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貴方も同じでしょう?2
しおりを挟む義務でも、律儀にホロロギウム公爵家に通うのはラウルの目的がエイレーネーじゃなく、エイレーネーの妹ガブリエルにあるから。
「あ! ラウル様!」
元気で良いがはしたなさを抱く声の主はすぐに現れた。金に近い茶髪にリボンを結び、大きくて丸い深緑の眼を吊り上げてラウルを呼んだのはガブリエル。戸籍上エイレーネーの妹である。今日もフリルとリボンがふんだんに使用されたピンクのドレスを着たガブリエル。類稀な美少女だからこそ似合うドレス。
「わたくしとお話していたのに席を立ってしまうなんて酷いではありませんか!」
「あ、ああ、すまなかったガブリエル。エイレーネーに会いたくて」
「あら、お姉様部屋にいらしたの?」
エイレーネーが部屋にいると今気付いたと言わんばかりのガブリエル。本当に今気付いたんだろう。
ラウルとガブリエル。今のエイレーネーが相手をするのは面倒な2人。
婚約者でもないのにラウルの腕に抱き付くガブリエルも、引き剥がそうとしないラウルも。
エイレーネーにとってはもう……。
「はあ……」
無意識に溜め息を吐いたエイレーネーをラウルは見逃さなかった。
「エイレーネー。その態度はなんだ」
「何がでしょう」
「……君は私と会うのが嫌なのか?」
嫌がっているのは貴方でしょうに、と喉まで上がった言葉を飲み込み、エイレーネーは感情を隠してラウルを見やった。
「嫌とは……思いません」
「そうか……」
ホッとした顔を見せたラウルに「ただ」と続けた。
「嬉しいとも思ったこともありません」
「……」
それは貴方も同じでしょう?
言葉にしなくても、ラウルは発言の裏に隠された意味を読み取ってくれた。ただ、傷付いた相貌を見せるのはどうして。
1人会話に入れてもらえないガブリエルが痺れを切らし、ラウルの腕を引っ張った。ラウルはガブリエルの手を離し、俯いて帰ると告げ消えて行った。ガブリエルは慌てて後を追って行った。
魔法で扉を閉めて漸くエイレーネーは体から力を抜き、する必要もないぬいぐるみの振りをしていたイヴは体を起こして膝に飛び乗った。
「面白いね彼」
「そう? 律儀なだけよ」
「レーネは彼を好き?」
「……うん」
でも、叶わないのだ。
未来の旦那様だと紹介され、婚約者のお披露目で最初に出会った時からラウルに一目惚れをし、ずっとラウルだけを見続けた。
からこそ、解ってしまった。
ガブリエルを紹介した時のラウルは、初めて彼と出会った時に心奪われたエイレーネーと同じ姿をしていた。
諦めが早いと言われればそれまでだが、ラウルへの恋心は表に解るようには隠した。きっと愛を求めたってラウルは今のように義務感でエイレーネーを愛してくれるだろう。……本心から愛してくれないとエイレーネーは満たされない。母の愛は本心から娘を愛するものだったから。
婚約者にも、本心から愛されたい。
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