86 / 104
嫉妬と嫌がらせ4
しおりを挟む強く握られた手から、重なる肌から伝わるリアン様の体温。上から降りかかる荒い息も肌を伝う汗も全部私に感じてくれているなら……なんて馬鹿な考えが過った。相手が誰であろうと多分関係ない。ワインに盛られた薬がまだ残っているんだ。
熱に浮かされたような、切ない声でフィオーレって呼ばれる度に胸がぎゅっと痛くなった。もしも、私の好きな人が貴方だと言ったら信じてくれますか?
長く感じられた行為が終わると衣服を整えたリアン様は部屋を出て行った。シーツを被り、未だ消えない熱を持て余しているとすぐにリアン様は部屋に戻って来た。手に桶とタオルがあった。タオルを水に浸し、絞った後私の体に当てた。ひんやりとした感触に驚くと頭を撫でられそのまま体を拭かれた。
着ていたドレスを着させられ「おやすみ」と私の頭にキスをしてリアン様は出て行かれた。
「……」
リアン様が触れた頭が熱い……さっきまでずっと抱き締め合っていた体は、今はとても冷たい。
「リアン様……」
好きな人がいると言いながらリアン様を拒まない私をどうか軽蔑して……嫌いになって……。
「リアン……様……」
1度拒んでしまえば、1度心に深い傷が出来るくらい酷く抱いてくれたら……リアン様を諦められるのに……。
「好き……です……」
——自分自身、どうしたらいいか分からなくなっていた……。
気付くと眠っていた私が目を覚ますと次は朝になっていた。眩しい光に目を細めれば扉が叩かれた。返事をして入ってもらうとカンデラリア家の侍女が公爵夫人に言われ私の朝の準備をしに来てくれた。
「あの、リアン様はまだ眠っていますか?」
「いえ。ロードクロサイト様は早朝にお帰りになられました。旦那様は止めたのですが急ぎの用があると」
「そうですか……」
「奥様に言われ、シェリア様のドレスをお持ちしました。サイズは大体同じだとは思いますが……」
「ありがとうございます」
昨日の夜会からずっとカンデラリア家に滞在している私に替えの着替えはない。ご厚意に甘え、お義母様のドレスを借りた。
まずは湯浴みをしましょうと侍女に勧められ、浴室へ案内された。ドレスを脱がしてもらい、ハッと息を呑んだ音を訝しく思った直後自分のやらかしを悟った。
私の体にはリアン様が付けた跡が沢山ある。お義母様経由で私とリアン様の間には何もないときっとなっている筈。侍女の人にどうにか秘密にしてほしいとお願いし、相当渋々に受け入れてもらい湯浴みをした。
「奥様や旦那様に言えなくても、シェリア様や伯爵様にはお伝えした方が……」
「良いんです……誰にも言うつもりはありません」
「ですが……その、何もしないとなると子供が出来てしまった場合はどうなさるつもりですか」
「伯爵家に戻ったら信頼している侍女に避妊薬を秘密裏に手配してもらいます」
……嘘だ。侍女にだって知らせる気はない。
もしも、お腹に子供が宿ってしまってもリアン様が父親とは言わない。ううん、子供が出来たと発覚する前に隣国に行かないとならない。
絶対に秘密にしてもらうよう侍女の方にお願いし、準備を整えて公爵夫妻が待つ食堂に足を運んだ。
私を見た公爵様と夫人に席に勧められ、最初の開口で謝罪された。
「済まなかったねフィオーレ。私達が君の周囲にもっと目を光らせていたらこんな事には……。フィオーレやリアン様には申し訳ないことをした」
「いえ……リアン様が助けて下さったので私はなんとも……」
「体に異常はないかい? あのワインはアルコール度数が高い方だから、飲酒経験が殆どないフィオーレやリアン様だとかなりキツかったろう」
「ちょっと体が怠いですけど、他は特に……」
「そうか。食事を終えたら二日酔いの薬を飲みなさい。フィオーレには胃に優しい食事を用意させたから、ゆっくり食べなさい」
「ありがとうございます」
お腹は然程減ってないけれど、公爵様達の気遣いに感謝して用意された食事を全て食べ終え、出された二日酔いの薬を水と共に飲み干した。苦くて吃驚した。
昼前にはエーデルシュタイン家の馬車が迎えに来る。それまではゆっくりしていなさいと言われ、眠っていた部屋に戻った。シーツは新しい物に変えられていて、寝転がったらお日様の香りがして心が落ち着く。
「リアン様……」
リアン様は……私を……どうしたいのですか……
158
あなたにおすすめの小説
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
『恋心を凍らせる薬を飲みました』 - 残りの学園生活、どうぞご自由にお遊びください、婚約者様
恋せよ恋
恋愛
愛されることを諦めた。だから、私は心を凍らせた。
不誠実な婚約者・ユリアンの冷遇に耐えかねたヤスミンは、
伝説の魔女の元を訪れ、恋心を消し去る「氷の薬」を飲む。
感情を捨て、完璧な「人形」となった彼女を前に、
ユリアンは初めて己の罪と執着に狂い始める。
「お願いだ、前のように僕を愛して泣いてくれ!」
足元に跪き、涙を流して乞う男に、ヤスミンは冷酷に微笑む。
「愛?……あいにく、そのような無駄な感情は捨てましたわ」
一度凍りついた心は、二度と溶けない。
後悔にのたうち回る男と、心を凍らせた冷徹な公爵夫人の、
終わりのない贖罪の記録。
🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。
🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。
🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。
🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。
🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!
最愛の婚約者に婚約破棄されたある侯爵令嬢はその想いを大切にするために自主的に修道院へ入ります。
ひよこ麺
恋愛
ある国で、あるひとりの侯爵令嬢ヨハンナが婚約破棄された。
ヨハンナは他の誰よりも婚約者のパーシヴァルを愛していた。だから彼女はその想いを抱えたまま修道院へ入ってしまうが、元婚約者を誑かした女は悲惨な末路を辿り、元婚約者も……
※この作品には残酷な表現とホラーっぽい遠回しなヤンデレが多分に含まれます。苦手な方はご注意ください。
また、一応転生者も出ます。
ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…
ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。
一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。
そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。
読んでいただけると嬉しいです。
【完結】あなたを忘れたい
やまぐちこはる
恋愛
子爵令嬢ナミリアは愛し合う婚約者ディルーストと結婚する日を待ち侘びていた。
そんな時、不幸が訪れる。
■□■
【毎日更新】毎日8時と18時更新です。
【完結保証】最終話まで書き終えています。
最後までお付き合い頂けたらうれしいです(_ _)
魔法のせいだから許して?
ましろ
恋愛
リーゼロッテの婚約者であるジークハルト王子の突然の心変わり。嫌悪を顕にした眼差し、口を開けば暴言、身に覚えの無い出来事までリーゼのせいにされる。リーゼは学園で孤立し、ジークハルトは美しい女性の手を取り愛おしそうに見つめながら愛を囁く。
どうしてこんなことに?それでもきっと今だけ……そう、自分に言い聞かせて耐えた。でも、そろそろ一年。もう終わらせたい、そう思っていたある日、リーゼは殿下に罵倒され頬を張られ怪我をした。
──もう無理。王妃様に頼み、なんとか婚約解消することができた。
しかしその後、彼の心変わりは魅了魔法のせいだと分かり……
魔法のせいなら許せる?
基本ご都合主義。ゆるゆる設定です。
すれ違う思い、私と貴方の恋の行方…
アズやっこ
恋愛
私には婚約者がいる。
婚約者には役目がある。
例え、私との時間が取れなくても、
例え、一人で夜会に行く事になっても、
例え、貴方が彼女を愛していても、
私は貴方を愛してる。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ 女性視点、男性視点があります。
❈ ふんわりとした設定なので温かい目でお願いします。
前世と今世の幸せ
夕香里
恋愛
【商業化予定のため、時期未定ですが引き下げ予定があります。詳しくは近況ボードをご確認ください】
幼い頃から皇帝アルバートの「皇后」になるために妃教育を受けてきたリーティア。
しかし聖女が発見されたことでリーティアは皇后ではなく、皇妃として皇帝に嫁ぐ。
皇帝は皇妃を冷遇し、皇后を愛した。
そのうちにリーティアは病でこの世を去ってしまう。
この世を去った後に訳あってもう一度同じ人生を繰り返すことになった彼女は思う。
「今世は幸せになりたい」と
※小説家になろう様にも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる