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ミエーレの誘惑2
しおりを挟む淡い期待を抱いてレ―ヴ救出の策を探るか、表面上の問題が起きていない現状は様子見を取るか。ヴェルデとミエーレの間では、最も怪しい従者の調査を行うのを先決と判断している。自身が下すべき判断は何か。
意識することなくミエーレを見た。深慮を彷彿とさせる深い碧。目元の隈と性格さえなければ、容姿だけなら物語に登場する完全無欠の王子様。
視線に気付いたミエーレの碧がシェリを視界に入れる。
「どうかした」
「気になったのだけど。わたしが殿下を第2王子殿下と呼んだ時の反応を見た?」
「うん」
「どうして、ショックを受けたみたいな顔をしたのかしら」
「元からあるシェリへの好意をアデリッサに向けられただけってさっき言ったろう? 土台となるシェリに他人行儀な振る舞いをされれば、心に影響を及ぼすんだ」
今までレ―ヴ殿下と呼んでいたシェリ。殿下、と呼ぶのもかなり勇気ある行動だった。シェリへの気持ちがあったからこそ、転換の魔法は大きく作用した。元となるシェリに他人行儀な振る舞いをされるだけであのように傷付くのなら、長年レ―ヴに一切口を利いてもらえず冷たい態度を取られ続けたシェリはどうなるのか。
レ―ヴの本心をミエーレは、ヴェルデは、知っているのだろう。知っていて話さないのはレ―ヴ本人から聞けというのか、それとも求めたら答えをくれるのか。
するとミルティーが「オーンジュ様に素っ気なくされて、殿下の心に揺さぶりをかけられるなら、そこから救出策を見出せないでしょうか?」と提案。
「いいかもね」とミエーレが乗った。
机に身を乗り出したミエーレがシェリにある案を示した。
「シェリ。どの道、シェリと殿下の婚約解消は済んだ。公に発表されるのも時間の問題だ」
「アデリッサの様子からして、大勢の人がいる場で婚約破棄をしてもらいたかったのでしょうけど」
「はは。違いない。
シェリ。殿下に揺さぶりをかけるって案はおれも賛成。だからこうしよう」
――おれとシェリの仲を殿下に見せ付けてやろうよ
予想外な提案にシェリは瞠目した。昔馴染みと知るレーヴが今更ミエーレとの仲を見せ付けたくらいで通用しない。もっと別の案をと言うも、これが最大の威力を発揮する方法だとミエーレも譲らない。
助けを求めるようにヴェルデを見ても苦笑され首を振られた。
「効果があると思えない……」
「おれを信じてよ。殿下の面白い顔が見れそうだしさ」
「あのね……」
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