転生陰陽師は呪詛をしたくない—余命半年の陰陽師【全公開はカ◯ヨムのみ】

光月海愛(こうつきみあ)

文字の大きさ
34 / 86
三 未解決事件 

デリヘル嬢殺人事件

しおりを挟む
 気のせいではなく、女の悲痛な泣き声が聞こえたからだ。
 霊を見ても怖さなど感じない俺は、今までも散々、向こうから近寄ってきた。
 その度に結界を作り、関与しないようにしてきたけれど――

 なぜか、今日は自ら近寄った。
 頼まれもしないのに、霊障もないのに、霊のために動くなんて、霊能者でもやらないだろう。
 しかし、なんとなく、このマンションから漂う、無念に近い悲壮感を放ってはおけなかった。

 俺は遺体のあったと言われる現場の前で、先ほど聞こえた泣き声の主を探した。
 そこには、声とは関係のない霊体が蠢いていたので、心の中で尋ねてみた。

 ″ここで泣いていた人、どこに行ったか知らない?″


 俺の問いに反応したのは、おばあさんの霊だった。
 虚無な顔をして、ただ、そこに居座ってるだけの無害な霊。
 建物と建物の間の湿った薄暗い場所や階段なんかには、こういう霊が溜まりやすかったりする。

「そう、今はここにはいないんだね、どっちに向かったかわかるかな?」

 おばあさんが、繁華街の方を指した。

「ありがとう」

 無気力な手が、不意に俺の腕に触れた。

 ――冷たい。

 そこから体温を奪われていくのがわかる。

「喉、渇いたの? 水でいい?」

 しかし、おばあさんはお酒が良いと言った。
 そして、頭が痛いと。

「あぁ、ごめんね。俺の持ってるお札のせいかな」

 俺が持ち歩いてる護身用のお札はやはり、それなりに効果があるようだ。


「俺、まだ未成年でお酒、買えないんだよ。おばあさんが生きてた頃と違って法律が厳しくなったんだ。代わりにエナジードリンクで我慢してな」

 俺は、マンション敷地内にある自動販売機から、一番量の多い飲料を買って、タブを開けておばあさんの前に置いて行った。
 繁華街に向かいながら、リンゴジュースにしとけばよかったかな、とちょっと思った。

 繁華街は迷路のように込み入り、そしてかなり広い。
 先ほどの泣いていた霊を見つけるのは、なかなか困難を極めた。
 なぜ、死んだ場所から離れて、こんな所をさ迷っているんだ?
 波長の合った俺を、誘い込んでいるのか?
 先ほど少しだけ霊視したマンションの殺人現場から、壮絶な惨殺シーンは見られなかった。
 ということは、泣いていた女は、あそこで殺害されたわけではないのではないか――

 時間があれば、あの場所での過去の事件を検索し、検証することも出来るが、本来、今日の俺の目的は母のために花を買うこと。
 時間は限られていた。


 なので、その時は、女の霊を見つけられずそのまま買い物の方へと移った。

 家に戻って、母さんの和やかな誕生日祝いを終えたあと、ネットであのマンションであった事件をパソコンで検索してみた。
  
 ――これだ。

 およそ、今から九年前――
 当時の新聞や週刊誌の記事がまだ多く残っていた。

【迷宮入りか――デリヘル嬢殺人事件 】

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

処理中です...