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第23話 恋愛ゲージ爆上げイベント
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三女神大教院の大広間。
白い石柱がずらりと並び、反射した光がまぶしいほどだった。荘厳すぎて、思わず背筋が伸びる。
その中央で、大神官セラディウスが振り返った。
あの柔らかな笑顔――まるで「聖女に語りかける優しい神父さま」って感じ。
(おっと、わたしが、聖女様だった!)
「ミサキ様。最近、王都近郊で小さな穢素による不調や騒ぎが起きています。井戸が濁ったり、魔獣が大量繁殖したり......ですが、あなたの光の力なら容易に浄化できるはず。どうか人々をお助けください」
彼はさらに一歩近づき、わざとらしいくらい優しい目をした。
「それに……ミサキ様には、心を寄せている方々がおいでですね? それぞれと浄化に赴けば、きっと距離も縮まるでしょう」
――その瞬間、ミサキの目がキラーンと輝いた。
(わっかってるぅ~! セラディウス様、わかってるじゃん!! やっぱ推し活イベント大事だよね~⭐︎)
彼女は勢いよく両手を胸の前で組み、大きく頷いた......と見せかけて、ダブルピース。
「オッケー⭐︎ やるやるー!」
大広間の荘厳さに似つかわしくない軽快さ。だがミサキは気にしない。
(ついに来た、浄化イベント! これで恋愛ゲージ爆上げ間違いなしでしょ!)
⸻
一日目:ユリウス様と!
王城北の村。
咳き込む人々が簡素な診療所に集められていた。
「光よ、集え――!」
手のひらを掲げると、眩い光が部屋いっぱいに広がる。
その瞬間、隅に置かれた古い木像が淡く黒ずみ、もやを吐き出すように揺れた。
「……あっ、そこからだ!」
ミサキが指差すと同時に、黒い靄がぱちぱちと弾けて消えていく。
「……やはり」
ユリウス様の眉が険しく寄る。
(いやいや、今は「よくやったな」とか「心配した」とか言う場面でしょ!?)
⸻
二日目:レオネル殿下と!
使われなくなった侯爵家の別邸。
荒れた庭に蔦がからみ、窓辺から黒いもやが漏れ出している。
「清浄を――!」
光を放つと、床下の石が淡く黒に染まり、ひび割れから穢素が噴き出した。
「殿下、あそこ!」
ミサキが叫ぶと、殿下は剣を抜き、石を砕いた。黒い靄は一瞬で消えた。
「見事だ、聖乙女」
殿下は涼やかに微笑む。
(ちがーう! ここは「君を守りたい」とか言うシーンなのに! なんで爽やかスマイルで終わっちゃうの!?)
⸻
三日目:ルシアン様と!
古代遺跡。
崩れた石柱の間から、蜘蛛のような魔獣が群れを成して這い出す。
「ひぃぃぃ! 足いっぱい生えてるぅぅ!」
必死で光を放つと、蜘蛛の巣の奥から小さな貝殻が黒く浮かび上がった。
「……あそこ!」
ミサキが叫ぶと、貝殻が砕け、魔獣の群れも光に飲まれて消えた。
「……よくやったな」
ルシアン様が低く呟き、紅い瞳をこちらに向ける。
(……その声! そこから「お前は一人じゃない」とか! 違うの!?)
⸻
四日目:アレクシス様と!
王都から少し離れた漁村。
井戸の水が濁り、真水が減って困っているという。
「光よ、澄みわたれ!」
光が井戸を包むと、水底から青黒い石がぼんやり浮かび上がった。
「……あそこにあったんだ!」
ミサキが叫び、光を強めると石は弾け飛び、水が澄み渡った。
「やっぱり、すごいな」
アレクシス様が感心したように呟く。
(……だから違う! 今は恋愛フラグでしょ!? なんで石見て終わるの!?)
⸻
その後
人々は泣いて喜び、手を合わせて「聖乙女さま万歳!」と叫んでいた。
私は確かに救いをもたらした。
……けど。
(おかしい、おかしい、おかしい!!)
攻略対象たちは揃いも揃って「敬意」と「信頼」しか見せてこない!
愛情ゲージが――全然動いてないんですけど!?
「なーんーでーよぉぉぉぉぉ!!!」
夕暮れの空に、ミサキの絶叫が吸い込まれていった。
⸻
ユリウスは、木像に仕込まれた“意図的な穢素”を思い返していた。
レオネルは、砕いた黒石の不自然さに眉をひそめていた。
ルシアンは、貝殻が示す人工の気配を疑い、アレクシスもまた、井戸底の青黒い石をただの自然物とは思えなかった。
彼らの胸にはそれぞれ、小さな疑念が芽生えていた。
⸻
......一方その頃。
潮風亭の二階。
アコは早朝にぱちりと目を覚まし、そのままひとつ伸びをした。
お腹がぐーっと鳴った。
「……なんで、こんなにお腹へってるんだろ……?」
寝起きのぼんやりした声が、静かな部屋に響いた。
白い石柱がずらりと並び、反射した光がまぶしいほどだった。荘厳すぎて、思わず背筋が伸びる。
その中央で、大神官セラディウスが振り返った。
あの柔らかな笑顔――まるで「聖女に語りかける優しい神父さま」って感じ。
(おっと、わたしが、聖女様だった!)
「ミサキ様。最近、王都近郊で小さな穢素による不調や騒ぎが起きています。井戸が濁ったり、魔獣が大量繁殖したり......ですが、あなたの光の力なら容易に浄化できるはず。どうか人々をお助けください」
彼はさらに一歩近づき、わざとらしいくらい優しい目をした。
「それに……ミサキ様には、心を寄せている方々がおいでですね? それぞれと浄化に赴けば、きっと距離も縮まるでしょう」
――その瞬間、ミサキの目がキラーンと輝いた。
(わっかってるぅ~! セラディウス様、わかってるじゃん!! やっぱ推し活イベント大事だよね~⭐︎)
彼女は勢いよく両手を胸の前で組み、大きく頷いた......と見せかけて、ダブルピース。
「オッケー⭐︎ やるやるー!」
大広間の荘厳さに似つかわしくない軽快さ。だがミサキは気にしない。
(ついに来た、浄化イベント! これで恋愛ゲージ爆上げ間違いなしでしょ!)
⸻
一日目:ユリウス様と!
王城北の村。
咳き込む人々が簡素な診療所に集められていた。
「光よ、集え――!」
手のひらを掲げると、眩い光が部屋いっぱいに広がる。
その瞬間、隅に置かれた古い木像が淡く黒ずみ、もやを吐き出すように揺れた。
「……あっ、そこからだ!」
ミサキが指差すと同時に、黒い靄がぱちぱちと弾けて消えていく。
「……やはり」
ユリウス様の眉が険しく寄る。
(いやいや、今は「よくやったな」とか「心配した」とか言う場面でしょ!?)
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二日目:レオネル殿下と!
使われなくなった侯爵家の別邸。
荒れた庭に蔦がからみ、窓辺から黒いもやが漏れ出している。
「清浄を――!」
光を放つと、床下の石が淡く黒に染まり、ひび割れから穢素が噴き出した。
「殿下、あそこ!」
ミサキが叫ぶと、殿下は剣を抜き、石を砕いた。黒い靄は一瞬で消えた。
「見事だ、聖乙女」
殿下は涼やかに微笑む。
(ちがーう! ここは「君を守りたい」とか言うシーンなのに! なんで爽やかスマイルで終わっちゃうの!?)
⸻
三日目:ルシアン様と!
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崩れた石柱の間から、蜘蛛のような魔獣が群れを成して這い出す。
「ひぃぃぃ! 足いっぱい生えてるぅぅ!」
必死で光を放つと、蜘蛛の巣の奥から小さな貝殻が黒く浮かび上がった。
「……あそこ!」
ミサキが叫ぶと、貝殻が砕け、魔獣の群れも光に飲まれて消えた。
「……よくやったな」
ルシアン様が低く呟き、紅い瞳をこちらに向ける。
(……その声! そこから「お前は一人じゃない」とか! 違うの!?)
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四日目:アレクシス様と!
王都から少し離れた漁村。
井戸の水が濁り、真水が減って困っているという。
「光よ、澄みわたれ!」
光が井戸を包むと、水底から青黒い石がぼんやり浮かび上がった。
「……あそこにあったんだ!」
ミサキが叫び、光を強めると石は弾け飛び、水が澄み渡った。
「やっぱり、すごいな」
アレクシス様が感心したように呟く。
(……だから違う! 今は恋愛フラグでしょ!? なんで石見て終わるの!?)
⸻
その後
人々は泣いて喜び、手を合わせて「聖乙女さま万歳!」と叫んでいた。
私は確かに救いをもたらした。
……けど。
(おかしい、おかしい、おかしい!!)
攻略対象たちは揃いも揃って「敬意」と「信頼」しか見せてこない!
愛情ゲージが――全然動いてないんですけど!?
「なーんーでーよぉぉぉぉぉ!!!」
夕暮れの空に、ミサキの絶叫が吸い込まれていった。
⸻
ユリウスは、木像に仕込まれた“意図的な穢素”を思い返していた。
レオネルは、砕いた黒石の不自然さに眉をひそめていた。
ルシアンは、貝殻が示す人工の気配を疑い、アレクシスもまた、井戸底の青黒い石をただの自然物とは思えなかった。
彼らの胸にはそれぞれ、小さな疑念が芽生えていた。
⸻
......一方その頃。
潮風亭の二階。
アコは早朝にぱちりと目を覚まし、そのままひとつ伸びをした。
お腹がぐーっと鳴った。
「……なんで、こんなにお腹へってるんだろ……?」
寝起きのぼんやりした声が、静かな部屋に響いた。
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