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もしも逆のことを思っていたら?
しおりを挟む重い雰囲気を纏った2人と向かい合うように座ると話を切り出された。
お父様が最初に結婚したのは、私を産んだ母ミランダ=アルカンタル。伯爵であるお互いの父親同士の口約束で結ばれた婚約だったが小さい頃から交流を深めていき、結婚して私を授かった時は2人大喜びしたと語られた。けど、私の出産は難産だったらしく、お母様は私を産むと亡くなってしまった。生まれたばかりの赤子を抱き上げたまま呆然としていた父を立ち直らせたお祖父様やお祖母様は、喪が明けた後新しい妻を娶るよう勧めた。私が何も知らない赤子の内に新しい母親をと。
そこで白羽の矢が立ったのが名門カンデラリア公爵家の次女だった義母シェリア様だった。
領地が近いエーデルシュタイン伯爵領とカンデラリア公爵領は昔から交流があり。幼馴染のような関係を築いていたらしく、独身を貫く予定だったシェリア様が選ばれたのは自然の流れだったのかもしれない。
喪が明けて2人は入籍。身内だけの小さい結婚式を挙げた翌年エルミナが産まれた。
エーデルシュタイン家を継ぐのは私だとお父様は断言された。お義母様も力強く頷かれた。
『トロントは遅くに生まれた子だから、お母様が甘やかしてしまって……。私やお兄様が厳しくしていたせいで私達に反抗して他家を引っ掻き回すようなことを言っただけ。フィオーレ。伯爵家を継ぐのはあなたよ。私も旦那様もそれを望んでいるの』
『その通りだ。フィオーレもエルミナも、どちらも私の可愛い娘だが家を継いで欲しいのはフィオーレと決めている。トロント殿の言葉など気にしなくていい。私達には家族として過ごしてきた時間はある』
優しいから敢えて嘘を告げているとしたら? 伯爵家よりも、名門と名高い公爵家の血を引くエルミナが家を継ぐ方がいいと本当は思っていたら? 思っていて、私が可哀想だから諦めていたら?
何となくだが、違和感は感じていた。年に何度か親族と顔を合わせる機会があった。カンデラリア公爵家とエルミナは似ている部分が多いのに、私には全く無かった。私はお父様の血が濃いから、と皆微笑ましく紡ぐ内心嘲笑っていたとしたら、私は要らない子になる。
エルミナは勉強が得意じゃない。集中力が続かないとお義母様が偶に嘆いていたのは知っていた。自分が将来重要な地位に就く人間になると決まれば、あの子も責任感が生まれ勉強に力を入れてくれる筈。エルミナがやれば出来る子だと知っているから、確信を持てた。
黙っていた当時の私は不安げな面持ちで反応を窺う2人に微笑んだ。安堵の表情を見せた2人に告げた。
『お父様、お義母様。私を置いてて下さりありがとうございます。これからもご迷惑をお掛けすると思いますが、エーデルシュタイン家の恥にならぬよう、より精進して参ります』
安堵の顔をしたまま固まった2人を怪訝に思いながらも、綺麗にカーテシーを披露した私は退室したのだ。
この翌日、エーデルシュタイン家にだけ現れる『予知夢』の能力が開花した。
「明日から、どうリアン様とエルミナを会わせるか考えないと……!」
部屋に戻った私は、夕食の時間になるまでノートと睨み合った。
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