて無詠唱魔術を行使した。その理由はいわずもがな……八つ当たりだ。詠唱中に危険を察知され逃げられてしまったら不完全燃焼になってしまうではないか。
爆風で乱れた髪を整えていたアザレアは、目を丸くして自分を見つめている男と目があった。女の癖に魔術を使うなんて生意気だ。女として見てもらえたことを、ありがたいと思え。そんな罵詈雑言が飛んでくることを覚悟し、意識して高圧的に微笑んだアザレアだったが、彼女が受けたものは予想外の賞賛だった。
「かしこまりました。でしたら、砂浜に遊びに出かけましょう。見事な夕日が名物なのですよ」
「観光名所なんかに出かけたら、余計に目立つじゃない。だいたい、夕日は赤くて嫌いだって昔から……ぎいやあっ」
「まったく、早く慣れてくださいませ。自己肯定感をあげないと、明日には消し炭かもしれませんよ?」
「本当に無茶苦茶なのよ、まったく!」
イケイケ高飛車美女の矜持を求められ、涙目のままアザレアは進んでいく。街を染める夕焼けが彼女の髪をより一層輝かせた。そんなアザレアに、あまり素行の良くなさそうな男が声をかけてくる。どうしたことかこんな時に限ってあのひょうひょうとした侍女は側にいないのだ。
「そこの君、かわいいね~。よかったらこれから夕食でも一緒にどう?」
今まで女性扱いされてこなかったせいで、男性に免疫のないアザレアは、どんな反応を返していいかわからない。うっかり間違った対応をしたならば、侍女特製の電流が走る可能性だってある。傷心旅行のはずなのに、なぜかよくわからない修行が始まった上、好みでもない男の相手をさせられるなんて。困り果てていたアザレアだが、ふと自分の中にぐらぐらと煮え立つような感情があることに気が付いた。これは、怒りだ。
「……離れて」
「そういう高飛車なところも好みだな。でも、高慢な女がひいひい喘ぐところはもっと好きだぜ」
顔をしかめたくなるような下品な言葉。そのままするりと腰に手を回され、ぷつんと何かがアザレアの中で切れた。散々豚のようで醜いと言われてきた身体つきは、この国ではどうも変な虫を引き寄せてしまうらしい。まったくもって踏んだり蹴ったりだ。たまりにたまった鬱憤を晴らすべく、アザレアは叫ぶ。
「汚い手で触らないでちょうだい!」
それと同時に魔術式を爆発させた。鼻血を噴き出しながらナンパ野郎は、実に美しい孤を描きながら飛んでいく。本当は警告の意味を込めて長ったらしい詠唱をすべきなのだろうが、アザレアはあえて無詠唱魔術を行使した。その理由はいわずもがな……八つ当たりだ。詠唱中に危険を察知され逃げられてしまったら不完全燃焼になってしまうではないか。
爆風で乱れた髪を整えていたアザレアは、目を丸くして自分を見つめている男と目があった。女の癖に魔術を使うなんて生意気だ。女として見てもらえたことを、ありがたいと思え。そんな罵詈雑言が飛んでくることを覚悟し、意識して高圧的に微笑んだアザレアだったが、彼女が受けたものは予想外の賞賛だった。
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