私のこと好きだったの?

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会わない!

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「さっきの話に戻るけど、貴族ではないなら爵位があって王族に嫁いでも恥ずかしくない家のご令嬢を選んだらいいのにね」
「いるにはいる。お前や第二王子と歳の近い令嬢はな」

「確か、公爵家や侯爵家、伯爵家にいましたっけ」


 王子に嫁げる最低ラインは伯爵家以上の令嬢。男爵家以下だと特別な能力が求められる。


「管理長は貴族位を賜ってないからといって平民ではないですからねえ。マルティーナちゃん王子様に興味ある?」
「ない!」


 誰に聞かれても王子様に興味はない。面食いの気があるのは認めるけど、一度でも関わったら絶対に面倒くさそうだもん。


「ないんだ。そういうところは管理長の娘らしいなあ」
「他人の心配よりお前の心配をしろ。今年で二十五だろ。婚活しろよ」
「より取り見取りなのに魔法で子供を作った管理長にだけは言われたくない……!」


 年齢を暴露されたスレイさんは違う意味で涙目になりお父様を詰っていたが、すぐに深く肩を落とした。身形を整えれば爽やかな好青年に変身するらしいが多忙な日々を送っているせいでその余裕がないのだとか。


「スレイさんは貴族? 平民?」
「僕は伯爵家の出身です。家は兄が継ぎますし、姉や妹達も嫁いでいるので僕は自由にさせてもらっています」


 魔導研究所に毎年多額の寄付をする家でもあるらしく、お父様もスレイさんのご実家とは懇意にしているとか。


「実際問題、王家は第二王子殿下とマルティーナちゃんの婚約を諦めませんよ。マルティーナちゃんが王家に入れば、管理長っていう強力な後ろ盾が出来ますから」
「おれはごめんだっつうの。政治には極力関わらないと両親が王都にいた頃約束してる」
「その約束もマルティーナちゃんが生まれたもんで王家は無かったことにしたいんじゃないですか」
「はあ」


 大陸でも五本の指に入る魔法使いであり、王国でもお父様以上に強い人はいない。貴族でなくても身体に流れる尊き血は偽りようがない。


「一番の狙いはエルフの里との交流だろう」


 祖父が純血のエルフと言えど、お父様はハーフエルフ。その娘である私は……何だろう? 厳密に言うと私は人間じゃない。母親の胎内で育つべき受精卵は特殊な魔法石の中で育てられ、主な栄養はお父様の魔力を注がれた。
 エルフは他種族との交流を好まず、美しい湖や森を中心に集落を作って暮らしており、村の周囲には結界が張られエルフに認められた人達しか入れない。お父様は子供の頃何度か連れて行ってもらった事があり、エルフの里とも交流がある分、余計に王家は私という絶好のチャンスを逃したくないのだ。他種族と比べると高度な魔法や技術を持つエルフの知恵を手に入れられるまたとないチャンスを。


「もしも、私が第二王子殿下と婚約したいって言ったらお父様はさせてくれた?」


 あくまでももしもの話であって
 現実じゃない。なのにお父様は非常に嫌そうな声で私がそうしたいならと発した。うわ、本当に嫌なんだ。私もごめんだけど。王太子殿下には幼少期からの婚約者がいて仲睦まじいと有名。第二王子妃でも王族に嫁ぐのは違いなく、課せられる公務一つ一つに重い責任が乗る。私には無理だ。


「マルティーナちゃん格好いい男の子好き?」
「面食いだから好き!」
「そっかー。なら、第二王子殿下を一目見たら気に入っちゃうね」
「でもお父様より格好よくないなら好みじゃない」
「うわあ……管理長並といったら……うん、高位貴族にもほぼいないね」


 普段は黒眼鏡をしているお父様だが、ゆったりとしている時は外している。私はスレイさんにある事を聞いてみた。


「お父様の素顔を知っている人はいるの?」
「いるよ。僕もそうだし、責任者を任せられている職員は大体見たことあるよ。貴族だとどうだろう」
「社交界なんざ基本出ねえし、陛下や他の王族に会う時も大体掛けてる。殆どの奴等が知らねえよ」


 日常的に黒眼鏡を掛けている理由は、祖母に似たお父様は女の私から見ても綺麗であるが少々女性寄りの顔つきだ。女性顔なのを本人は気にして掛けているのかと昔訊ねたら、稀に会う祖父がお父様を見るなり祖母を思い出してしまう為、黒眼鏡を掛けるようになったのだ。


「お祖母様の肖像画があったら見てみたい!」
「なんだよ急に」
「お父様がどれだけ似てるか気になる」
「気が向いたらな」


 絶対後で忘れられるやつ。


「管理長、野暮用ってやつ済ませなくて良いんですか?」
「ああ。いつでもいいからな。マルティーナ、そろそろ帰るぞ」
「うん!」


 私を抱っこしたお父様は椅子から立つ。スレイさんにバイバイと手を振ったら返してくれた。転移魔法であっという間に屋敷に戻ると抱っこをされたまま邸内に。


「お帰りなさいませ旦那様、お嬢様」
「ああ」
「ただいま!」


 降ろされる事はなく、私はお父様に引き続き抱っこをされたまま書斎に連れて行かれ、大きな椅子に座ったお父様の膝の上に座らされた。


「ちょっとだけ真面目に聞くが王子に会うか? こっちもいい加減しつこくて苛々してるんだ」
「王子様に興味ないし、婚約者なんて私には要らないと思う。お父様がいてくれるもん」
「そうか」


 黒眼鏡を外し、テーブルに置くと私を抱き締めたお父様の背に手を回した。もっと大きくなったらちゃんと背中に手を回せるようになるかな。

 政略結婚によって受けられる利益を求め貴族は自身の子供達を優秀に、美しく、大切に育てる。私には当てはまらないだけ。


「絶対会わない。会う気ない!」
「そうか」
「国王陛下に命令されたらどうしよう」
「安心しろ。おれが阻止する。お前が会いたくないなら、お前の意思を尊重する。まあ、元々会わせる気がないけどな」


 お父様の言葉に安心すると途端に眠気に襲われた。子供なせいもあるけど急に眠くなることが多いなあ……。



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