思い込み、勘違いも、程々に。

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嫉妬と嫌がらせ5

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 早朝から花壇に咲く花に水やりをする男性がいた。紫がかった銀髪を耳に掛け、花の様子を間近で観察する男性オルトリウスは肩に乗った白い鳩の頭を指で優しく撫でてやった。


「そう。ご苦労様」
「ぽお」


 ご褒美にクッキーをあげようと如雨露を花壇に置いて、大教会内に戻る途中、クッキーが好きなのはオルトリウスが育てた騎士が飼っているネズミ。名前は確かチューティー君。チューティー君で何代目だったか、確か5代目? いや8代目だったかと記憶の引き出しを探りながら、鳩の好物がある厨房に入った。棚から瓶を取り出し、蓋を開けて中身の木の実を手に乗せ食べさせた。満足するまで食べさせ、瓶を棚に戻したオルトリウスは再び外に出た。
 元気よく空へ飛んで行った鳩を見送ると如雨露を手に取り花壇へ水やりを再開した。


「そろそろ僕が頼んだ子が来る時かな」


 隣国から暇な子をこっちに寄越してほしいと連絡し、返事にはオルトリウスがよく知る相手が来ると来た。そろそろこの国に到着しても良い頃だが、どうせ彼の事、オルトリウス1人でも片付けられるからと態とのんびり来ている可能性もない。
 荒事となると腕に自身がないオルトリウスからすると彼には是非早く来てほしい。隣国の隠居王族である自分が他国の王家の問題に首を突っ込むのは如何なものかと思うも、先代国王の望みでもあり、願いでもある為突っ込まないとならない。

 他にもやることは沢山ある。
 フィオーレが最たる事柄だろうか。エーデルシュタイン家だけが持つ『予知夢』の力。フィオーレの母方祖母が自国の公爵家の血を引いている事、18年前彼女が教会で祝福を授かった時現れた女神が授けた祝福、それらを合わせるとフィオーレが視る『予知夢』が何故周辺の人間の不幸ばかりなのかが説明がつく。


「力加減というものを知ってほしいものだよ……あの女神様は……」


 が、手加減を知らない女神のお陰で自身と兄は王国を建て直した。幾度もあった修羅場も人智を超えた力のお陰で乗り切れた。こうしてのんびりと隠居生活が送れているのが何よりの証拠。

 靴音が近付いてくるのが聞こえ、水やりの手を止めた。振り向かず「待ってたよメルちゃん」と言っても相手に反応がない。
「ん?」と訝しく感じたオルトリウスは振り向いた。予想通りの相手なら――


『なんで王家の人達っておれを扱き使うのが好きなんですかね』と文句を言う。なのに、何も言われない。
 メルちゃんじゃない? と警戒して振り向いた。――え、と発してポカンと口を開けた。
 相手はオルトリウスの間抜け顔にコメントせず、綺麗に咲いている瑞々しい花にそっと触れた。


「あー……あぁ~……え……? 暇な子って……こういう事?」
「暇なのは……当たっているな」
「ああ、うん、暇というか、時間を持て余してるというか、そもそも長時間起きていられない筈……なんだけど……起きられるんだ」


 意外そうに目を丸くすれば、相手は焦げ茶の髪を指先で掻き、オルトリウスに詳細を求めた。もう暫く呆けていたい気持ちになるも、予想外な暇な人が来てしまった為、水やりを中断せざるを得ない。


「その髪はメルちゃんに借りた?」
「いや……」
「そう。まあ、何となく予想がつくから言わなくていいよ。髪の色さえ隠しておけば大丈夫かな。それじゃあ、部屋に案内するよ」


 髪の色はかなり目立つも瞳の色はそうでもないので細工をする理由はない。相手を建物内に案内し、目的の部屋に入った。
 向かい合う形で座ると早速切り出した。


「頼み事というのは幾つかあるんだ。その1つは、先代国王の願いでもあるお馬鹿さんの排除。いい加減、王妃の我慢が限界に達している。愛人とその娘のやりたい放題で泣いている貴族が多くてね」
「……」
「それとエーデルシュタイン家のご令嬢を1人、シエルちゃんの所で面倒を見させようかなと思うんだ。エーデルシュタインの血、フワーリンの血、女神の祝福……どうもこの3つが原因で相当ややこしい事になっている子なんだ」
「……?」
「シエルちゃんが嫌がらないかって? 大丈夫だよ。フィオーレちゃんって言うのだけど、フィオーレちゃんはシエルちゃんを見ても綺麗くらいにしか思わないよ」


 心の底から想う相手がいると人は案外超絶な美貌を持つ異性がいても心奪われないものだ。


「そうだ。頼み事をする側でこんな風には言いたくないけど。
 ――絶対正体がバレないようにしてよ?」


 オルトリウスの念押しに相手はコクリと頷くだけであった。



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