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王家主催のパーティー6

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     キョロキョロと顔を動かすのは都会が珍しい田舎者がする行い。最低限の動きで辺りに視線を這わせ、ヴェルデを探す。

 
「あ……あのっ」

 
 シェリに声を掛けたのはミルティーだった。
 真っ白なドレスに身を包み、瞳と同じ金色の花を模した髪飾りは非常に似合っていた。

 
「オーンジュ様っ……こ、こんばんは……あ」
「ゴホンッ……夜会の場でこんばんは、なんて言うのはあなたくらいよミルティーさん」

 
 幸い周囲に人は少なかったので、良くはないがこれ以上は何も言わないでおこう。

 
「どうしたのかしら。顔色が優れないわよ」
「あ……あの、王子殿下はどうなさったのです?」

 
 シェリも聞きたい。
 今夜は本来、レーヴとミルティーの婚約発表がある筈だったのに。肝心のレーヴが出席していないのだ。ミルティーの様子から、彼女もレーヴ欠席の理由を知らないとなると……
 チラリと上座へ目をやるもすぐにミルティーに戻った。

 
「さあ……わたしは何も」
「そ、そうですか……」
「……」
「……」

 
 他の場所へ行きたいのに、動く気配を見せるとミルティーが縋る様にシェリを見つめてくる。ヴェルデを探しに行きたかったのに、これでは探し辛い。
 無言の空気が2人を包んでいるとミルティーが突然前に動いた。
 正確には、動かされた。
 思考が違う方向へ行っていたシェリが反応するのが遅れ救助は間に合わず、ミルティーは前方へ転けてしまった。

 
「あらごめんなさい。辛気臭い髪をした方がいるからつい邪魔で」

 
 よりにもよって面倒な相手が来たと内心舌を打ちたくなった。
 アデリッサ・ナイジェル公爵令嬢。

 ふんわりとしたピンクの髪、大きな栗色の瞳を持つ小柄で愛くるしい見た目の彼女だが性格はシェリも苦手意識を抱く程最悪だ。
 特に、ナイジェル公爵とオーンジュ公爵の仲の悪さは有名だ。
 それが子供にも伝染し、会う度に険悪な雰囲気を漂わせた。

 自分に嫌がらせをするのは構わないが無関係なミルティーに手を出すとは最低だ。アデリッサがミルティーに快くない感情を抱いているのは知っている。
 彼女もまた、レーヴに好意を抱く女性だ。
 レーヴとミルティーの仲の良さをアデリッサが知らない筈がない。

 ミルティーを起こしたシェリは挑発的な笑みを見せた。

 
「あらアデリッサ様。視力の老化現象が始まっているのでは? ミルティー様の髪が辛気臭い? メルヘンな髪をしたアデリッサ様よりマシでしてよ?」
「っ!」

 
 本人が気にしている髪色を指摘してやれば、愛らしい容姿からは駆け離れた恐ろしい相貌で睨まれるもシェリが堪える様子はない。
 立たせてもらったミルティーはおろおろとシェリとアデリッサを見やる。

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