身代わりで生贄となりましたが、なぜか聖女になってしまいました。美味しく食べられることが最終目標なので、聖女認定は謹んでお断りします!

石河 翠

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 それから約束通りみんなの記憶から私のことを消してもらい、ふたりで各地を旅しながら暮らしている。養父母にちゃんと『遺産』も残せたことだしね。

 神父さまが教会に縛られていたのは、ちょっとタチの悪い相手に嵌められたせいらしい。神父さまを出し抜くとはなかなかやるな。

 実父は、最終的に心を病んでしまったそうだ。神父さまは、「自業自得ですよ。反省できるまでひたすら転生させますけれど、ある程度のところで魂が擦りきれて消滅するようになりますので」と話していた。

 神さま、すごすぎ。とはいえ私以上に怒ってくれたおかげで、実父への怒りは少しずつ和らいできている。

 さて今回の旅の目的地は、故郷の村だ。随分離れていたはずなのに、景色はまるで変わっていない。

「この村に戻ってくるのも、久しぶりですね」
「本当だね」

 戻ることにしたのは、ただの気まぐれ。

 かつて暮らした教会は定期的にひとの手が入っているのか、古いながらも美しさを保っていた。扉を開けたその時だ。

「レベッカ。元気そうだね」
「旦那さまと仲良しみたいで安心したわ」

 教会の中には、養父母がいた。神父さまを振り返れば、ものすごい勢いで首を横に振られる。神父さまも預かり知らぬことらしい。

「あなたが幸せそうで、本当にほっとしたわ。それだけが心残りだったの」
「もっとお前に愛を伝えられたらよかったんだが。でも、もう大丈夫だな」

 ふたりは、記憶にあるままの懐かしい顔で微笑んでいる。でも、どうして。私が村を出たのは、百年も昔の話なのに。

 ――レベッカ、愛している――

 手を伸ばそうとする前に、きらきらとした光になってふたりの姿が薄れていく。神父さまが、後ろから私を抱きしめた。

「幽霊になられてしまってはお手上げですね。生きている間から、あなたがいないことに違和感を持っていたからこそ、術が解けたのでしょう」

 涙が止まらない。記憶を消して、この村を出た。お葬式にも出なかったのに、ふたりは私のことをずっと待っていてくれていたなんて。

「あなたは、確かに愛されていたんですよ」

 お父さん、お母さん、ありがとう。あなたがたのおかげで、私は幸せに生きています。
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