傷物令嬢は魔法使いの力を借りて婚約者を幸せにしたい

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 別席に座るラルスが気になりつつも、劇は開演された。席は離れており、座っていればお互い気付けない位置なのでラルスやベルティーニ夫人が気付くことはないだろうと観賞に集中した。
 悪女の罠に嵌められ、引き裂かれた男女が最後お互いの胸にナイフを刺して心中する悲恋もの。一度目は話題だからと内容を確認せずラルスと観賞して気まずくなるも、時間が経つと恋人達の最後を肯定するか否定するか二人で熱く語り合った。
 愛し合っていても結ばれないのなら、来世で一緒になろうと二人は約束し、心中した。劇が終わると涙を流す観客が溢れるのは一度目と同じ。隣に座るフレアを見ると滝の如く涙を流していて少し驚いた。


 恨めし気に見られローゼライトは苦笑した。


「言わないで正解だったでしょう?」
「せめて悲恋だと言ってくれたら……!」
「ほら、ハンカチ」


 ポシェットからハンカチを取り出しフレアに渡した。フレアが涙を拭いている隣、父は別段変わった様子はない。


「お父様、如何でした?」
「幸福な終わりか、不幸な終わりかは見た者によって判断が分かれるものだった。ローゼライトはどう思った?」
「私はある意味では幸福な終わりかと。死んで誰にも邪魔されない場所へ行った二人は幸せなんだって」
「そうか。私もお前と同意見だ」


 涙をハンカチで拭きながらフレアは死んだ二人は幸せでも残された周囲が不幸だと言う。意見の交わし合いが発生すると予期し、劇場の近くにあるカフェでゆっくり語らおうと一旦席を立った。
 会場から外へ出た三人は近くにあるカフェに入った。丁度、店内の席が一つ空いており運よく座れた。周りは先程劇を見ていた客だろうか、目が赤い人がちらほらといる。

 給仕からメニュー表を渡された父に何を飲むか訊ねられたローゼライトとフレアはそれぞれホットミルクを頼んだ。父はコーヒーにし、それとチョコレートケーキを三人分追加して注文した。


「来るのが楽しみ」
「姉上はホットミルクが好きですね」
「フレアだってホットミルクを頼んだじゃない」
「もっと身長を伸ばしたいので」


 今もフレアの背は十分高い気がするローゼライトだが、フレア自身はまだまだ背が欲しいらしい。


「ローゼライト?」


 ぎくりと体が強張った。声を掛けられた方へ向くと——思った通りの相手ラルスがいた。側にはベルティーニ夫人も。


「こんにちはシーラデン伯爵。家族でお出掛けなんて仲が宜しいのね」
「ええ。偶にはこんな日も必要だろうと」
「ローゼライトさん、フレア殿も元気そうで何よりだわ」


 席から立ち上がろうとしたローゼライトとフレアを手で制したベルティーニ夫人は給仕が持ってきたケーキ箱を受け取るとラルスを連れて店を出て行った。

 ラルスから終始視線を貰っていたが敢えて気付かない振りをしたローゼライトは二人がいなくなるとホッと息を吐いて安心した。


「何も聞かれなくて良かった」
「姉上は家族で出掛けるからって断っただけじゃないですか。嘘を吐いたわけでもないのに」
「そうだけど、なんだか気まずくて」


 フレアの言う通り、同じ観劇を観に行くとまでは書かなくても家族で出掛けるからとは書いてラルスの誘いを断った。後ろめたさを感じる必要はないのに何故か感じてしまった。ラルスがずっと視線を寄越していたのも気になるが、明日の夜会で話されるだろう。

 明日は朝から大忙しだ。朝はダヴィデと会って円満な婚約解消の作戦会議を立て、午後からは夜会の準備に入る。本来なら朝から準備になるのを侍女に無理を言って午後にしてもらった。ローゼライトも出来る限り協力はする。

 二度目の劇を観て婚約解消の方法を一つ思い付いた。悪女は最後、恨みを持つ者に爆死させられ死んでしまう。


 ——事故に見せかけて私が死んか、怪我を負って公爵家に嫁げないとラルスに思わせれば婚約解消に運べそうね!


 ダヴィデにこの案を話し、良案かどうか判断してもらおう。



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