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4 ハナオ(2)
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気がつくと、まさに文字どおり跳ね起きていた。
息は荒く、全身は冬だというのに汗でびっしょりと濡れ、それでいてひどく冷たい。目は見えない。
(落ち着け)
上半身を起したまま息を整えていると、ようやく闇に目が慣れ、暗がりの中に白っぽいものが浮かび上がってきた――布団。そして俺の手。その手を動かして、まだほのかに温かい布地をつかむのに、さらに時間がかかった。顔を上げ、周りを見回す気になるまで、数分を要した。
(布団。畳。箪笥。本棚。壁。……じいちゃんの部屋)
ここは祖父宅であり、半月ほど前からの俺の住まい。〈喫珈琲カドー〉の二階。時刻は夜どころか深夜で、騒々しさからははるかに遠い。静寂の中で秒針の音だけが響く。そこまで確認して、俺はやっと口元の筋肉を動かした。
ゆめ。そう言おうとしたけれど喉が枯れ、口からこぼれてきたのはカサカサとかすれた音だけだった。声にならなかった呟きが、逆に不安をかき立てる。
(夢、なのか……本当に?)
ぶる、と震えが走った。やっとのことで抑えこんだはずのパニックが、ゆっくりと鎌首をもたげる。あれは本当にただの夢なのか? 現実に、物に触れることができるという保証は、どこにある?
俺はのろのろと掛け布団を脇に寄せて立ち上がった。布団にはさわれた。足の裏に畳の感触がある。でも他の物は? 開けたままだった部屋の戸のそばを、触れないように通る。廊下の床に足をつけるのをためらう。柱にもさわらない。電気のスイッチにもさわりたくなくて、真っ暗な中を一歩ずつ、足先の感覚を頼りに階段を下りた。
(もしも、さわれなかったら?)
ただの夢だと確認したい半面、もしかしたらという疑いを拭えない。嗅覚を失うのと体そのものが消えるのとでは話の次元が違う。そんな声が頭の片隅で聞こえる。わかっている。でも、そんなことは絶対にないなんて誰に言える? ――現に、俺は会っているのだから。
一階まで下りきってカウンター内に入り、棚へ手をのばす。グラスを手にとって水を飲みたかった。けれどやはり指先がグラスの手前で止まる。もし、これが決定打になったら? 何もさわれず、誰にも見えず、認識されなくなっていたら……。
無理やり勢いをつけた指は、棚の中で倒れそうになったグラスを普段どおりにつかんだ。蛇口をひねって勢いよく水を流す。グラスからあふれ出た水が飛び散り、手や袖を濡らす。冷たい。グラスの水を一気に飲み干すと、冷えきった液体が大きな安堵感とともに喉から食道へと流れ込んでいった。
「……ゆめ、か」
俺は小さく笑った。すがるようにグラスをにぎりしめた指先が白い。いっそのこと、手の中でグラスを割ってしまえば、破片と痛みが存在を証明してくれるだろうか。さすがに思い直して握力を緩める。
もう一杯、今度はゆっくりとグラスを満たす。カウンターを客席側へ回り、椅子に座った。
「ミツ」
暗闇から、ささやくような声がした。ハナオがいつも一階にいることを失念していた。小さな店だ。こんな真夜中に物音を立てられては無視できないだろう。
「ごめん、起こしたな」
「いいよ、寝てないから。電気つけたら?」
言われるままに、カウンターの卓上ランプだけを灯す。一瞬俺の目を眩ませた後、温かみのある光にぼんやりと店内が浮かび上がった。ハナオが闇からゆっくりと姿を見せる。
「大丈夫? ……うなされていたね」
「気づいてたか。ちょっと夢見が悪くてな。ハナオ、寝られないのか?」
俺は内容を問われたくなくて、無理やり話題を変える。ハナオはすんなりとのってきた。
「寝られないんじゃなくて、眠らないんだよ。僕に睡眠は必要ない。ついでに食事と排泄も。こうなってからずっと」
こうなってから――つまり、透明人間になってから、ということか。
「もっと言うと、光も特には必要ないかな。闇の中でだって見えるし」
「そうなのか? でもさっき、電気つけろって」
「だってミツは見えないでしょ? 冬の夜に暗がりで冷たい水を飲むって、結構シュールだよ」
客観的な意見に苦笑して、カウンターに置いたグラスに目を落とす。グラスと、その横に添えた俺の腕の影がのびていた。
「暖房をつけて、その水を温める気がないなら、もう一度布団に戻ることをお勧めするよ。ずいぶんと体が冷えているんじゃない?」
言われたとおりだ。汗で冷えた上に冷水の一気飲み。手足の先は冷たいを通り越して、感覚が曖昧になっている。
(このままじゃ、風邪引くな……)
あまり歓迎できることじゃない、また何かを失くしてしまいそうで。ただ、今すぐ寝床に戻るのも気が引けた。
俺は立ち上がって暖房をつける。ハナオが不機嫌そうな口ぶりで「足元」なんて言うから、階段横に置いてあったスリッパも履く。……お前は母親か。
「ミツって、無言で反抗するタイプ?」
「俺、反抗期なかったよ。一回だけしてみたけど、母さんがまったく相手にしてくれなくて。なんか空しくてやめた」
「うっわ、エセ優等生! 溜め込むタイプだぁ。危なーい」
なんでそうなる。そして何が危ない。
ハナオはあいかわらずテンション高く話す。疲れないんだろうか。でも俺はなんとなく気づいていた。普段はともかく、今夜はハナオなりの気遣いだ。
俺は椅子に座り直してハナオの横顔を見る。
(寝ないんだったら、疲れとかもないのか。――って、それは)
人間といえるのか。
疑問は出てくるものの、どうにも先程の悪夢を連想してしまって、口に出すのをためらう。もういい、後日にしよう。どうせ日中の大半は二人きりだ。
それに、もっと訊きたいことがあった。
「なぁ、ハナオ。ハナオは」
「ん? 何?」
「…………いや、いい」
それは、どんな質問よりもためらわれた。ハナオは小首を傾げたが、特に追及するでもなく、ランプの光を楽しげに見つめている。光はハナオには濃い陰影をつけるけれど、やっぱりその存在を影にすることはなく、カラフルな色をそのまま周囲にまき散らしていた。この卓上ランプは精巧に色ガラスを組み合わせたランプシェードを持つ一点もので、祖父の宝物の一つだ。
(初めて会った時も、あのシェードをさわってたな)
いや、さわろうとしていた。自分が物に触れられない存在だと示すために。気遣ってそこにいるのだろうハナオの動きは、彼自身の思いとは裏腹にさっきの悪夢を反芻させる。そして行きつく先はいつも同じ。
すべてを透り抜けてしまった体。誰にも見られていないことへの衝撃。些細な夢の中でありながら、生々しい恐怖。でも今、目の前には現在進行形でその現象を経験している者がいる。
「――辛くないか?」
ハナオは上目づかいに視線を上げた。光を含んだ漆黒の目は深い闇色を湛え、まるで穏やかに凪いだ夜の海のような、宇宙の果てのような印象。静かな中に計り知れない何かを隠している。いつもは笑みの中に紛れ込んでいるが、幼い外見とはひどく不釣り合いだ。これは本当に十代の少年の目なのか。どちらかといえば長い歳月を見てきた人物の目。たとえば、祖父のものに近い気がする。
ふ、と口の端が緩んだ。色づいた口元が薄い三日月のような形に変化する。
「あぁ、それは悪夢だね」
すべてを察したような言葉に、俺はやっと自分が問いかけてしまったことに気づいた。
「悪い。忘れてくれ」
口を押さえて、気まずさに目を逸らす。なんて失礼な。訊くまでもないことじゃないか。嗅覚がないだけで人生が変わってしまったのに。夢の中だけで発狂しかけたのに。
「気にすることないよ。――僕は、これを望んだのだから」
俺は視線を戻した。ハナオの姿はガラス越しの華やかな光に照らされ、いつもに増して黒が際立つ。
「消えてしまえって願ったの」
そしたらビックリなんと叶っちゃったー、とハナオは軽い調子で言う。
「なんで……願ったんだ?」
「えー、忘れたよぉ、そんなの。さてと、ミツ、そろそろ寝てきたら? 大丈夫、何も変わらないから」
あっけらかんとした口ぶりは、まるでさっきまでの不安を、大したことないと一笑するかのようだった。どこか確信めいて、大きな安心感と少しの気恥ずかしさを連れてくる。
ランプに替わって階段の明かりをつけた俺に、ハナオが「おやすみ」と手を振る。再びもぐり込んだひんやりとした布団の中で、眠気にうつらうつらしながら俺は思った。
では、願いの叶ったハナオは、幸せなのだろうか?
息は荒く、全身は冬だというのに汗でびっしょりと濡れ、それでいてひどく冷たい。目は見えない。
(落ち着け)
上半身を起したまま息を整えていると、ようやく闇に目が慣れ、暗がりの中に白っぽいものが浮かび上がってきた――布団。そして俺の手。その手を動かして、まだほのかに温かい布地をつかむのに、さらに時間がかかった。顔を上げ、周りを見回す気になるまで、数分を要した。
(布団。畳。箪笥。本棚。壁。……じいちゃんの部屋)
ここは祖父宅であり、半月ほど前からの俺の住まい。〈喫珈琲カドー〉の二階。時刻は夜どころか深夜で、騒々しさからははるかに遠い。静寂の中で秒針の音だけが響く。そこまで確認して、俺はやっと口元の筋肉を動かした。
ゆめ。そう言おうとしたけれど喉が枯れ、口からこぼれてきたのはカサカサとかすれた音だけだった。声にならなかった呟きが、逆に不安をかき立てる。
(夢、なのか……本当に?)
ぶる、と震えが走った。やっとのことで抑えこんだはずのパニックが、ゆっくりと鎌首をもたげる。あれは本当にただの夢なのか? 現実に、物に触れることができるという保証は、どこにある?
俺はのろのろと掛け布団を脇に寄せて立ち上がった。布団にはさわれた。足の裏に畳の感触がある。でも他の物は? 開けたままだった部屋の戸のそばを、触れないように通る。廊下の床に足をつけるのをためらう。柱にもさわらない。電気のスイッチにもさわりたくなくて、真っ暗な中を一歩ずつ、足先の感覚を頼りに階段を下りた。
(もしも、さわれなかったら?)
ただの夢だと確認したい半面、もしかしたらという疑いを拭えない。嗅覚を失うのと体そのものが消えるのとでは話の次元が違う。そんな声が頭の片隅で聞こえる。わかっている。でも、そんなことは絶対にないなんて誰に言える? ――現に、俺は会っているのだから。
一階まで下りきってカウンター内に入り、棚へ手をのばす。グラスを手にとって水を飲みたかった。けれどやはり指先がグラスの手前で止まる。もし、これが決定打になったら? 何もさわれず、誰にも見えず、認識されなくなっていたら……。
無理やり勢いをつけた指は、棚の中で倒れそうになったグラスを普段どおりにつかんだ。蛇口をひねって勢いよく水を流す。グラスからあふれ出た水が飛び散り、手や袖を濡らす。冷たい。グラスの水を一気に飲み干すと、冷えきった液体が大きな安堵感とともに喉から食道へと流れ込んでいった。
「……ゆめ、か」
俺は小さく笑った。すがるようにグラスをにぎりしめた指先が白い。いっそのこと、手の中でグラスを割ってしまえば、破片と痛みが存在を証明してくれるだろうか。さすがに思い直して握力を緩める。
もう一杯、今度はゆっくりとグラスを満たす。カウンターを客席側へ回り、椅子に座った。
「ミツ」
暗闇から、ささやくような声がした。ハナオがいつも一階にいることを失念していた。小さな店だ。こんな真夜中に物音を立てられては無視できないだろう。
「ごめん、起こしたな」
「いいよ、寝てないから。電気つけたら?」
言われるままに、カウンターの卓上ランプだけを灯す。一瞬俺の目を眩ませた後、温かみのある光にぼんやりと店内が浮かび上がった。ハナオが闇からゆっくりと姿を見せる。
「大丈夫? ……うなされていたね」
「気づいてたか。ちょっと夢見が悪くてな。ハナオ、寝られないのか?」
俺は内容を問われたくなくて、無理やり話題を変える。ハナオはすんなりとのってきた。
「寝られないんじゃなくて、眠らないんだよ。僕に睡眠は必要ない。ついでに食事と排泄も。こうなってからずっと」
こうなってから――つまり、透明人間になってから、ということか。
「もっと言うと、光も特には必要ないかな。闇の中でだって見えるし」
「そうなのか? でもさっき、電気つけろって」
「だってミツは見えないでしょ? 冬の夜に暗がりで冷たい水を飲むって、結構シュールだよ」
客観的な意見に苦笑して、カウンターに置いたグラスに目を落とす。グラスと、その横に添えた俺の腕の影がのびていた。
「暖房をつけて、その水を温める気がないなら、もう一度布団に戻ることをお勧めするよ。ずいぶんと体が冷えているんじゃない?」
言われたとおりだ。汗で冷えた上に冷水の一気飲み。手足の先は冷たいを通り越して、感覚が曖昧になっている。
(このままじゃ、風邪引くな……)
あまり歓迎できることじゃない、また何かを失くしてしまいそうで。ただ、今すぐ寝床に戻るのも気が引けた。
俺は立ち上がって暖房をつける。ハナオが不機嫌そうな口ぶりで「足元」なんて言うから、階段横に置いてあったスリッパも履く。……お前は母親か。
「ミツって、無言で反抗するタイプ?」
「俺、反抗期なかったよ。一回だけしてみたけど、母さんがまったく相手にしてくれなくて。なんか空しくてやめた」
「うっわ、エセ優等生! 溜め込むタイプだぁ。危なーい」
なんでそうなる。そして何が危ない。
ハナオはあいかわらずテンション高く話す。疲れないんだろうか。でも俺はなんとなく気づいていた。普段はともかく、今夜はハナオなりの気遣いだ。
俺は椅子に座り直してハナオの横顔を見る。
(寝ないんだったら、疲れとかもないのか。――って、それは)
人間といえるのか。
疑問は出てくるものの、どうにも先程の悪夢を連想してしまって、口に出すのをためらう。もういい、後日にしよう。どうせ日中の大半は二人きりだ。
それに、もっと訊きたいことがあった。
「なぁ、ハナオ。ハナオは」
「ん? 何?」
「…………いや、いい」
それは、どんな質問よりもためらわれた。ハナオは小首を傾げたが、特に追及するでもなく、ランプの光を楽しげに見つめている。光はハナオには濃い陰影をつけるけれど、やっぱりその存在を影にすることはなく、カラフルな色をそのまま周囲にまき散らしていた。この卓上ランプは精巧に色ガラスを組み合わせたランプシェードを持つ一点もので、祖父の宝物の一つだ。
(初めて会った時も、あのシェードをさわってたな)
いや、さわろうとしていた。自分が物に触れられない存在だと示すために。気遣ってそこにいるのだろうハナオの動きは、彼自身の思いとは裏腹にさっきの悪夢を反芻させる。そして行きつく先はいつも同じ。
すべてを透り抜けてしまった体。誰にも見られていないことへの衝撃。些細な夢の中でありながら、生々しい恐怖。でも今、目の前には現在進行形でその現象を経験している者がいる。
「――辛くないか?」
ハナオは上目づかいに視線を上げた。光を含んだ漆黒の目は深い闇色を湛え、まるで穏やかに凪いだ夜の海のような、宇宙の果てのような印象。静かな中に計り知れない何かを隠している。いつもは笑みの中に紛れ込んでいるが、幼い外見とはひどく不釣り合いだ。これは本当に十代の少年の目なのか。どちらかといえば長い歳月を見てきた人物の目。たとえば、祖父のものに近い気がする。
ふ、と口の端が緩んだ。色づいた口元が薄い三日月のような形に変化する。
「あぁ、それは悪夢だね」
すべてを察したような言葉に、俺はやっと自分が問いかけてしまったことに気づいた。
「悪い。忘れてくれ」
口を押さえて、気まずさに目を逸らす。なんて失礼な。訊くまでもないことじゃないか。嗅覚がないだけで人生が変わってしまったのに。夢の中だけで発狂しかけたのに。
「気にすることないよ。――僕は、これを望んだのだから」
俺は視線を戻した。ハナオの姿はガラス越しの華やかな光に照らされ、いつもに増して黒が際立つ。
「消えてしまえって願ったの」
そしたらビックリなんと叶っちゃったー、とハナオは軽い調子で言う。
「なんで……願ったんだ?」
「えー、忘れたよぉ、そんなの。さてと、ミツ、そろそろ寝てきたら? 大丈夫、何も変わらないから」
あっけらかんとした口ぶりは、まるでさっきまでの不安を、大したことないと一笑するかのようだった。どこか確信めいて、大きな安心感と少しの気恥ずかしさを連れてくる。
ランプに替わって階段の明かりをつけた俺に、ハナオが「おやすみ」と手を振る。再びもぐり込んだひんやりとした布団の中で、眠気にうつらうつらしながら俺は思った。
では、願いの叶ったハナオは、幸せなのだろうか?
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