42 / 86
三 未解決事件
残像
しおりを挟む
以前、橋本先輩に徐霊してもらった時のように、触れた手の甲がジンワリと熱くなった。
瞼を閉じる。
何も見えなかった真っ暗な視界にぼんやりと浮かび上がってきた男女の姿。
――視える。
この扉の向こうの様子が。
九年前のある夏の日。
下着のような露出の多いワンピースを着た女性が、男に髪を引っ張られ、床に組む伏せられている。
男はもがく女性の上に、まるで乳幼児がおまるに座るような姿勢で跨り、ズボンと下着を下ろし始めた。
――これは……。
私が顔を背けようとしたら、先輩がぐっと私の手を握ってきた。
声に出さなくても先輩の言いたいことが伝わってきた。
“目を背けるな、犯人を見ろ”
『いっつも、男を食いもんにして金稼いでんだろ? 薄汚いなりしてよぉ!』
まだ若い男の、女を罵る声も聞こえてきた。
『電話で言ってた、子供がいるシングルだってのも、ただの客寄せだろーが』
『ち…が、』
否定しようとした女性の首をぐっと掴み、さらに下半身を潜り込めせる。
口を塞がれた女性は何とか男の身体から逃れようともがいているが、頭を持ち上げられ、床に何度も打ち付けられて血を流していた。
――酷い……。
身体が震えてくる。
女性の顔に欲を吐き出したあと、男は首を絞め出した。
『……死ね、地獄とこの世の間で彷徨ってろ……』
とうとう女性は動かなくなった。
極めて残忍な行為を目のあたりにしながらも、男の顔や体に注視する。
顔だちはけして悪くはないけれど、サイコな部分が見え隠れするような卑屈な細い吊り上がった目と、歪んだ口元、そして、左耳の下にある大きなホクロが特徴的だった。
シャツを捲り上げた腕の内側に、茶色い痣がいくつかある。着けている腕時計は見るからに高級そうだった。
女性の遺体を少し眺めたあと、男は彼女のバッグを漁り、保険証らしきものとスマホを自身のポケットに突っ込んでいた。
ここで、真っ暗になって視えなくなった。
瞼を閉じる。
何も見えなかった真っ暗な視界にぼんやりと浮かび上がってきた男女の姿。
――視える。
この扉の向こうの様子が。
九年前のある夏の日。
下着のような露出の多いワンピースを着た女性が、男に髪を引っ張られ、床に組む伏せられている。
男はもがく女性の上に、まるで乳幼児がおまるに座るような姿勢で跨り、ズボンと下着を下ろし始めた。
――これは……。
私が顔を背けようとしたら、先輩がぐっと私の手を握ってきた。
声に出さなくても先輩の言いたいことが伝わってきた。
“目を背けるな、犯人を見ろ”
『いっつも、男を食いもんにして金稼いでんだろ? 薄汚いなりしてよぉ!』
まだ若い男の、女を罵る声も聞こえてきた。
『電話で言ってた、子供がいるシングルだってのも、ただの客寄せだろーが』
『ち…が、』
否定しようとした女性の首をぐっと掴み、さらに下半身を潜り込めせる。
口を塞がれた女性は何とか男の身体から逃れようともがいているが、頭を持ち上げられ、床に何度も打ち付けられて血を流していた。
――酷い……。
身体が震えてくる。
女性の顔に欲を吐き出したあと、男は首を絞め出した。
『……死ね、地獄とこの世の間で彷徨ってろ……』
とうとう女性は動かなくなった。
極めて残忍な行為を目のあたりにしながらも、男の顔や体に注視する。
顔だちはけして悪くはないけれど、サイコな部分が見え隠れするような卑屈な細い吊り上がった目と、歪んだ口元、そして、左耳の下にある大きなホクロが特徴的だった。
シャツを捲り上げた腕の内側に、茶色い痣がいくつかある。着けている腕時計は見るからに高級そうだった。
女性の遺体を少し眺めたあと、男は彼女のバッグを漁り、保険証らしきものとスマホを自身のポケットに突っ込んでいた。
ここで、真っ暗になって視えなくなった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる