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とは言え、そこまで器用なタイプではない私が返答に困っていると、晴臣が割って入ってきた。
「むしろOKしない方がどうかしてるでしょう?誰かさんがこれまでことあるごとに『うちの可愛い千歳ちゃんと結婚するからには』とか何とか言って、学業はもちろん、剣道に柔道にピアノのコンクール、果ては英語の弁論大会まで徹底的に俺に結果を求めてきてくれたお陰で、そこら辺の男になんか絶対負ける気しませんもん」
自信満々で言いながら、『そこら辺の男』と言うとき、やたら敵意のこもった目で晴臣が遼平くんを見るものだから、冷や冷やする。
そもそも遼平くんは、私なんて相手にしてないのに。
それにしても知らなかった。
晴臣が小さい頃からやたらと色んな習い事させられていたのは、椎名家の教育方針だと思っていた。
それがまさか、全部父の差し金だったなんて。
幼い晴臣が私の為に見えないところで努力し続けてくれていた事実を知り、繋いだ手が急にこそばゆくなった。
さり気なく指を解こうとしたら、逆にギュッと強く握られてしまった。
それに気付いた父は、この期に及んでまだウジウジと、「でも…まさか、こんなに早いなんて…」と頭を抱えてボヤいている。
「じゃあ、本当に何で婚約させたりなんてしたのよ!お父さん!!」
と遂に口に出して突っ込むと遼平くんが可笑しそうに笑い出した。
「義兄さんは、本当にちーちゃんのことが大事なんだよ。娘を託せる将来有望な相手を青田買いして、実際ここまで育て上げた義兄さんも、期待に応え続けてきた晴臣くんも凄すぎ」
「…別に手塚社長に褒められる筋合いなんて一つもありませんけどね」
という晴臣の刺々しい一言は、幸いにもまたも騒がしい父の「さっすが遼平!本当よく分かってるぅ!!」という言葉でかき消されたようだ。
そう思ったのは、笑顔で父をあしらう遼平くんのにこやかな表情が崩れなかったから。
逆に嫌味を言った方の晴臣の表情が、父がわーわーと騒いでいる間、ほんの一瞬怒気を強めたような気がしたのが気にはなるけれども。
晴臣なんてムッとした顔がデフォルトだもんね。
気にしない、気にしない。
「ちーちゃんの為にも、義兄さんの為にも…あと、晴臣くんの為にも、ちーちゃんの身の安全を守れるよう、叔父として、eternoの社長として最善を尽くさせてもらうよ」
遼平くん、やっぱり素敵だ。
まだ胸は少し痛むけど。
想いを伝えることさえ許されない恋だったけど。
後悔なんてない。
この人を、好きになって本当によかった。
優しく、力強い遼平くんの言葉で締めくくられたLotus社長室での会談は終了、解散となり、何とか遼平くんを守りきれたことにほっと胸を撫で下ろした。
「むしろOKしない方がどうかしてるでしょう?誰かさんがこれまでことあるごとに『うちの可愛い千歳ちゃんと結婚するからには』とか何とか言って、学業はもちろん、剣道に柔道にピアノのコンクール、果ては英語の弁論大会まで徹底的に俺に結果を求めてきてくれたお陰で、そこら辺の男になんか絶対負ける気しませんもん」
自信満々で言いながら、『そこら辺の男』と言うとき、やたら敵意のこもった目で晴臣が遼平くんを見るものだから、冷や冷やする。
そもそも遼平くんは、私なんて相手にしてないのに。
それにしても知らなかった。
晴臣が小さい頃からやたらと色んな習い事させられていたのは、椎名家の教育方針だと思っていた。
それがまさか、全部父の差し金だったなんて。
幼い晴臣が私の為に見えないところで努力し続けてくれていた事実を知り、繋いだ手が急にこそばゆくなった。
さり気なく指を解こうとしたら、逆にギュッと強く握られてしまった。
それに気付いた父は、この期に及んでまだウジウジと、「でも…まさか、こんなに早いなんて…」と頭を抱えてボヤいている。
「じゃあ、本当に何で婚約させたりなんてしたのよ!お父さん!!」
と遂に口に出して突っ込むと遼平くんが可笑しそうに笑い出した。
「義兄さんは、本当にちーちゃんのことが大事なんだよ。娘を託せる将来有望な相手を青田買いして、実際ここまで育て上げた義兄さんも、期待に応え続けてきた晴臣くんも凄すぎ」
「…別に手塚社長に褒められる筋合いなんて一つもありませんけどね」
という晴臣の刺々しい一言は、幸いにもまたも騒がしい父の「さっすが遼平!本当よく分かってるぅ!!」という言葉でかき消されたようだ。
そう思ったのは、笑顔で父をあしらう遼平くんのにこやかな表情が崩れなかったから。
逆に嫌味を言った方の晴臣の表情が、父がわーわーと騒いでいる間、ほんの一瞬怒気を強めたような気がしたのが気にはなるけれども。
晴臣なんてムッとした顔がデフォルトだもんね。
気にしない、気にしない。
「ちーちゃんの為にも、義兄さんの為にも…あと、晴臣くんの為にも、ちーちゃんの身の安全を守れるよう、叔父として、eternoの社長として最善を尽くさせてもらうよ」
遼平くん、やっぱり素敵だ。
まだ胸は少し痛むけど。
想いを伝えることさえ許されない恋だったけど。
後悔なんてない。
この人を、好きになって本当によかった。
優しく、力強い遼平くんの言葉で締めくくられたLotus社長室での会談は終了、解散となり、何とか遼平くんを守りきれたことにほっと胸を撫で下ろした。
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