思い込み、勘違いも、程々に。

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名前呼び

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 とても言いたげなのに一向に話さない。このまま立ち尽くすだけだと他の生徒の邪魔になる。リアン様が話してくれるのを待つか、私が教室に行きましょうと提案するべきか。


「ムルにも言われていたらあれなんだが……」


 リアン様が漸く話してくれた。
 移動しながら話そうと言われたのでリアン様の少し後ろに並んで話を聞いた。


「王族が代々生徒会を仕切るのは知っているな」
「はい。殿下から、女子生徒で誰か紹介してほしいと先日言われました」
「そうか……。リグレットは入学してからずっとあの調子みたいで。昨日、ムルはリグレットを生徒会から除籍した」
「え!?」


 余程のことがない限りは問題児といえど、生徒会での仕事は務めとして果たさないと仰られていたのはアウムル王太子殿下ご本人。その殿下が王女殿下の除籍を言い渡すのはつまり……。


「王女殿下の問題行動が原因でしょうか?」
「ああ……。陛下の寵愛深い愛人とその娘ってことで、かなり横暴に振る舞ってる。昔から」
「ロードクロサイト様は……」
「それ……家名じゃなくていい……名前でいい。……長いだろう」


 リ……リアン様を名前で……?
 長いと言われればそうだけど、エーデルシュタインも長い部類に入る。
 心の中で呼んでいた名前を声に発する……急激に顔の体温が集中して熱い。
 視線を感じたのでチラリと見上げれば、青水晶の瞳が伺うように私を見下ろしていた。リアン様の名前を呼ぶ、ただそれだけなのに恥ずかしさでどうにかなっちゃいそう……。


「リ…………リア……ン様は……王女殿下や王太子殿下と……親しかったですよね……」


 よ……良かった……言えた。


「……ムルとは幼馴染だ。王妃殿下は母上の妹だから、昔から王太子の遊び相手として王宮に連れて行かれた」


 ロードクロサイト公爵夫人と王妃殿下は元侯爵家出身。生家の名はノーラント。そう、アクアリーナ様の家です。アクアリーナ様は王妃殿下の姪という立場にあります。
 アウムル王太子殿下とリアン様が遊んでいる途中でリグレット王女殿下が割り込むようになったのが10歳の頃。


「ずっと離宮で愛人と暮らしていたが、王女の存在を周囲に認めさせたい陛下がリグレットを俺とムルがいる時に王宮へ出したんだ。その頃から、愛人と2人して使用人虐めが激しかったから、ムルには初めから嫌われていた」
「あの、私にそのような話をしていいのですか……?」


 ついさっき、名前呼びを所望され達成したばかりの私とリアン様では、元々の関係性から王太子殿下と王女殿下の仲の話を聞かされ言う深さはない。


「……リグレットが俺に拘るのは後ろ盾欲しさだよ。俺自身はどうも思っていない」
「……」


 それって……さっき、王女殿下がリアン様の婚約者だと嘘を放ったのを私がまだ誤解してると思われてる? 『予知夢』の件があり、彼がエルミナを好いているのは知っている。私はチクリと胸の痛みを感じながらも、伺うように見てくるリアン様に笑んだ。
 顔は真っ赤でも。


「王女殿下とリアン様の間に何もないのは、先程のアレで伝わりました」
「……そうか」
「リアン様に好きな方がいらっしゃるのなら、早い内に婚約の打診をされるのは如何……」


 言葉は最後まで紡げなかった。呆然とショックを合わさった相貌が私を無言で見下ろすから……。


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