行動あるのみです!

文字の大きさ
24 / 81

王家主催のパーティー7

しおりを挟む
 


 不穏な気配を漂わせるシェリとアデリッサ。おろおろとするミルティー。周囲の目が段々と集まってくる。いくら犬猿の仲といえど、公の場で醜態を晒す前はアデリッサもしない。どちらかが引けばいいだけ。こうしている間にも時間は過ぎていく。ヴェルデとの約束があるシェリは挑発するように鼻で笑った後「ではごめんあそばせ」とミルティーを連れてその場を離れた。悔しげに歯を噛み締めるアデリッサには十分伝わった。
 貴方の相手をしている暇はわたしにはない、と。
 ミルティーを連れたのもそれを誇示するため。
 アデリッサが見えない場所まで行くとシェリは歩みを止めてミルティーに振り向いた。


「ここまで来たら彼女も追って来ないわ」
「は、はい、ありがとうございます!」
「では、わたしはこれで失礼するわ」
「オーンジュ様はこの後どうされるのですか?」
「友人を探します。約束しておりますので」
「そ、そうですか。すみません、引き止めてしまって……」


 何故か落ち込んだミルティーはとぼとぼと人混みの中へ消えていった。アデリッサの件があるので彼女が誰かといるのをきちんと確認して、シェリも行動を始めた。
 グラスを片手に会場内を歩くもヴェルデの姿がない。テラスにいのかと足を運んでも姿はない。彼も忙しい人だ、ダンスの約束も絶対ではない。
 歩き回ったせいで少々疲れたシェリは疲れた招待客が休憩するための長椅子に腰を下ろした。持っていたグラスを口元へ運んだ。炭酸水に絞ったグレープフルーツが注がれた飲み物はシェリの口内を存分に潤してくれた。レーヴ欠席の訳を1人をいいことに考えてみた。

 ……何も、答えは出なかった。
 クロレンス王立学院内で何度もミルティーと仲睦まじげに会話をするレーヴを見掛けた。婚約者は自分なのだからとレーヴにミルティーと話さないでと訴えることだって……そこまで考えて、シェリは首を軽く振った。


「我儘で嫉妬深い女なんて……嫌われる行動をする選択肢しかないじゃない」


 何をレーヴにしても嫌われる要素にしかならない。
 とことん、自分の運の無さに嘆きたい。
 弱気になるなとシェリは飲み物を一気に飲み干した。炭酸が喉を通って痛く感じたが爽快感があり、うじうじと悩むシェリを前へ押し出した。


「これからは新しい婚約者の方と良好な関係をどう築けるかだけ考えましょう」


 レーヴの欠席は好機だと思わなくては。
 よし、と決意を新たにしたシェリは会場へ戻ろうと腰を上げた。


「オーンジュ嬢?」
「!」


 さっきまでシェリが探していた相手ヴェルデがひょっこりと姿を見せた。


「ヴェルデ様」
「良かった。会場にいらっしゃらなかったので探していました」
「ヴェルデ様こそ、会場にいらっしゃらなかったではありませんか」
「すみません。レーヴ殿下の不在がどうしても気になってしまい、王太子殿下に頼んで会いに行っていました」
「そうだったのですか」


 レーヴの友人ならと王太子も快くレーヴに会わせてくれた。


「殿下には会えたのですか?」
「少しだけ」
「お体の調子が悪いとか……?」
「いえ。全く、元気そうでした」


 ならば会場に姿を見せないのは何故?


「……オーンジュ嬢。その、約束していた通り僕と一曲踊っていただけますか?」
「ええ。勿論ですわ」


 レーヴ欠席の理由をヴェルデは語ってくれなかったが約束を果たせられただけで今は満足だった。
 会場に戻り、中心に行ってヴェルデとダンスを踊った。


「……ヴェルデ……様……」


 ホールの真ん中で踊るシェリとヴェルデを悲痛な面持ちで見つめるミルティーだった。
しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

チョイス伯爵家のお嬢さま

cyaru
恋愛
チョイス伯爵家のご令嬢には迂闊に人に言えない加護があります。 ポンタ王国はその昔、精霊に愛されし加護の国と呼ばれておりましたがそれももう昔の話。 今では普通の王国ですが、伯爵家に生まれたご令嬢は数百年ぶりに加護持ちでした。 産まれた時は誰にも気が付かなかった【営んだ相手がタグとなって確認できる】トンデモナイ加護でした。 4歳で決まった侯爵令息との婚約は苦痛ばかり。 そんな時、令嬢の言葉が引き金になって令嬢の両親である伯爵夫妻は離婚。 婚約も解消となってしまいます。 元伯爵夫人は娘を連れて実家のある領地に引きこもりました。 5年後、王太子殿下の側近となった元婚約者の侯爵令息は視察に来た伯爵領でご令嬢とと再会します。 さて・・・どうなる? ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

真実の愛は、誰のもの?

ふまさ
恋愛
「……悪いと思っているのなら、く、口付け、してください」  妹のコーリーばかり優先する婚約者のエディに、ミアは震える声で、思い切って願いを口に出してみた。顔を赤くし、目をぎゅっと閉じる。  だが、温かいそれがそっと触れたのは、ミアの額だった。  ミアがまぶたを開け、自分の額に触れた。しゅんと肩を落とし「……また、額」と、ぼやいた。エディはそんなミアの頭を撫でながら、柔やかに笑った。 「はじめての口付けは、もっと、ロマンチックなところでしたいんだ」 「……ロマンチック、ですか……?」 「そう。二人ともに、想い出に残るような」  それは、二人が婚約してから、六年が経とうとしていたときのことだった。

欲深い聖女のなれの果ては

あねもね
恋愛
ヴィオレーヌ・ランバルト公爵令嬢は婚約者の第二王子のアルバートと愛し合っていた。 その彼が王位第一継承者の座を得るために、探し出された聖女を伴って魔王討伐に出ると言う。 しかし王宮で準備期間中に聖女と惹かれ合い、恋仲になった様子を目撃してしまう。 これまで傍観していたヴィオレーヌは動くことを決意する。 ※2022年3月31日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。

婚約破棄の前日に

豆狸
恋愛
──お帰りください、側近の操り人形殿下。 私はもう、お人形遊びは卒業したのです。

白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる

瀬月 ゆな
恋愛
ロゼリエッタは三歳年上の婚約者クロードに恋をしている。 だけど、その恋は決して叶わないものだと知っていた。 異性に対する愛情じゃないのだとしても、妹のような存在に対する感情なのだとしても、いつかは結婚して幸せな家庭を築ける。それだけを心の支えにしていたある日、クロードから一方的に婚約の解消を告げられてしまう。 失意に沈むロゼリエッタに、クロードが隣国で行方知れずになったと兄が告げる。 けれど賓客として訪れた隣国の王太子に付き従う仮面の騎士は過去も姿形も捨てて、別人として振る舞うクロードだった。 愛していると言えなかった騎士と、愛してくれているのか聞けなかった令嬢の、すれ違う初恋の物語。 他サイト様でも公開しております。 イラスト  灰梅 由雪(https://twitter.com/haiumeyoshiyuki)様

【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。

るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」  色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。  ……ほんとに屑だわ。 結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。 彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。 彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。

忘却令嬢〜そう言われましても記憶にございません〜【完】

雪乃
恋愛
ほんの一瞬、躊躇ってしまった手。 誰よりも愛していた彼女なのに傷付けてしまった。 ずっと傷付けていると理解っていたのに、振り払ってしまった。 彼女は深い碧色に絶望を映しながら微笑んだ。 ※読んでくださりありがとうございます。 ゆるふわ設定です。タグをころころ変えてます。何でも許せる方向け。

真実の愛のお相手様と仲睦まじくお過ごしください

LIN
恋愛
「私には真実に愛する人がいる。私から愛されるなんて事は期待しないでほしい」冷たい声で男は言った。 伯爵家の嫡男ジェラルドと同格の伯爵家の長女マーガレットが、互いの家の共同事業のために結ばれた婚約期間を経て、晴れて行われた結婚式の夜の出来事だった。 真実の愛が尊ばれる国で、マーガレットが周囲の人を巻き込んで起こす色んな出来事。 (他サイトで載せていたものです。今はここでしか載せていません。今まで読んでくれた方で、見つけてくれた方がいましたら…ありがとうございます…) (1月14日完結です。設定変えてなかったらすみません…)

処理中です...