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決心2

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 ラビラント家は代々クロレンス王家の忠臣と名高い。

【聖女】の生まれ変わりである少女を保護しない訳がない。

【聖女】は何時現れるか分からない。王国に平和と繁栄をもたらす者として崇められる存在。

 王家としてもミルティーを手放す訳にはいかないのだろう。


「帰ったら、お父様に話しましょう」


 レーヴとミルティー。
 第2王子と【聖女】

 お似合いだ。一目惚れをして、無理矢理婚約を結ばれた自分なんかよりも、相思相愛と名高いミルティーと結婚した方がレーヴも幸せだ。

 レーヴを好きな気持ちなら誰にも負けない自信はある。

 ……同時に、レーヴに最も嫌われている相手という自覚もある。

 レーヴに相応しい淑女に、妻になる為に励んだ日々が全て無駄になるとは言わない。

 これからに役立てたら良い。

 父オーンジュ公爵にレーヴとの婚約解消を言う。父の耳にもレーヴとミルティーの話は入っているだろうから。


「帰りましょう……」


 シェリは窓から離れ、その場を離れた。

 手には鞄を持ち、そのまま校門まで早足で向かった。

 今日は徒歩で帰りたいと伝えていて良かった。

 ゆっくり、自分の足で帰りたかった。




 時間を掛けて屋敷に戻ったシェリを、昔からの侍女が迎えてくれた。


「お帰りなさいませ、お嬢様」
「ただいま。お父様は?」
「書斎にいらっしゃいます」
「そう。お時間を頂けるか聞いてもらえる?」
「分かりました」


 シェリが用があると言えば、忙しくても時間を作ってくれる父だが、仕事の邪魔をしてまでは流石に遠慮したい。

 別の侍女と共に部屋に戻ると荷物を渡し、制服から普段着に着替えた。

 同時に先程の侍女が戻った。


「お嬢様。すぐに来るようにと」
「分かったわ。ありがとう」


 足取りは決して軽くない。

 これからレーヴとの婚約を解消してほしいと史上最大の我儘を言うのだから。

 そういえば、レーヴはシェリの我儘な所が大嫌いだと言っていた。シェリの我儘な一目惚れのせいで勝手に婚約を結ばれたから。

 でも、それももうすぐ終わる。

 書斎の前に立つと扉をノックした。中から返事を貰い、扉を開けた。「失礼します」と一礼したシェリは奥の書斎机に座ってお茶を飲む父フィエルテ・オーンジュの前に立った。


「お帰りシェリ」
「ただ今帰りました、お父様」
「どうしたんだ。話があると聞いたが」
「はい……」


 シェリは正直に話した。

 レーヴとの婚約を解消したいこと。【聖女】の生まれ変わりであるミルティーとレーヴが相思相愛で、ミルティーと結ばれる方がレーヴの為だと。フィエルテは難しい表情で話を聞いた。シェリが話し終えるとフィエルテは「シェリ」と真剣な声色で紡いだ。


「本気で言っているのかい?」
「本気です」
「レーヴ殿下との婚約はシェリが望んだことなんだよ?」
「っ……重々、承知しております。ですが、お父様もご存知の通り、わたしはレーヴ殿下に嫌われています。婚約者として扱われたことは1度もありません」


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