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リアン様に助けられて……
しおりを挟む……え?
どういう意味だろうとエルミナと顔を見合わせると殿下の声が更に高くなった。
「昨日、あなたとリアンが食堂にいたという目撃情報があるの!」
あ! それって。
私が弁解しようと口を開く前にエルミナが私の腕を握り声を出した。
「誤解です。昨日ロードクロサイト様といたのはお姉様を待っていただけです。決して、殿下が疑うような関係でもありませんし、気持ちもありません」
「お姉様?」
怒りと疑問に満ちた青水晶の瞳が私に移った。エルミナの手を離させ、背に隠すように立つ。
「フィオーレ=エーデルシュイタンと申します。リグレット王女殿下、ロードクロサイト様とエルミナがいたのは私がエルミナにあの場で待つよう告げたからです。元から2人っきりというわけではありません」
「ということは、リアンと最初から2人だったのはあなた?」
「……そうなります」
実際は、生徒会の手伝いに行ったアウテリート様の様子を見に行くオーリー様が、飲み物を購入しに食堂へ訪れたリアン様に私の話し相手になってほしいと頼んだだけ。リアン様が自分の意思で私といたんじゃない。
王女殿下の視線が益々険しくなった。
「リアンはわたくしの婚約者です! たかが伯爵令嬢如きが想っていい相手じゃないの! 身の程を知りなさい」
婚約者!? 『予知夢』では、エルミナへの婚約の打診をしているのにお父様が渋って返事を寄越さないってなっていた。現時点でリアン様に婚約者はいない。王女殿下と婚約しているのなら、とっくの昔に発表があってもいい。困惑としながらも王女殿下への対応は怠らない。
「申し訳ありません。殿下と婚約関係にあるとは存じ上げませんでした」
「当たり前だ。全てリグレットの出鱈目だ」
「え」
下手に刺激して敵に回すより、低姿勢を貫き穏便に事を済ます方がいい。何より、王女殿下の母君は陛下の愛人である男爵令嬢と身分は低いが寵愛を深く受けている。殿下自身も然り。殿下からの怒りを買えば、陛下の逆鱗にも触れると同等。
『予知夢』と現実の違いを思考するのは、この場を切り抜けてからと過ぎった直後。思いもしない声が横から飛んできたと思えば、私とエルミナの前に長身の男性が立った。紫がかった少し長い黒髪を耳にかけ、気遣わしげに此方を向いた眠そうな青水晶の瞳には鋭利さが含まれていた。
彼――リアン様は王女殿下と向き合うと低い声を発した。
周囲には人が集まっている上、遠くから見ている人もいる。
「リグレット。俺とあなたが何時婚約を結んだ」
「わたくしはずっと前からリアンと婚約したいとパパにお願いしているの! なのに、あなたのパパがいつまで経っても認めてくれないから」
「だから、人が多く集まるこの場で敢えて嘘を言ったと?」
「っ……」
容赦のないリアン様の冷たい声に涙が溜まっていく。
「父上にはあなたとの婚約の話が陛下から来ていると何度も聞かされている。断っているのは俺の意思を尊重してだ」
「どうしてよ、王女である私を妻に迎えれば、王家からの待遇が良くなるのよ?」
「王族だからと好きでもない女性を妻に迎える気はない」
「な……!」
真正面から躊躇なく放たれた好意の否定。大粒の涙を流す王女殿下を取り巻きの令嬢達が慰めるが意味はない。彼女の様子から察するにずっとリアン様が好きだったのだろう。でも、当のリアン様には相手もされず、好意とは真逆の感情を抱かれてしまった。
リアン様は泣き出してしまった王女殿下から私達の方へ向いた。
「リグレットに酷い事は言われなかったか?」
「いえ……私は。エルミナ、大丈夫?」
「はい。何かされた訳でもありませんし、途中でお姉様が庇ってくれたので」
「そう……。ありがとうございます、ロードクロサイト様」
お礼と共に頭を下げる。エルミナも私に倣うように同じ行動を取る。
「……いい。目立つから、校舎に入ろう」
リアン様に連れられ校舎へと向かう。
王女殿下の隣を通る際、彼女は期待するようにリアン様を見上げるも何事もないよう過ぎて行かれ、更に声を上げて泣き出した。
「お姉様……」とエルミナに呼ばれても首を振り、手を繋いで校舎に入った。
私達が声をかけても王女殿下にとっては侮辱。泣きながら攻撃されかねない。冷たくても無視をするのが1番。
「エルミナ!」
校舎に入ってすぐ、右の方向からエルミナを呼ぶ女子生徒が。名前らしき言葉を呟いたエルミナに「きっと心配しているのよ。行ってあげなさい」と手を離した。安堵の相貌を見せたエルミナは私とリアン様に軽く頭を下げ、友人の元へ行った。
するとリアン様が。
「フィオーレ嬢……」
「はい」
「……」
「?」
呼ばれたはいいものの、リアン様は言いたげな様子で私を見下ろしてくる。
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