転生陰陽師は呪詛をしたくない—余命半年の陰陽師【全公開はカ◯ヨムのみ】

光月海愛(こうつきみあ)

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一 遮断と結界

山城リリは憑かれている3

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「ん? なんだ? 俺の後ろにお化けでもいるのか?」

 先生が振り返ると、橋本先輩は私から視線をそらし、矢取道の方へと行ってしまった。
 先生でも気安く話しかけれないのか、ただその背中を見守って呟いていた。

「橋本は、高校生とは思えんオーラを放ってるな」 

「……そうですね」

 ……あの人はいつもああだ。

 弓道の実力があり、二年生の時に先生から主将への打診があったにもかかわらず断ったという少し変わり者。
 学力も学年で一番という頭脳があるのに、進学はしないという。
 見た目もとてもイケメンというか、男にしては綺麗な繊細な顔立ちをしていて、あれで陽気な性格なら、さぞかしモテただろうと思う。
 それでも隠れファンはいると思う。
 この一年、先輩が誰かと親しく話しているところを見たことがないのだが、あの人はそれで楽しいのだろうか?
 そんな橋本先輩が、合宿での夜に話かけてくれたのは、奇跡に近かったのではないか――
 あんな状況でなければ、私ももっと話せたのに。
 そう思う私は、橋本先輩に憧れて弓道を始めた口だった。


  団体戦の予選敗退という散々な結果の大会が終わり、私たちは武道館から出て、専用の送迎バスに乗るために駐車場で待機していた。

「ね、リリ、ますます顔色悪くなってるよ? 大丈夫?」

 こんなに外は暑いのに、寒気がしてガタガタ震える私を、友達の悠里が心配そうにのぞき込む。

「……やだな、汗かいたから風邪ひいたかな?」

 もしかして気怠さや頭痛の原因は夏風邪?

「寒いなら、ほら、ジャージの上着着てなよ」

 悠里に肩からジャージをかけられるも、そんなものでは追いつかないほど酷く寒かった。
 インフルエンザの寒気より強いかも。
 ブルっと自分でも驚くくらい足が震えたまま力入らなくて、ついに地面にうずくまってしまうと、部の皆がこちらを見た。

「おい」

 低いけれど、よく通る声が降りてきた。
 顔を上げたら、橋本先輩がいた。

「顔、真っ青だ」

 逆光で表情はよく見えないが、橋本先輩が私をじっと見下ろしてる。

「少し離れてくれないか」

 と、橋本先輩が悠里に言った。

「は、はい」

 冷たい視線におののいて悠里が離れると、橋本先輩が私の肩にそっと手を置いた。


 温かい手だった。
 私が寒いからそう感じたのかもしれないけれど、先輩の掌からボウッと熱の塊みたいなのが出てる気がした。
 すごぶる体調は悪いけれど、憧れの先輩に触れられて、私の鼓動はとても早くなっていた。おまけに、

「目を瞑れ」


 シチュエーション次第では心臓打ち破りものの指示を出され、戸惑いながらも橋本先輩が言うように、そっと瞼を閉じた。
 パッパッと何かを肩にかけられ、顔にも当たったので、つい目を開けてしまった。

「な、なんですか?」

 肩には白い小さな結晶にような粒状のものが散らばっていた。

 これ……――。
 自分に振りかけられたものが粗塩だとわかり、私はハッとして橋本先輩を見た。

「一番簡単な方法だ」

 橋本先輩は、誰にでもできる除霊を私にしてくれたのだ。
 私に何か憑いているのを感じていたのかもしれない。

「家に戻ってもまだおかしかったら、に頼めばいい」

 橋本先輩はそれだけ言うと、到着したバスに乗り込んで行った。
 ……そういうところって、つまり、お祓いするところよね?

「大丈夫? 急に塩とかかけちゃって、あの人おかしいんじゃないの?」

 先輩がいなくなると、悠里がすかさず寄って来て、私の髪や顔についた塩を払いのけようとしてくれた。

「……あ、大丈夫だから」

 それが嫌で、つい反射的に悠里の手から逃げてしまい、ちょっとムッとした顔をされた。

「な、千尋のやつ、山城に何話しかけてたんだよ?」

 そこへ、遠巻きに見ていた部のほり健吾けんご 先輩が声をかけてきた。
 彼は橋本先輩と小中学校が同じだったという、雄一、橋本先輩を下の名前で呼ぶ三年生だ。

「……たぶんなんですが、お祓いみたいなものかと思います」

「は?」

 と怪訝な声を上げたのは悠里だ。

「へぇ。マイ塩持ち歩くなんて、やっぱあいつは変わってるな」

 堀先輩は愉快そうに、地面に散らばってる塩を見て言った。

「でも、気のせいか、体の寒気や頭痛や肩コリがなくなりました」

 気のせいなんかじゃない。
 この数日、ずっと重たかった肩から、スッと何かがとれたように楽になったのだ。

 バスの中で、なぜか私の隣に座った掘先輩が橋本先輩の事を話してくれた。

「あいつ、昔はもっと明るかったんだよな」

「そうなんですか?」

 今も、暗い、というより周りとの交流を遮断して自ら孤独の中にいるって感じだ。
 そもそもそんな人が部活動をしてるなんて不思議だけど。
 弓道だけはしたかったのかな、と勝手に思っていた。
 それに、橋本先輩の※「離れ」の美しさは際立っている。
 見学にお邪魔した時。
 先輩の、矢を射った後の右手の指、弓を持った左手の動きの美しさが目に焼き付いて離れなかった。
 それを見て入部を決めたくらいだから。
 達人的な実力からも、小さい時から弓道を極めた人なのかな、とも思っていたけれど、

「千尋は、小学生くらいまでは野性的だったよ。皆より活発に外で遊んで木登りとかもしてた。運動神経はずば抜けてたな。でも弓道は俺と同じ高校に入ってから始めたみたいだ」

 そうではなくて、もっと違う能力に長けていたという。

「予知、みたいなことできたんだよ」





 ※矢を射ること

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