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好意の方向は再び6

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 ミルティーから意識を失っている間の話を聞き終えたシェリは1つ息を零した。


「そう……」
「“転換の魔法”と“魅了の魔法”が王子に使われていたと公になるのは外聞が悪いと判断した王家とヴァンシュタイン家が徹底的に情報操作をして、今回の事件はナイジェル様生涯幽閉とナイジェル公爵家の多額の賠償金と一部領地没収で終わりました」
「多分だけど、オーンジュ家うちもある程度は関わってそうね」
「ラビラント伯爵家やラグーン侯爵家もですね」
「……殿下は?」


 “転換の魔法”を掛けられた者に解除方法はない。真相を知ったレーヴだが、心の方向を強制的に向けられたアデリッサが幽閉となれば、やはり正気でいられないのではと心配した。


「殿下は教会や魔法研究所で検査を受けました。“転換の魔法”の解除は不可能ですが、ナイジェル様に対する恋情が一切感じられないとのことです」
「そうなの?」
「はい。魔法で精神検査をしましたので間違いありません」
「アデリッサに無理矢理従者にされたマティアスは?」


 今回の“転換の魔法”は、魔法の才能に関してイマイチなアデリッサではなく、優秀な魔法師であるマティアスが作った。ライトカラー男爵令嬢マリーベルの従者だったが、主に危害を加えないのを条件に無理矢理アデリッサに従わされていた。王族相手に魔法を仕掛けた、これだけで十分重罪。しかし、彼には情状酌量の余地がある。可能なら罪を軽くしてやりたい。マリーベルとの約束もある。眠っている間に刑が決まってしまったのなら、もうシェリにはどうすることも出来ない。


「マティアスさんは、元々ナイジェル様に脅されて従者にされ、更に殿下に“魅了の魔法”を使えと命令されたのを“転換の魔法”に変えたことで死刑は免れています」


 “魅了の魔法”を命令通り実行していたら、庇えるものも庇えなくなっていた。


「ミエーレ様や殿下が陛下に掛け合って、マティアス様は魔法研究所の永久奉仕員になりました」


 罪を犯した魔法師を死ぬまで無償で魔法の研究を手伝わせる、ある意味過酷な刑の1つ。
 魔法研究所を纏めているのは元の主の家、ライトカラー男爵家。男爵はマティアスの事情を聞いて泣いていたと言う。男爵の下でなら、マティアスも不遇な目には遭わないだろう。


「ライトカラー男爵令嬢には、後日謝らないとね。マティアスの罪を出来るだけ軽くすると約束したのに」
「多分ですが大丈夫ですよ。マティアスさんは、逆に軽い刑に驚いていましたし、ライトカラー男爵令嬢もマティアスさんとまた一緒にいられると喜んでいました」


 罪人の刻印を刻まれているので生涯結婚は無理だろうが、後はあの2人の問題。
 アデリッサ以外、取り敢えず不幸にならなくて良かったと微笑んだシェリは、気まずげな顔をしたミルティーに首を傾げた。


「どうしたの?」
「いえ……あの……オーンジュ様は……その、殿下とは……これからどうするのですか?」
「……どうなるのかしらね」


 もう婚約は解消してしまっている。
 解消を告げたあの場では、少ないとは言え、何人かの生徒の耳には入ってしまっているかもしれない。
 外が騒がしくなった。シェリとミルティーが同時に扉に目を向けたと同時に、勢いよく扉が開かれた。


「シェリ!」


 ノックもなしに慌てて突撃をかましたのは丁度話題に上がった――


「レーヴ……様……」


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