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侵入!ヒュプリオスの町
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ペルケティア東部は冬になると雪に包まれる地域が多く、北部に比べると大分ましだが、それでも人の生活に影響を与える程度の雪が毎年積もる。
主要街道から分かれる支道をしばらく行くと現れるヒュプリオスの町だが、ここは元々北部からの入植者が作った町のため、立ち並ぶ家々は2つの様式の家が半分ずつといった割合で建てられていた。
元々この地方で普通に作られる様式の物は木と石を組み合わせて建てられ、大きな三角形型をした家に大き目な煙突が立つという形が主流だ。
そしてもう一方の様式は、完全石造りの平屋建てで、こちらはペルケティア北部の標高の高い地方の様式に則った物が使われている。
どちらも断熱性には気を配っているつくりで、雪の多いこの地方では建屋内の環境は過ごしやすいものだ。
俺とパーラはヒュプリオスの町に到着してすぐに宿を取ってからウルカルムの情報集めに動いた。
念の為に変装を意識して、俺とパーラは髪の色が違うかつらをかぶっている。
これはジネアの町近くの遺跡からの発見物で、何かに使えるかもと思って確保していたものを今回の旅に持ち出していたものだ。
かつらは赤髪のは俺が、パーラは金髪のものを使う。
髪形はそのままなのに髪の色が変わるだけでかなり印象は違うもので、これなら仮に俺達を見知っている物がいたとしてもすぐには結び付かないはずだ。
今回はパーラも普通に声が出せるので、2手に分かれて情報を集めることにした。
集める情報はどんな些細な物でもいい。
ウルカルムの家族構成から取り扱っている商品、よく飲む酒の種類に付き合いのある人物、果ては愛人の有無に至るまであらゆる情報から攻める手立てを考えるのだ。
パーラには一般の店の方から当たってもらい、収穫の有無にかかわらず、昼には宿に戻ってくることを決めて行動開始だ。
雪深い地方ともなると酒場は憩いの場として昼間でもにぎわうもので、俺が飛び込みで入った酒場も昼から酒に食事にと大勢の人でごった返していた。
「いらっしゃい、食事かい?」
「ええ、適当に何かお願いします」
店主のいるカウンター席に着き、注文をして待つ。
その間に酒場の中を探ってみると、最初はこちらを窺う視線がいくつか感じられたが今ではその視線も無くなり、酒場の喧騒だけが耳を打つのみだ。
一応交わされる会話の盗み聞きを試みるが、ほとんど聞き取ることが出来ずにいる間に料理が運ばれてきた。
「おまちどう。クムジュバの煮込みとスノーベリーのパンだ」
薄く切られたパンの乗った皿ととビーフシチューのようなものが入った深皿の2つが俺の目の前に置かれた。
聞きなれない名前が気になって聞いてみると、冬になるとこの辺りに来る渡り鳥がクムジュバというらしく、かなりの大きさを誇るが知能が高くないようで、罠で簡単に捕まえられるため、この辺りでは冬の貴重なタンパク源として重宝されているらしい。
食べてみると、鶏肉の淡泊さとコクのあるスープが混ざって深い味わいを感じた。
パンもスノーベリーというのは初めて食べるが、レーズンよりも酸味と香りが強く、煮込みと一緒に食べるとサッパリとしたキレが楽しめる。
旅の楽しみの一つでもある食事に一瞬気を取られたが、本来の目的を果たすために店主に話しかける。
「ご主人、この辺りで品揃えのいい商店に心当たりはありませんか?」
「うーん、どうだろうなぁ。今の時期はどこも仕入れにはあまい出向かないからな。どこも似たようなもんだが「それならテスカドさんの所がいいんじゃないか?」…そうだな、そこぐらいか」
俺達の会話が聞こえていたのか、少し離れた所で飲んでいた男性が店主の話に割り込むようにして俺の理想的な流れに持って行ってくれた。
テスカドと言うのがどういう人物かを聞き出していくと、それがウルカルムのこの辺りで名乗っている偽名だと分かる。
どうやらアシャドルとペルケティアで名前を使い分けているようだ。
世間話をする感じで情報を引き出していき、手に入るだけの情報を収集したらその場を早々に立ち去る。
あまり深く立ち入るとウルカルムに自分を調べていた存在のことが伝わるかもしれない。
「教えてもらってありがとうございます。あの人に一杯差し上げて下さい。お釣りは結構ですので」
「太っ腹だな。まいどあり」
さっき横からアシストしてくれた男性に一杯奢り、店主に少し多めに金を払って店を出ていく。
扉を潜る際にさっきの男性から礼の言葉を投げかけられたので振り向かずに片手を上げるだけで返事をして去っていく。
なんか今の俺格好よくね?
宿の部屋に戻ると既にパーラが帰ってきており、部屋にあるテーブルに着いて昼食を食べていた。
俺にも勧められたが食べてきたことを伝え、食べ終わるのを待つことにする。
待っている間に何もすることが無かった俺は何となくパーラが食べる姿を見ているのだが、意外と大きいパンをほおばる姿はどこか小動物を彷彿とさせ、微笑ましさが顔に出ていたようで、ピタリと動きが止まって俺と目が合い、しばし見つめ合ってから咀嚼のペースが急に上がってあっという間に食べ切ってしまった。
「急にどうした?そんなに急がなくても盗ったりしないぞ?」
もぐもぐと口を動かしてどこかバツの悪そうな顔をしていたパーラが、飲み込んで一息ついた頃にポツリと心情を明かした。
「あんまりじっと見られると恥ずかしいから」
「あ…そうか、すまん。無神経だった」
その一言を聞いて、完全に俺の方に非があったと判断してすぐに謝る。
パーラは別にいいとは言ってくれたが、子供とはいえ女性の食事している所を凝視するなど失礼だったな。
少し気まずくなった空気を振り払うようにしてお互いに手入れた情報をすり合わせる作業に移ることにした。
多少の推測も混じるが分かったこと自体はそれほど多くないのだが、新事実の発覚による衝撃は決して少なくない。
そもそもウルカルムは元々この辺りの出身だった。
以前この辺りを治めていたパイマー男爵家の長男だったが、その男爵家がしていた不正が暴かれたことで家を出て商人をしながらアシャドル王国に流れ着いたらしい。
そしてその不正を暴いたというのがティシュルドという当時のペルケティア教国で断罪執行官の地位にいた者だった。
この断罪執行官というのは、元々は処刑の際に罪人の首を切り落とす役を専任する立場を指す言葉だったのだが、長い時代の変遷によって罪を犯したものを直接裁く事が可能な行政執行にまで拡大解釈がされ、今では裁判から処刑までを司る司法の砦といったものへとなっていた。
男爵家の取り潰しと同時に当主の処刑によってウルカルムにまで咎は及ばなかったが、この時のことを覚えていたために復讐を胸に雌伏の時を送っていたのだろう。
バスラン男爵領で商人として力をつけてペルケティアに戻ってきて、偽名を使って今の店を興したというわけだ。
それがどこでパーラ達とつながるのかと言うと、このティシュルドという人物だが、実はパーラ達の祖父であったことが分かったのだ。
パイマー男爵家の不正を暴いたのを最後に引退し、その後田舎に籠って余生を閉じたのだが、ウルカルムの復讐の対象がティシュルドからその子供に、その子供から孫にと移っていった結果、ヘクターとパーラの殺害を計画させたと推測する。
ペルケティアからわざわざパーラ達を探して、復讐のためにアシャドル王国まで出張ってくるとは、ウルカルムの執念深さが窺い知れる。
するとそこでパーラが話の途中にポツリと呟いた。
「町で情報を集めてたら急に知らない人に声を掛けられた」
「…詳しく」
「お婆さんが急に私の方に近付いてきて、ノーラちゃんって呼んだ。ノーラは死んだお母さんの名前」
聞き込みをしながら買い物をしていたら、突然老婆が声をかけてきて、それに応えたら急に手を握ってノーラという名前を口にしたのだそうだ。
急に母の名前を出されて緊張してしまったパーラだったが、老婆に誘われるままに家に招かれ、そこで自分の正体を明かして詳しい話を教えてもらった。
パーラ自身は死んだ母の姿は朧げにしか覚えていないが、どうも老婆の話を聞くとノーラは金髪だったようで、元々親子だけあって顔立ちが似ていた上に変装でかぶっている金髪のかつらのせいでノーラの子供の頃と瓜二つに映ったようだった。
老婆は以前、こことは違う所に住んでいたらしく、ノーラも子供の頃は同じところで育ったため、パーラの姿に驚いて声をかけてしまったのだという。
「まずいな。パーラの母親を知っている人物からウルカルムに俺達の存在が伝わる可能性がある」
「あのお婆さんはそんなことしないと思うけど」
自分の母親の話を聞かせてくれた老婆がウルカルムとつながっているとは思えないようだが、なにも直接の報告だけが情報の入手法になるわけではない。
「本人にその気が無くても、話の中で上がってきた話題を偶然聞いた人間からウルカルムに情報がいく場合もある。もしかしたら急いで取り掛かることになるかもしれない」
俺の言ったことを頭の中で反芻して納得したパーラが力強く頷いてきた。
「ウルカルムに近付くのは簡単じゃない。町で手に入る情報にも限りがあるしな」
「じゃあどうするの?直接殴り込む?」
意外と武闘派な考えをするパーラに首を振ってやんわりと否定しておく。
出来る出来ないじゃなくて、町の商人としての地位を築いているウルカルムの屋敷に殴り込むなんて真似をしたら聖鈴騎士が出張る案件になりそうだ。
なのでそれはあくまでも最終手段とし、別の手を取る。
「情報を手に入れるならもっと確度の高いもののほうがいい。よって、俺達が狙うのはウルカルムの側近だ。理想的なのは店の業務に深く食い込んでてウルカルムからの信頼が厚いのが望ましいが、まあその辺は捕まえれるのから当たっていくから難しいと思うが」
「捕まえてどうするの?」
「丁寧にお願いして、話して頂くんだよ。丁寧に、な」
素直に話してくれるのならそれに越したことは無いが、まずありえないのでそこはアドリブで対応するしかない。
流石に拷問はしたくないが、精神的にちくちく責めるのは嫌いじゃない。
少しだけ楽しみになって来たのは俺もイイ性格になってきたということか。
「…アンディ悪い顔してる」
パーラの若干引いた声に自分が今どんな表情をしているのかを間接的に知り、つい顔を撫でまわしてしまった。
主要街道から分かれる支道をしばらく行くと現れるヒュプリオスの町だが、ここは元々北部からの入植者が作った町のため、立ち並ぶ家々は2つの様式の家が半分ずつといった割合で建てられていた。
元々この地方で普通に作られる様式の物は木と石を組み合わせて建てられ、大きな三角形型をした家に大き目な煙突が立つという形が主流だ。
そしてもう一方の様式は、完全石造りの平屋建てで、こちらはペルケティア北部の標高の高い地方の様式に則った物が使われている。
どちらも断熱性には気を配っているつくりで、雪の多いこの地方では建屋内の環境は過ごしやすいものだ。
俺とパーラはヒュプリオスの町に到着してすぐに宿を取ってからウルカルムの情報集めに動いた。
念の為に変装を意識して、俺とパーラは髪の色が違うかつらをかぶっている。
これはジネアの町近くの遺跡からの発見物で、何かに使えるかもと思って確保していたものを今回の旅に持ち出していたものだ。
かつらは赤髪のは俺が、パーラは金髪のものを使う。
髪形はそのままなのに髪の色が変わるだけでかなり印象は違うもので、これなら仮に俺達を見知っている物がいたとしてもすぐには結び付かないはずだ。
今回はパーラも普通に声が出せるので、2手に分かれて情報を集めることにした。
集める情報はどんな些細な物でもいい。
ウルカルムの家族構成から取り扱っている商品、よく飲む酒の種類に付き合いのある人物、果ては愛人の有無に至るまであらゆる情報から攻める手立てを考えるのだ。
パーラには一般の店の方から当たってもらい、収穫の有無にかかわらず、昼には宿に戻ってくることを決めて行動開始だ。
雪深い地方ともなると酒場は憩いの場として昼間でもにぎわうもので、俺が飛び込みで入った酒場も昼から酒に食事にと大勢の人でごった返していた。
「いらっしゃい、食事かい?」
「ええ、適当に何かお願いします」
店主のいるカウンター席に着き、注文をして待つ。
その間に酒場の中を探ってみると、最初はこちらを窺う視線がいくつか感じられたが今ではその視線も無くなり、酒場の喧騒だけが耳を打つのみだ。
一応交わされる会話の盗み聞きを試みるが、ほとんど聞き取ることが出来ずにいる間に料理が運ばれてきた。
「おまちどう。クムジュバの煮込みとスノーベリーのパンだ」
薄く切られたパンの乗った皿ととビーフシチューのようなものが入った深皿の2つが俺の目の前に置かれた。
聞きなれない名前が気になって聞いてみると、冬になるとこの辺りに来る渡り鳥がクムジュバというらしく、かなりの大きさを誇るが知能が高くないようで、罠で簡単に捕まえられるため、この辺りでは冬の貴重なタンパク源として重宝されているらしい。
食べてみると、鶏肉の淡泊さとコクのあるスープが混ざって深い味わいを感じた。
パンもスノーベリーというのは初めて食べるが、レーズンよりも酸味と香りが強く、煮込みと一緒に食べるとサッパリとしたキレが楽しめる。
旅の楽しみの一つでもある食事に一瞬気を取られたが、本来の目的を果たすために店主に話しかける。
「ご主人、この辺りで品揃えのいい商店に心当たりはありませんか?」
「うーん、どうだろうなぁ。今の時期はどこも仕入れにはあまい出向かないからな。どこも似たようなもんだが「それならテスカドさんの所がいいんじゃないか?」…そうだな、そこぐらいか」
俺達の会話が聞こえていたのか、少し離れた所で飲んでいた男性が店主の話に割り込むようにして俺の理想的な流れに持って行ってくれた。
テスカドと言うのがどういう人物かを聞き出していくと、それがウルカルムのこの辺りで名乗っている偽名だと分かる。
どうやらアシャドルとペルケティアで名前を使い分けているようだ。
世間話をする感じで情報を引き出していき、手に入るだけの情報を収集したらその場を早々に立ち去る。
あまり深く立ち入るとウルカルムに自分を調べていた存在のことが伝わるかもしれない。
「教えてもらってありがとうございます。あの人に一杯差し上げて下さい。お釣りは結構ですので」
「太っ腹だな。まいどあり」
さっき横からアシストしてくれた男性に一杯奢り、店主に少し多めに金を払って店を出ていく。
扉を潜る際にさっきの男性から礼の言葉を投げかけられたので振り向かずに片手を上げるだけで返事をして去っていく。
なんか今の俺格好よくね?
宿の部屋に戻ると既にパーラが帰ってきており、部屋にあるテーブルに着いて昼食を食べていた。
俺にも勧められたが食べてきたことを伝え、食べ終わるのを待つことにする。
待っている間に何もすることが無かった俺は何となくパーラが食べる姿を見ているのだが、意外と大きいパンをほおばる姿はどこか小動物を彷彿とさせ、微笑ましさが顔に出ていたようで、ピタリと動きが止まって俺と目が合い、しばし見つめ合ってから咀嚼のペースが急に上がってあっという間に食べ切ってしまった。
「急にどうした?そんなに急がなくても盗ったりしないぞ?」
もぐもぐと口を動かしてどこかバツの悪そうな顔をしていたパーラが、飲み込んで一息ついた頃にポツリと心情を明かした。
「あんまりじっと見られると恥ずかしいから」
「あ…そうか、すまん。無神経だった」
その一言を聞いて、完全に俺の方に非があったと判断してすぐに謝る。
パーラは別にいいとは言ってくれたが、子供とはいえ女性の食事している所を凝視するなど失礼だったな。
少し気まずくなった空気を振り払うようにしてお互いに手入れた情報をすり合わせる作業に移ることにした。
多少の推測も混じるが分かったこと自体はそれほど多くないのだが、新事実の発覚による衝撃は決して少なくない。
そもそもウルカルムは元々この辺りの出身だった。
以前この辺りを治めていたパイマー男爵家の長男だったが、その男爵家がしていた不正が暴かれたことで家を出て商人をしながらアシャドル王国に流れ着いたらしい。
そしてその不正を暴いたというのがティシュルドという当時のペルケティア教国で断罪執行官の地位にいた者だった。
この断罪執行官というのは、元々は処刑の際に罪人の首を切り落とす役を専任する立場を指す言葉だったのだが、長い時代の変遷によって罪を犯したものを直接裁く事が可能な行政執行にまで拡大解釈がされ、今では裁判から処刑までを司る司法の砦といったものへとなっていた。
男爵家の取り潰しと同時に当主の処刑によってウルカルムにまで咎は及ばなかったが、この時のことを覚えていたために復讐を胸に雌伏の時を送っていたのだろう。
バスラン男爵領で商人として力をつけてペルケティアに戻ってきて、偽名を使って今の店を興したというわけだ。
それがどこでパーラ達とつながるのかと言うと、このティシュルドという人物だが、実はパーラ達の祖父であったことが分かったのだ。
パイマー男爵家の不正を暴いたのを最後に引退し、その後田舎に籠って余生を閉じたのだが、ウルカルムの復讐の対象がティシュルドからその子供に、その子供から孫にと移っていった結果、ヘクターとパーラの殺害を計画させたと推測する。
ペルケティアからわざわざパーラ達を探して、復讐のためにアシャドル王国まで出張ってくるとは、ウルカルムの執念深さが窺い知れる。
するとそこでパーラが話の途中にポツリと呟いた。
「町で情報を集めてたら急に知らない人に声を掛けられた」
「…詳しく」
「お婆さんが急に私の方に近付いてきて、ノーラちゃんって呼んだ。ノーラは死んだお母さんの名前」
聞き込みをしながら買い物をしていたら、突然老婆が声をかけてきて、それに応えたら急に手を握ってノーラという名前を口にしたのだそうだ。
急に母の名前を出されて緊張してしまったパーラだったが、老婆に誘われるままに家に招かれ、そこで自分の正体を明かして詳しい話を教えてもらった。
パーラ自身は死んだ母の姿は朧げにしか覚えていないが、どうも老婆の話を聞くとノーラは金髪だったようで、元々親子だけあって顔立ちが似ていた上に変装でかぶっている金髪のかつらのせいでノーラの子供の頃と瓜二つに映ったようだった。
老婆は以前、こことは違う所に住んでいたらしく、ノーラも子供の頃は同じところで育ったため、パーラの姿に驚いて声をかけてしまったのだという。
「まずいな。パーラの母親を知っている人物からウルカルムに俺達の存在が伝わる可能性がある」
「あのお婆さんはそんなことしないと思うけど」
自分の母親の話を聞かせてくれた老婆がウルカルムとつながっているとは思えないようだが、なにも直接の報告だけが情報の入手法になるわけではない。
「本人にその気が無くても、話の中で上がってきた話題を偶然聞いた人間からウルカルムに情報がいく場合もある。もしかしたら急いで取り掛かることになるかもしれない」
俺の言ったことを頭の中で反芻して納得したパーラが力強く頷いてきた。
「ウルカルムに近付くのは簡単じゃない。町で手に入る情報にも限りがあるしな」
「じゃあどうするの?直接殴り込む?」
意外と武闘派な考えをするパーラに首を振ってやんわりと否定しておく。
出来る出来ないじゃなくて、町の商人としての地位を築いているウルカルムの屋敷に殴り込むなんて真似をしたら聖鈴騎士が出張る案件になりそうだ。
なのでそれはあくまでも最終手段とし、別の手を取る。
「情報を手に入れるならもっと確度の高いもののほうがいい。よって、俺達が狙うのはウルカルムの側近だ。理想的なのは店の業務に深く食い込んでてウルカルムからの信頼が厚いのが望ましいが、まあその辺は捕まえれるのから当たっていくから難しいと思うが」
「捕まえてどうするの?」
「丁寧にお願いして、話して頂くんだよ。丁寧に、な」
素直に話してくれるのならそれに越したことは無いが、まずありえないのでそこはアドリブで対応するしかない。
流石に拷問はしたくないが、精神的にちくちく責めるのは嫌いじゃない。
少しだけ楽しみになって来たのは俺もイイ性格になってきたということか。
「…アンディ悪い顔してる」
パーラの若干引いた声に自分が今どんな表情をしているのかを間接的に知り、つい顔を撫でまわしてしまった。
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