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ドレイクモドキ
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砂漠という死の世界に等しい環境で、ただ船に揺られているだけで移動できるというのは実に恵まれていると思う。
おまけに俺達は個室同然のテントに冷房を備えているとなれば、この世界でも随分と優雅な過ごし方をしていると言えるだろう。
ただそんなテントだが、今はパーラが出稼ぎに行っているため、冷房は気化冷却を利用したものしか動いておらず、いささか暑さが気になってしまう。
慣れとは恐ろしいものだ。
パーラの出稼ぎというのは、彼女の風魔術を使った出張冷房サービスのことだ。
一等客室にいる貴族や大物商人などは自前で風魔術師を連れていることも多いが、大部屋にいる一般客には必ずしも風魔術師がいるとは限らない。
本来であれば風魔術師を何人か船主側が用意するのだが今回はたまたま人数が足らず、船に乗る風魔術師を船の帆に風を送る役目に割り振ってしまった分だけ大部屋の環境は辛いものとなっているそうだ。
勿論乗客達はただ暑さを我慢するだけではない。
大部屋には桶や樽を縦に切って横にした浴槽のようなものまで持ち込まれており、あまりの暑さに耐えきれなくなった人がそこで水浴びをするというのがよく見られるという。
一応水はけはちゃんと考えられており、床に落ちた水はそのまま船倉にある動物たちのエリアに導かれ、飲み水として利用されるという徹底ぶりは、むしろこれを想定しているのではないかと思わせるぐらいだ。
当然ながら大部屋には十分な数の換気窓はあるのだが、砂漠の風というのは直接引き入れるには暑すぎる。
通常は船に設けられた金属製の通気口を通すことで若干冷やされた空気が流れてくるのだが、これもそれほど涼しい風になるわけでもなく、どうしても水を多く使って体を冷やそうとするらしい。
船に積まれた水は常識的な範囲であれば無料で提供されるが、それでも無限にあるわけではないため、なるべくなら節約したいのが船主側の思惑だ。
そこで急遽風魔術が使える人間としてパーラに航海の間、大部屋で冷房の魔術を使う時間を設けて欲しいと船長から頼み込まれてしまった。
一応ギルドからの依頼という形にしてくれたので、ただじっと船の上で大人しくするだけだった時間が、パーラの昇格の評価点として稼げる時間へと変わったのは嬉しい誤算だろう。
もっとも依頼はパーラ個人へのものなので、俺にはギルドの評価も報酬も入らないがこればかりは仕方ない。
パーラの使う冷房の魔術は普通の魔術師が使うのよりもどういうわけか効果が強い為、大部屋であっても十分に冷やすことが出来て乗客に非常に喜ばれている。
おかげでパーラは船の中ではちょっとしたアイドル並みの人気者となっていた。
なにせ快適な環境を提供してくれる上に愛嬌もある。
年寄りの商人なんかには特に孫のように可愛がられており、しょっちゅう貰ったおやつ的なものを食べながら帰ってくるほどだ。
船の中で人々に貢献するパーラ、特にできることも無いのでテントで装備類の整備に励む俺という図式となっていた。
砂漠の俺、超無力。
既に船上生活も三日目に突入している。
この間の食事等は別料金を払うことで船側から提供してもらえるが、大体の乗客は自分達で持ち込んだものを食べて過ごしていた。
それは一頭客室に泊まる客も同様で、なにせ船で提供される食事というのは払う金額に見合わないほどにまずいらしい。
甲板をはじめとして、船内では基本火気厳禁であるため、調理場を借りて調理をする必要があるが、正直揺れる船で料理を作るというのは慣れが必要だ。
なのでせいぜいが簡単なスープを作るぐらいで本格的な料理というのはまず作られることはない。
むしろ船が途中で荷物や乗客を降ろすために立ち寄る街などで出来合いの料理を買い込むのが賢いやり方だろう。
一方、俺達はどうしているかというと、実は普通に調理道具を使って料理していた。
勿論火は熾していない。
ではどうやって調理をするかというと、なんのことはない。
単純に直射日光でフライパンを温めて加熱に使っているだけだ。
勿論これだけでは火力不足だ。
そこで登場するのが俺の雷魔術である。
俺が使っている剣は、電気の抵抗値の高さから電流を流せばそれだけで熱を持ち始める。
この上に予熱済みのフライパンを乗せるだけでアッと今にアツアツまで持っていけるというわけだ。
要は電気コンロを再現しているわけだが、なんだかこの剣は攻撃に使うよりもお湯を沸かしたりコンロ代わりにと、こういう使い方の方が出番が多い。
もしかしたらこのやり方は今後の野営時にも使えるかもしれないな。
昼の暑い日差しの下、俺とパーラの分の調理に勤しんでいると、船員や乗客の一部がこちらを見ているのに気付く。
恐らく甲板で調理をしている姿が珍しいのだろう。
普通は火気厳禁の場所で料理など言語道断だが、生憎俺は火を使っていない。
ただ熱で料理をしているだけだ。
火の姿が欠片も無いので文句を言われることも無い。
まぁ原理を知らないので文句の言いようがないというだけだが。
電熱調理器具は完璧に安全というわけではないが、今この現象は俺の魔術の制御下にあるため、危険を感じたらすぐに発動を取り止めればいいだけだ。
いわば俺が安全装置だ。
昼食を作っていると、午前の仕事を終えたパーラが船室へと続く扉から姿を現し、しばしその場で鼻をひくつかせて匂いの元を探る仕草を見せ、その発生源である俺の姿を見つけると嬉しそうに小走りで駆け寄って来た。
「ただいまー!あ~お腹減った~…。今日のお昼って何?」
俺の隣へとしゃがみこみながらフライパンを覗き込むパーラだが、目の前の料理の完成を待ちきれないかのように少しだけその眼はギラついている。
「お帰り、お疲れさん。昼は朝のパンの残りでサンドイッチにしたのと、昨日立ち寄った町で手に入れた干し果物と干し肉のオイル煮だ。少し重めになるけど大丈夫か?」
「大丈夫大丈夫。アンディの作る料理は絶品だからね。いくらでも食べれるよ」
まぁ確かに砂漠の暑さにバテて食欲が減ったという様子も無いし、言う通りに食べてしまえるだろうな。
「ならよかった。出来るまでもう少しかかるから、テントで涼んでてもいいぞ?」
「ううん。出来るまでここで待つよ。食べたら一緒にテントで涼もうね」
そんな風に魔力の消費でだるいだろう体を休ませずに一緒にいてくれるのは、果たして炎天下で調理をする俺に対する気遣いなのか、それともただ単に料理が待ち遠しいだけなのか一体どっちなんだい?
前者だったら嬉しいことだが。
出来上がるまで暇なパーラはようやくフライパンから目線を外して船の外に広がる景色を眺めはじめた。
すっかり見慣れた景色ではあるが、それでも時折無性に遠くまで見通せるこの光景に惹かれるのは俺にも分かる。
俺はフライパンに、パーラは景色にと集中していると、不意にパーラが縁に身を預けるようにしてその上半身を船の外へと突き出す。
「こら、パーラ。危ないからやめなさい」
「ねぇアンディ、あれなんだろ?」
乗り出した身が危険であることを注意する俺の言葉に間髪を入れずに帰ってきたパーラの言葉に引かれ、フライパンを手にしながら同じ目線を辿ってみる。
「あれってどれだ?」
「あそこ。ほら、岩場のとこ」
パーラが指さす先には遠くに霞むようにして岩場がある事だけはわかるが、正直それ以外に何か異変を感じることは無い。
もしかしたらパーラの視力が俺よりも上なせいかと思って目に強化魔術を使おうとするが、それよりも早くテントに置いてあった銃からスコープを外して持ってきたパーラが岩場にその先を向けた。
正直料理が未完成のため、そちらに集中したい俺としては、パーラが感じた異変の正体は彼女自身に突き止めてもらってから俺に教えてくれるだけで十分だ。
「…魔物だ。すごく大きい。けどなんか蹲ってる?」
「魔物?どんな奴だ?サソリか蛇か…鳥って線もあるな」
思い付いたままをボソリと呟いているパーラに、更なる情報の精度を求めてみる。
砂漠地帯で昼間の暑い時間帯に動く魔物というのはそれほど多くない。
先に挙げた3種類の系統の魔物が殆どなので、恐らくそのどれかだと思われる。
「違うよ。なんか白くてノッペリした感じの体で、足が四本あるやつ」
「…なんだと?ちょっと貸せ。フライパン頼むわ」
「え、あちょっとっとと。もう!危ないってば!」
パーラの言葉に俺は一瞬で頭が冷えていくのを覚え、ひったくる様にしてスコープとフライパンを交換する。
半ば放り投げる形でフライパンを任せたパーラから抗議の言葉が飛び出すが、今はそれに構っている暇が惜しい。
そのままスコープを覗きながら件の魔物がいると思われる岩場を探してスコープを動かし、そして見つけた。
全体的に病的な白さを纏うその姿は、四足歩行の姿勢で岩場に頭を突っ込んでいる形だ。
シルエットだけで見るならヤモリのようなものだが、とんでもなく巨大な体がヤモリとは全く別の生き物だと断定させる。
白い尻尾を左右に振るようにしてさらに前に進もうとしているようだが、体はその意に反して留まったままだ。
「…ドレイクモドキだ」
「ホフホフ…ンン、なにそれ?」
俺の横に立ちながらそう言うパーラの口調は、何か口に物を含んでいるような感じだ。
「あ、お前何食ってんだよ」
スコープから目を離した俺の目に映ったのは、フライパンを左手にフォークを右手に持って、出来上がりかけの料理を突くパーラの姿だった。
「いいじゃん。もう十分出来てたんだから。それよりもドレイクモドキってなんなの?」
口をモグモグとさせながらドレイクモドキについての説明を求めるパーラは、なおも食事の手を止めることは無い。
そのペースでいかれると俺の分は残らないかもしれないという危機感を覚える。
頼むから一人で全部食べないでくれよ?
ドレイクモドキというのはこの砂漠において、頂点に存在する魔物だ。
以前討伐をしたアプロルダとは近似種なのだが、食物連鎖のピラミッドで見ればこのドレイクモドキの方が上になる。
名前にモドキとあるのは、ドレイクという羽の無い赤肌のドラゴンとよく似ているせいで、特に早朝や夕方の赤い日の光に照らされると、白い皮膚が赤く燃えるように見えてドレイクと見間違えるほどだという。
もっともドレイクは砂漠地帯には存在しないので、このモドキというのもあくまでも学術名的な付け方に過ぎない。
だが人間からしたらドレイクだろうがモドキだろうが危険な生き物には変わりない。
見た目はあの通り保護色などと無縁のものだが、それは絶対的強者であるがゆえに隠れる必要性がないため、自然環境へのみ適応した体へと進化したからだ。
あの白の体色は暑い日差しを和らげるための物で、たとえそれで目立ってもむしろ餌が向こうから来てくれてありがたいぐらいだろう。
基本的に雑食性であるが、空腹時には目の前で動くものであれば何でも食べるという悪食さは、アプロルダもそうだったように、過酷な環境で生き抜くために必然的に備わった習性だと言えよう。
このドレイクモドキの危険度をギルドの基準で表すと赤4級相当だが、これはこの魔物の強さに加えて砂漠という環境が加味されて割り出されたものだ。
魔物の戦闘能力もさることながら、かかる手間と環境の過酷さから討伐には非常に時間がかかると言われている。
俺も砂漠での危険な魔物として聞いた程度の知識しかないため、これぐらいしか分かることは無い。
しかしどうやら何も知らなかったらしいパーラはしきりに感心したように頷いている。
「そんなに危ないなら無視した方がいいね。幸いにも私達の船の進行方向とは被らないから大丈夫だろうけど」
避けえる危険であることに安堵した様子のパーラだが、俺は頭の中でこの船が寄る町の位置が思い浮かび、その希望的観測の通りにはいかないことに気付く。
「いや、そうもいかない。確かに今の航路はドレイクモドキから離れるものだけど、次の寄港地から出る時に辿る航路はあの岩場に大分近付くはずだ。その時にまだあの岩場にドレイクモドキがいたらまずいことになるだろう。…とりあえず船長にこのことを教えた方がいい。パーラ、頼めるか?俺はもうしばらくあいつを見てるからさ」
安堵から緊張感の籠った顔に変わったパーラは、俺の頼みに大きく頷きを返す。
「うん、わかった。すぐに食べちゃうから」
「いや、飯は後にしてすぐに行ってくれよ」
真剣な顔でフライパンに向き直ったパーラを急かしてなんとか船長の元へと伝令に行かせる。
その際に何度も置かれたフライパンを振り返る仕草を見せるが、そこまで食い意地の張ったパーラに俺は頭を抱えたくなった。
…そんなにおいしいのか?
いや、出来は気になるが、今はそれよりもあいつを見張ることが先だな。
フライパンに集中しそうな意識を引きはがすようにしてスコープへと目を押し付け、未だに岩場でもがくドレイクモドキへと監視の視線を送る。
それにしても、あの魔物は一体何をしているのだろうか?
餌でもあるのか?
いや、岩場にあんな姿勢で張り付いてまで一つの餌に拘ることは無い。
食らいつくのが無理だと判断したら諦めるぐらいの知性はあるという話だし。
謎だ。
スコープ越しに左右に振られるしっぽだけを視界に捉えながら待つことしばし。
パーラの言葉を聞いた船長が一時的に船足を止めたおかげで監視が容易になり、件の魔物の動きに警戒をする俺に並ぶような形で、甲板上には俺とパーラ、船長とその副官に何人かの船員が揃ってドレイクモドキのいる方向へと強張った表情を向けていた。
流石に船で働く彼らは視力が弱いこともなく、全員がスコープを使うまでも無くドレイクモドキの姿を確認できているようだ。
「…確かに次の出発であの岩場に近付く時に襲われる可能性があるな。よく知らせてくれた。知らずに見落としていたかもしれない危険を推してくれたことに船を代表して礼を言う。あとは我々で対応を考える。君達は船の旅を楽しんでくれ」
パイプ煙草が似合いそうないぶし銀の船長に感謝の言葉を貰い、船員達も俺とパーラを褒める言葉をかけるのを背中に受けながらテントへと戻る。
テントに入るなりパーラが不満そうな顔で口を開く。
「いいのかな…。私達があいつを見つけたんだから、手伝った方がいいんじゃない?」
「やめとけって。俺達はただの客だぞ?船の運航上の危険に関わることに首を突っ込むことはしないほうがいい。何よりも長年砂漠を行き来している船の人間が対応するってんだから俺達にできることなんかないだろ」
餅は餅屋、よそはよそ、うちはうちということわざがあるぐらいだしな。
…ん?後ろのはことわざだったっけ?…まあどっちでもいいや。
「…もしかしたら次の停泊地で少し長く留まることになるかもな」
「なんで?」
「さっき船長が言ってたろ?『我々で対応を考える』って。あの言い回しってのは要するに今は解決法がないって言ってるのと同じだ。討伐にしろいなくなるのを待つにしろ、すぐに事態が動くことはないと思う。だから停泊が長くなるって話だ」
「あぁ、そっか。なるほどね」
納得いったとばかりに腕を組みながら頷くパーラ。
ドレイクモドキが去るのを待つなら停泊期間を延ばせばいい話だが、乗客の中には先を急ぎたい商人もいることだろう。
そう言った人達から強く要請されれば、船主側としてはドレイクモドキの討伐も視野に入れたアクションを起こす必要がある。
赤4級の魔物を討伐となると準備と実行にかかる時間はそうとうなものになるはず。
動員されるのも恐らく冒険者や傭兵を主体とした混成部隊が考えられる。
俺もパーラも冒険者であるし、俺なんかは白3級という、ルーキーから片足を踏み出しているようなランクなので、とにかく数を揃えたいという思惑が働いた場合、討伐の際に参加要請はくるかもしれない。
これから船が着く街にも常駐する騎士団はあるが、その騎士団は街の守りのためにあるのであって、船の航行の危険を積極的に取り除くという役目にはない。
もちろん全く聞いてもらえないというわけではないが、街の安全と秤にかけた上で決定されるとなればどうしても戦力を街から離す討伐に戦力を十分に回してもらえないだろう。
素直にドレイクモドキが立ち去るのを待つのが一番いいと思うが、一体どうなることやら。
停止状態からゆっくりと動き始めた船の揺れに身を委ねるようにして軽く目を瞑ると、知らずに溜息が出る。
優雅な船旅のつもりが、なんだか雲行きが怪しくなってきているようだ。
実際の空はこんなに晴れているというのに。
もう一度吐き出された溜息は、先程よりも大分重いものとなった。
「…どうしたの?さっきから溜息ばっか」
「ん、いやさ、ドレイクモドキを討伐って話になったら俺にも話は来るんだろうなーって」
「そうだねぇ。アンディは白3級だし、魔術師だからそうなるかもね」
「砂漠で攻撃用に使えるってなると雷と土の2つだけだし、正直不安はある」
「2つも使えれば十分だと思うけど…。大丈夫だって。もしそうなっても私も一緒だしさ」
「え…お前来る気でいるの?」
「む!何その言い方!私はパーティの一員でアンディの相棒だよ?一緒に行くのは当たり前でしょ」
何やらパーラの中では俺の相棒の位置にいるのは彼女だということになっているようだ。
まあ別に嫌なわけじゃないが。
「けどお前まだ黒級だろ?参加要請は来ないんじゃないか?」
「とにかく人を集めようってんなら私にも来るでしょ。まぁ要請が来なくってもアンディのパーティだって言えばついていけるって」
確かに、大人数での討伐となれば、要請が来ている者が所属するパーティメンバーの参加は出来るだろう。
何人もというのは無理でも、自分の補佐とでも言えばパーラ一人ぐらいは連れて行ける。
正直、危険な討伐となる場所にパーラを連れて行くのは気が進まないが、俺と連携が取れる魔術師というのはパーラ以外に適任はいない。
危険から遠ざけたいという思いと、命を預けれる相棒と戦いに赴きたいという葛藤はある。
そんな思いを感じたのか、俺を見るパーラの目は真剣そのものだ。
兄の敵討ちの旅に出るときに見せたこの目をしたパーラの意思の強さはよくわかっている。
「…わかったよ。もし要請が来たら一緒に行こうぜ、相棒」
俺が折れる形でその時になった際の同行を認め、握った拳をパーラの顔の高さに持っていく。
「うん!一緒に!」
嬉しそうな声で返事をすると、差し出された拳にパーラも自分の拳をコツンと当てる。
ちょっとした儀式のようなものだが、こうすることでパーラと本当の相棒になった気にさせるのだから人の心というのは単純なものだ。
こうしするとなんだかヘクターの敵討ちに出る時を思い出す。
あの時はこんな拳を合わせるみたいなことはしなかったが、それをしなくても気持ちは一つになってたな。
まださほど時間は経っていないはずなのに、少し懐かしいと思えるのはそれだけ密度の濃い時間を過ごしたからか。
「けど、あくまでも参加要請が来たらな?来ないならそれに越したことは無いんだからよ」
「今の決意のやり取りに水を差すのやめて」
眉をひそめて不機嫌そうなパーラ。
でも仕方ないだろ。
なんだか討伐前提で話をしてたから、一応釘を刺して置かないとな。
おまけに俺達は個室同然のテントに冷房を備えているとなれば、この世界でも随分と優雅な過ごし方をしていると言えるだろう。
ただそんなテントだが、今はパーラが出稼ぎに行っているため、冷房は気化冷却を利用したものしか動いておらず、いささか暑さが気になってしまう。
慣れとは恐ろしいものだ。
パーラの出稼ぎというのは、彼女の風魔術を使った出張冷房サービスのことだ。
一等客室にいる貴族や大物商人などは自前で風魔術師を連れていることも多いが、大部屋にいる一般客には必ずしも風魔術師がいるとは限らない。
本来であれば風魔術師を何人か船主側が用意するのだが今回はたまたま人数が足らず、船に乗る風魔術師を船の帆に風を送る役目に割り振ってしまった分だけ大部屋の環境は辛いものとなっているそうだ。
勿論乗客達はただ暑さを我慢するだけではない。
大部屋には桶や樽を縦に切って横にした浴槽のようなものまで持ち込まれており、あまりの暑さに耐えきれなくなった人がそこで水浴びをするというのがよく見られるという。
一応水はけはちゃんと考えられており、床に落ちた水はそのまま船倉にある動物たちのエリアに導かれ、飲み水として利用されるという徹底ぶりは、むしろこれを想定しているのではないかと思わせるぐらいだ。
当然ながら大部屋には十分な数の換気窓はあるのだが、砂漠の風というのは直接引き入れるには暑すぎる。
通常は船に設けられた金属製の通気口を通すことで若干冷やされた空気が流れてくるのだが、これもそれほど涼しい風になるわけでもなく、どうしても水を多く使って体を冷やそうとするらしい。
船に積まれた水は常識的な範囲であれば無料で提供されるが、それでも無限にあるわけではないため、なるべくなら節約したいのが船主側の思惑だ。
そこで急遽風魔術が使える人間としてパーラに航海の間、大部屋で冷房の魔術を使う時間を設けて欲しいと船長から頼み込まれてしまった。
一応ギルドからの依頼という形にしてくれたので、ただじっと船の上で大人しくするだけだった時間が、パーラの昇格の評価点として稼げる時間へと変わったのは嬉しい誤算だろう。
もっとも依頼はパーラ個人へのものなので、俺にはギルドの評価も報酬も入らないがこればかりは仕方ない。
パーラの使う冷房の魔術は普通の魔術師が使うのよりもどういうわけか効果が強い為、大部屋であっても十分に冷やすことが出来て乗客に非常に喜ばれている。
おかげでパーラは船の中ではちょっとしたアイドル並みの人気者となっていた。
なにせ快適な環境を提供してくれる上に愛嬌もある。
年寄りの商人なんかには特に孫のように可愛がられており、しょっちゅう貰ったおやつ的なものを食べながら帰ってくるほどだ。
船の中で人々に貢献するパーラ、特にできることも無いのでテントで装備類の整備に励む俺という図式となっていた。
砂漠の俺、超無力。
既に船上生活も三日目に突入している。
この間の食事等は別料金を払うことで船側から提供してもらえるが、大体の乗客は自分達で持ち込んだものを食べて過ごしていた。
それは一頭客室に泊まる客も同様で、なにせ船で提供される食事というのは払う金額に見合わないほどにまずいらしい。
甲板をはじめとして、船内では基本火気厳禁であるため、調理場を借りて調理をする必要があるが、正直揺れる船で料理を作るというのは慣れが必要だ。
なのでせいぜいが簡単なスープを作るぐらいで本格的な料理というのはまず作られることはない。
むしろ船が途中で荷物や乗客を降ろすために立ち寄る街などで出来合いの料理を買い込むのが賢いやり方だろう。
一方、俺達はどうしているかというと、実は普通に調理道具を使って料理していた。
勿論火は熾していない。
ではどうやって調理をするかというと、なんのことはない。
単純に直射日光でフライパンを温めて加熱に使っているだけだ。
勿論これだけでは火力不足だ。
そこで登場するのが俺の雷魔術である。
俺が使っている剣は、電気の抵抗値の高さから電流を流せばそれだけで熱を持ち始める。
この上に予熱済みのフライパンを乗せるだけでアッと今にアツアツまで持っていけるというわけだ。
要は電気コンロを再現しているわけだが、なんだかこの剣は攻撃に使うよりもお湯を沸かしたりコンロ代わりにと、こういう使い方の方が出番が多い。
もしかしたらこのやり方は今後の野営時にも使えるかもしれないな。
昼の暑い日差しの下、俺とパーラの分の調理に勤しんでいると、船員や乗客の一部がこちらを見ているのに気付く。
恐らく甲板で調理をしている姿が珍しいのだろう。
普通は火気厳禁の場所で料理など言語道断だが、生憎俺は火を使っていない。
ただ熱で料理をしているだけだ。
火の姿が欠片も無いので文句を言われることも無い。
まぁ原理を知らないので文句の言いようがないというだけだが。
電熱調理器具は完璧に安全というわけではないが、今この現象は俺の魔術の制御下にあるため、危険を感じたらすぐに発動を取り止めればいいだけだ。
いわば俺が安全装置だ。
昼食を作っていると、午前の仕事を終えたパーラが船室へと続く扉から姿を現し、しばしその場で鼻をひくつかせて匂いの元を探る仕草を見せ、その発生源である俺の姿を見つけると嬉しそうに小走りで駆け寄って来た。
「ただいまー!あ~お腹減った~…。今日のお昼って何?」
俺の隣へとしゃがみこみながらフライパンを覗き込むパーラだが、目の前の料理の完成を待ちきれないかのように少しだけその眼はギラついている。
「お帰り、お疲れさん。昼は朝のパンの残りでサンドイッチにしたのと、昨日立ち寄った町で手に入れた干し果物と干し肉のオイル煮だ。少し重めになるけど大丈夫か?」
「大丈夫大丈夫。アンディの作る料理は絶品だからね。いくらでも食べれるよ」
まぁ確かに砂漠の暑さにバテて食欲が減ったという様子も無いし、言う通りに食べてしまえるだろうな。
「ならよかった。出来るまでもう少しかかるから、テントで涼んでてもいいぞ?」
「ううん。出来るまでここで待つよ。食べたら一緒にテントで涼もうね」
そんな風に魔力の消費でだるいだろう体を休ませずに一緒にいてくれるのは、果たして炎天下で調理をする俺に対する気遣いなのか、それともただ単に料理が待ち遠しいだけなのか一体どっちなんだい?
前者だったら嬉しいことだが。
出来上がるまで暇なパーラはようやくフライパンから目線を外して船の外に広がる景色を眺めはじめた。
すっかり見慣れた景色ではあるが、それでも時折無性に遠くまで見通せるこの光景に惹かれるのは俺にも分かる。
俺はフライパンに、パーラは景色にと集中していると、不意にパーラが縁に身を預けるようにしてその上半身を船の外へと突き出す。
「こら、パーラ。危ないからやめなさい」
「ねぇアンディ、あれなんだろ?」
乗り出した身が危険であることを注意する俺の言葉に間髪を入れずに帰ってきたパーラの言葉に引かれ、フライパンを手にしながら同じ目線を辿ってみる。
「あれってどれだ?」
「あそこ。ほら、岩場のとこ」
パーラが指さす先には遠くに霞むようにして岩場がある事だけはわかるが、正直それ以外に何か異変を感じることは無い。
もしかしたらパーラの視力が俺よりも上なせいかと思って目に強化魔術を使おうとするが、それよりも早くテントに置いてあった銃からスコープを外して持ってきたパーラが岩場にその先を向けた。
正直料理が未完成のため、そちらに集中したい俺としては、パーラが感じた異変の正体は彼女自身に突き止めてもらってから俺に教えてくれるだけで十分だ。
「…魔物だ。すごく大きい。けどなんか蹲ってる?」
「魔物?どんな奴だ?サソリか蛇か…鳥って線もあるな」
思い付いたままをボソリと呟いているパーラに、更なる情報の精度を求めてみる。
砂漠地帯で昼間の暑い時間帯に動く魔物というのはそれほど多くない。
先に挙げた3種類の系統の魔物が殆どなので、恐らくそのどれかだと思われる。
「違うよ。なんか白くてノッペリした感じの体で、足が四本あるやつ」
「…なんだと?ちょっと貸せ。フライパン頼むわ」
「え、あちょっとっとと。もう!危ないってば!」
パーラの言葉に俺は一瞬で頭が冷えていくのを覚え、ひったくる様にしてスコープとフライパンを交換する。
半ば放り投げる形でフライパンを任せたパーラから抗議の言葉が飛び出すが、今はそれに構っている暇が惜しい。
そのままスコープを覗きながら件の魔物がいると思われる岩場を探してスコープを動かし、そして見つけた。
全体的に病的な白さを纏うその姿は、四足歩行の姿勢で岩場に頭を突っ込んでいる形だ。
シルエットだけで見るならヤモリのようなものだが、とんでもなく巨大な体がヤモリとは全く別の生き物だと断定させる。
白い尻尾を左右に振るようにしてさらに前に進もうとしているようだが、体はその意に反して留まったままだ。
「…ドレイクモドキだ」
「ホフホフ…ンン、なにそれ?」
俺の横に立ちながらそう言うパーラの口調は、何か口に物を含んでいるような感じだ。
「あ、お前何食ってんだよ」
スコープから目を離した俺の目に映ったのは、フライパンを左手にフォークを右手に持って、出来上がりかけの料理を突くパーラの姿だった。
「いいじゃん。もう十分出来てたんだから。それよりもドレイクモドキってなんなの?」
口をモグモグとさせながらドレイクモドキについての説明を求めるパーラは、なおも食事の手を止めることは無い。
そのペースでいかれると俺の分は残らないかもしれないという危機感を覚える。
頼むから一人で全部食べないでくれよ?
ドレイクモドキというのはこの砂漠において、頂点に存在する魔物だ。
以前討伐をしたアプロルダとは近似種なのだが、食物連鎖のピラミッドで見ればこのドレイクモドキの方が上になる。
名前にモドキとあるのは、ドレイクという羽の無い赤肌のドラゴンとよく似ているせいで、特に早朝や夕方の赤い日の光に照らされると、白い皮膚が赤く燃えるように見えてドレイクと見間違えるほどだという。
もっともドレイクは砂漠地帯には存在しないので、このモドキというのもあくまでも学術名的な付け方に過ぎない。
だが人間からしたらドレイクだろうがモドキだろうが危険な生き物には変わりない。
見た目はあの通り保護色などと無縁のものだが、それは絶対的強者であるがゆえに隠れる必要性がないため、自然環境へのみ適応した体へと進化したからだ。
あの白の体色は暑い日差しを和らげるための物で、たとえそれで目立ってもむしろ餌が向こうから来てくれてありがたいぐらいだろう。
基本的に雑食性であるが、空腹時には目の前で動くものであれば何でも食べるという悪食さは、アプロルダもそうだったように、過酷な環境で生き抜くために必然的に備わった習性だと言えよう。
このドレイクモドキの危険度をギルドの基準で表すと赤4級相当だが、これはこの魔物の強さに加えて砂漠という環境が加味されて割り出されたものだ。
魔物の戦闘能力もさることながら、かかる手間と環境の過酷さから討伐には非常に時間がかかると言われている。
俺も砂漠での危険な魔物として聞いた程度の知識しかないため、これぐらいしか分かることは無い。
しかしどうやら何も知らなかったらしいパーラはしきりに感心したように頷いている。
「そんなに危ないなら無視した方がいいね。幸いにも私達の船の進行方向とは被らないから大丈夫だろうけど」
避けえる危険であることに安堵した様子のパーラだが、俺は頭の中でこの船が寄る町の位置が思い浮かび、その希望的観測の通りにはいかないことに気付く。
「いや、そうもいかない。確かに今の航路はドレイクモドキから離れるものだけど、次の寄港地から出る時に辿る航路はあの岩場に大分近付くはずだ。その時にまだあの岩場にドレイクモドキがいたらまずいことになるだろう。…とりあえず船長にこのことを教えた方がいい。パーラ、頼めるか?俺はもうしばらくあいつを見てるからさ」
安堵から緊張感の籠った顔に変わったパーラは、俺の頼みに大きく頷きを返す。
「うん、わかった。すぐに食べちゃうから」
「いや、飯は後にしてすぐに行ってくれよ」
真剣な顔でフライパンに向き直ったパーラを急かしてなんとか船長の元へと伝令に行かせる。
その際に何度も置かれたフライパンを振り返る仕草を見せるが、そこまで食い意地の張ったパーラに俺は頭を抱えたくなった。
…そんなにおいしいのか?
いや、出来は気になるが、今はそれよりもあいつを見張ることが先だな。
フライパンに集中しそうな意識を引きはがすようにしてスコープへと目を押し付け、未だに岩場でもがくドレイクモドキへと監視の視線を送る。
それにしても、あの魔物は一体何をしているのだろうか?
餌でもあるのか?
いや、岩場にあんな姿勢で張り付いてまで一つの餌に拘ることは無い。
食らいつくのが無理だと判断したら諦めるぐらいの知性はあるという話だし。
謎だ。
スコープ越しに左右に振られるしっぽだけを視界に捉えながら待つことしばし。
パーラの言葉を聞いた船長が一時的に船足を止めたおかげで監視が容易になり、件の魔物の動きに警戒をする俺に並ぶような形で、甲板上には俺とパーラ、船長とその副官に何人かの船員が揃ってドレイクモドキのいる方向へと強張った表情を向けていた。
流石に船で働く彼らは視力が弱いこともなく、全員がスコープを使うまでも無くドレイクモドキの姿を確認できているようだ。
「…確かに次の出発であの岩場に近付く時に襲われる可能性があるな。よく知らせてくれた。知らずに見落としていたかもしれない危険を推してくれたことに船を代表して礼を言う。あとは我々で対応を考える。君達は船の旅を楽しんでくれ」
パイプ煙草が似合いそうないぶし銀の船長に感謝の言葉を貰い、船員達も俺とパーラを褒める言葉をかけるのを背中に受けながらテントへと戻る。
テントに入るなりパーラが不満そうな顔で口を開く。
「いいのかな…。私達があいつを見つけたんだから、手伝った方がいいんじゃない?」
「やめとけって。俺達はただの客だぞ?船の運航上の危険に関わることに首を突っ込むことはしないほうがいい。何よりも長年砂漠を行き来している船の人間が対応するってんだから俺達にできることなんかないだろ」
餅は餅屋、よそはよそ、うちはうちということわざがあるぐらいだしな。
…ん?後ろのはことわざだったっけ?…まあどっちでもいいや。
「…もしかしたら次の停泊地で少し長く留まることになるかもな」
「なんで?」
「さっき船長が言ってたろ?『我々で対応を考える』って。あの言い回しってのは要するに今は解決法がないって言ってるのと同じだ。討伐にしろいなくなるのを待つにしろ、すぐに事態が動くことはないと思う。だから停泊が長くなるって話だ」
「あぁ、そっか。なるほどね」
納得いったとばかりに腕を組みながら頷くパーラ。
ドレイクモドキが去るのを待つなら停泊期間を延ばせばいい話だが、乗客の中には先を急ぎたい商人もいることだろう。
そう言った人達から強く要請されれば、船主側としてはドレイクモドキの討伐も視野に入れたアクションを起こす必要がある。
赤4級の魔物を討伐となると準備と実行にかかる時間はそうとうなものになるはず。
動員されるのも恐らく冒険者や傭兵を主体とした混成部隊が考えられる。
俺もパーラも冒険者であるし、俺なんかは白3級という、ルーキーから片足を踏み出しているようなランクなので、とにかく数を揃えたいという思惑が働いた場合、討伐の際に参加要請はくるかもしれない。
これから船が着く街にも常駐する騎士団はあるが、その騎士団は街の守りのためにあるのであって、船の航行の危険を積極的に取り除くという役目にはない。
もちろん全く聞いてもらえないというわけではないが、街の安全と秤にかけた上で決定されるとなればどうしても戦力を街から離す討伐に戦力を十分に回してもらえないだろう。
素直にドレイクモドキが立ち去るのを待つのが一番いいと思うが、一体どうなることやら。
停止状態からゆっくりと動き始めた船の揺れに身を委ねるようにして軽く目を瞑ると、知らずに溜息が出る。
優雅な船旅のつもりが、なんだか雲行きが怪しくなってきているようだ。
実際の空はこんなに晴れているというのに。
もう一度吐き出された溜息は、先程よりも大分重いものとなった。
「…どうしたの?さっきから溜息ばっか」
「ん、いやさ、ドレイクモドキを討伐って話になったら俺にも話は来るんだろうなーって」
「そうだねぇ。アンディは白3級だし、魔術師だからそうなるかもね」
「砂漠で攻撃用に使えるってなると雷と土の2つだけだし、正直不安はある」
「2つも使えれば十分だと思うけど…。大丈夫だって。もしそうなっても私も一緒だしさ」
「え…お前来る気でいるの?」
「む!何その言い方!私はパーティの一員でアンディの相棒だよ?一緒に行くのは当たり前でしょ」
何やらパーラの中では俺の相棒の位置にいるのは彼女だということになっているようだ。
まあ別に嫌なわけじゃないが。
「けどお前まだ黒級だろ?参加要請は来ないんじゃないか?」
「とにかく人を集めようってんなら私にも来るでしょ。まぁ要請が来なくってもアンディのパーティだって言えばついていけるって」
確かに、大人数での討伐となれば、要請が来ている者が所属するパーティメンバーの参加は出来るだろう。
何人もというのは無理でも、自分の補佐とでも言えばパーラ一人ぐらいは連れて行ける。
正直、危険な討伐となる場所にパーラを連れて行くのは気が進まないが、俺と連携が取れる魔術師というのはパーラ以外に適任はいない。
危険から遠ざけたいという思いと、命を預けれる相棒と戦いに赴きたいという葛藤はある。
そんな思いを感じたのか、俺を見るパーラの目は真剣そのものだ。
兄の敵討ちの旅に出るときに見せたこの目をしたパーラの意思の強さはよくわかっている。
「…わかったよ。もし要請が来たら一緒に行こうぜ、相棒」
俺が折れる形でその時になった際の同行を認め、握った拳をパーラの顔の高さに持っていく。
「うん!一緒に!」
嬉しそうな声で返事をすると、差し出された拳にパーラも自分の拳をコツンと当てる。
ちょっとした儀式のようなものだが、こうすることでパーラと本当の相棒になった気にさせるのだから人の心というのは単純なものだ。
こうしするとなんだかヘクターの敵討ちに出る時を思い出す。
あの時はこんな拳を合わせるみたいなことはしなかったが、それをしなくても気持ちは一つになってたな。
まださほど時間は経っていないはずなのに、少し懐かしいと思えるのはそれだけ密度の濃い時間を過ごしたからか。
「けど、あくまでも参加要請が来たらな?来ないならそれに越したことは無いんだからよ」
「今の決意のやり取りに水を差すのやめて」
眉をひそめて不機嫌そうなパーラ。
でも仕方ないだろ。
なんだか討伐前提で話をしてたから、一応釘を刺して置かないとな。
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